第23話
その日の夜、二十二時。
私たち3期生とメテオ先輩による、二度目のコラボ配信が行われた。
今回の企画は『先輩を励ます会(雑談コラボ)』。
というのも、先輩が事前に「今日はメンタルが豆腐以下だから、癒やしてくれないと配信休む……」と駄々をこねたからだ。
理由は明白。今日の昼休み、体育倉庫裏で私と白崎に「シメられた」からである。
『はぁ……。おつメテオぉ……』
配信が始まるなり、この世の終わりみたいな溜め息がスピーカーから漏れてきた。
画面上のメテオ先輩のアバターは、どんよりとした紫色のオーラ(エフェクト)を背負っている。
「せ、先輩? 大丈夫ですか? 声が死んでますよ」
「元気出してください。今日は私たちが全肯定しますから」
私と白崎が、白々しくフォローを入れる。
内心では「(私たちのせいだけどな)」と思いつつ。
『うぅ……二人ともありがとぉ……。やっぱりネットの世界だけが私の救いだよぉ……』
先輩はグスンと鼻をすすり、重い口を開いた。
『あのね、聞いてくれる? 今日、リアル(学校)ですっごい怖い目に遭ったんだよぉ……』
――来た。
私と白崎はDiscord越しに身構えた。
「ほ、ほう? 怖い目、とは? まさかカツアゲでもされましたか?」
『ううん、もっと恐ろしいよぉ……。私の正体がね、クラスの女子二人にバレちゃったの……!』
コメント欄が『!?』『特定された!?』『メテオちゃん身バレしたんかwww』とざわつく。
先輩は涙声で、その「恐ろしい女子二人」について語り始めた。
『一人はね、すっごい目つきが悪くて、いつも教室の隅で死んだ魚みたいな目をしてる陰キャの子なんだけど……』
ブチッ。
私のこめかみで何かが切れる音がした。
死んだ魚!? 陰キャ!?
いや、否定はしないが、そこまで言うか!?
『でね、もう一人は優等生ぶってる委員長なんだけど、眼鏡の奥の目が笑ってないの! 絶対裏社会と繋がりがあるタイプだよあれ!』
今度は白崎への流れ弾だ。
白崎のアバターが、画面上でピクリと動いた気がした。
裏社会て。ただの世話焼き委員長だぞ。
『その二人にね、体育倉庫の裏に連行されて……。「あんた、神楽メテオでしょ?」って壁ドンされて……。私、殺されるかと思ったぁ……!』
先輩の話術(被害妄想)により、私たちは完全に「学校の悪魔」扱いされていた。
コメント欄も先輩に同情している。
『かわいそう』
『その二人ヤバすぎだろ』
『脅迫じゃん』
『メテオちゃん逃げて!』
『陰キャと委員長のコンビとか、マンガの悪役かよ』
違う! 誤解だ!
私たちはただ、秘密を共有しようとしただけだ!
……まあ、ちょっと脅して焼きそばパンを要求したかもしれないが、それはコミュニケーションの一環だろ!?




