第21話
連れてこられたのは、校舎裏にある体育倉庫の裏手だった。
人目はなく、聞こえるのはグラウンドの部活動の掛け声だけ。
カツアゲか、あるいは告白か。そんな場所だ。
「あ、あのぉ……委員長? こ、ここ、埃っぽいし……私、掃除サボってないよ……?」
星野さんは両手を胸の前で合わせ、小動物のようにガタガタ震えている。
その姿は、どこからどう見ても「いじめられっ子」だ。
だが、白崎は壁ドンならぬ「金網ドン」で退路を塞ぎ、冷徹な声で告げた。
「単刀直入に聞くわね」
白崎の視線が、星野さんの隠れた瞳を射抜く。
「あんた……**『神楽メテオ』**でしょ?」
時が止まった。
風が止んだ。
私の思考も停止した。
「……は?」
私は間の抜けた声を上げた。
神楽メテオ? あの伝説の1期生? あの王子様系コンカフェ店員のカオル?
それが、目の前のこの弱々しい生き物だと?
星野さんは、まるで石化したように固まっていたが、数秒後、首が180度回転しそうな勢いで横に振った。
「ち、ちちち、違いますぅ! ななな何言ってるんですかぁ! 私、そんなキラキラした人じゃありませんっ! ただの地味なモブですぅ!」
「嘘おっしゃい。さっき教室で『僕の擬態』って言ってたわよね? あの一人称と声のトーン、コンカフェのカオル君そのものだったわよ」
「そ、それは……! あれです! 最近読んだマンガの影響で! 中二病なんです私!」
苦しい。言い訳が苦しすぎる。
だが、白崎は攻撃の手を緩めない。
「それに、あんたのその前髪。……ちょっと失礼」
「ひゃっ!?」
白崎が手を伸ばし、星野さんの長い前髪を強引にかき上げた。
露わになったその素顔。
切れ長の瞳。整った鼻筋。そして左目の下にある、特徴的な泣きぼくろ。
私は息を飲んだ。
見覚えがある。
チェキの中でウインクしていたあの顔と、完全に一致している!
「……カオル君だ」
「ひいぃぃぃ!! 見ないでぇぇぇ!!」
星野さん――いや、カオル……もといメテオ先輩は、顔を覆ってその場にしゃがみ込んだ。
「うぅ……終わった……。完璧だったのに……。高校デビュー失敗して陰キャに徹してたのに……なんでバレたのぉ……」
その嘆き声は、配信で聞いたあの情けない声そのものだった@。




