第18話
「……えー、というわけで。改めまして、1期生の神楽メテオです。またの名を、男装喫茶のプリンス・カオルだよぉ……」
正体バレから数分後。
配信の空気はカオスを極めていた。
メテオ先輩は開き直って「カオルボイス(低音イケボ)」と「メテオボイス(ふわふわ女子)」を交互に使い分けているが、完全に空回りしている。
『カオル君推せる』
『Sなの? Mなの? どっち?』
『情緒不安定すぎて草』
『先輩、キャラ設定のメモリあふれてますよ』
「うるさーい! 私は多面性のあるアーティストなんだよ! ……コホン。どうだいプリンセスたち、僕の秘密を知ってしまって興奮したかい?」
「いや、混乱しているだけです」
私が即答すると、白崎も冷静に追い打ちをかける。
「先輩。リスナーさんたちが『嘘をついていた罰ゲーム』を要求してますよ」
「えっ、罰ゲーム? ……やだなぁ、どんなことされちゃうのかなぁ?(ワクワク)」
隠しきれない期待の声。この人、本当に根っからのドMだ。
コメント欄が高速で流れ、一つの提案が採用された。
『指示厨リスナー: 残りの試合、全部「カオルくん」のキャラを保ったままチャンピオン取ってください。一度でも素(M)に戻ったら即終了&罰として語尾に「にゃん」をつけて謝罪』
鬼畜なルールだ。
激しい銃撃戦の中で、優雅な王子様キャラを維持しろというのか。
「ふっ……面白い。望むところだよ。僕の完璧なエスコートを見せてあげよう」
「(この人、さっきチェキ5回ミスったの忘れてるのか……?)」
不安しかないが、試合開始のゴングは鳴った。
私たちは最終決戦の地へと降り立つ。
「行くよ、マイ・プリンセスたち。僕の後ろについておいで」
「あ、先輩。敵いました。正面です」
「なにっ!? ……くっ、僕が相手だ! 貴様らごときに指一本触れさせな――あっ、痛い! 撃たないで!」
開始五秒。
敵のスナイパーに撃ち抜かれ、先輩のシールドが割れた。
「ひゃうっ! い、痛いよぉ……! あーん、もっと撃ってぇ……!」
「先輩! キャラ! キャラ戻ってます!」
私が叫ぶと、先輩はハッと我に返った。
「おっと、失敬。……ふ、ふん! かすり傷だ! この程度の痛み、愛のムチに比べれば……ああっ! また撃たれた! んほぉっ♡」
『アウトォォォォ!』
『即落ち2コマ』
『早すぎるw』
『カオル君どこいった』
ダメだこりゃ。
被弾するたびに快感の声(M)が漏れ、慌ててイケボ(S)で誤魔化そうとするが、もはや情緒不安定な不審者にしか見えない。
「もう! 先輩は隠れてて回復してください! 私たちが殲滅しますから!」
「任せろ! 私の新PCが火を噴くぜ!」
結局、私と白崎が前線で身体を張り、先輩はお荷物(姫)状態で守られることになった。




