表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王と勇者は、隣の部屋で配信中。  作者: 瀬那
第3章 魔王と勇者の秋葉原デート(※買い出しです)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/26

閑話 あるいは、ゲーミングPCが七色に光る理由

魔王城(6畳一間)、光る


 日曜日、二十一時。

 秋葉原から帰還した私たちは、私の部屋(201号室)で、買ってきた戦利品の山と格闘していた。


「……おい白崎。この『CPUグリス』とやらは、パンに塗るクリームではないのか?」

「違うわよ。絶対食べないでね。……あと、マザーボードを素手でベタベタ触らない。静電気で死ぬわよ(パーツが)」


 白崎は腕まくりをして、ドライバーを片手に手際よく作業を進めている。

 一方、私は横で説明書(英語)を眺めて唸っているだけだ。戦力外通告である。


「よし、CPU装着完了。次はメモリね。ベルちゃん、そこの細長い板とって」

「これか。……ふん、こんな薄い板に記憶が宿るとはな」

「カチッと音がするまで押し込むの。……あ、逆! 切り欠きの位置見て!」

「ぬおお! 硬い! 入らん! パワーでねじ込めば……!」

「ストップ! 折れる! 5万が折れる!!」


 危うく大惨事になるところだった。

 白崎は私の手からメモリを奪い取ると、サクッ、カチッ、と魔法のように一瞬で嵌め込んでしまった。


「はぁ……。あんたに任せると破壊しそうだから、もう見てて。応援だけしてて」

「む……。フレ、フレ、勇者~」

「棒読みすぎ」


 その後も、白崎の作業は続いた。

 特に大変だったのは配線だ。

 彼女は床に這いつくばり、机の下に潜り込んでケーブルを整理し始めた。


「ん……しょ。ここの裏配線が……届かない……」

「お、おい白崎。スカートでそんな格好をするな。目のやり場に困るだろう」

「あんたの部屋なんだから誰も見てないでしょ。……あ、ライト貸して」

「ほらよ(スマホのライトを向ける)」


 埃っぽい机の下で、勇者が汗を拭いながら作業をしている。

 その横顔は真剣そのもので、秋葉原で見せた「デートの顔」とはまた違う、「職人の顔」をしていた。

 ……正直、かっこいいと思ってしまったのは内緒だ。


 そして、一時間後。


「――よし。完成」


 全てのパーツが黒いケースに収まり、蓋が閉じられた。

 私たちはゴクリと息を飲んで、電源ボタンを見つめた。


「いくわよ、ベルちゃん。ポチッとな」

「うむ。点火!」


 ブォン……。


 静かなファンの回転音と共に、PCが目覚める。

 次の瞬間。


 ピカーッ! キラキラキラ……!


 ケースの中のファンが、メモリが、そしてグラフィックボードが、赤、青、緑、紫と、目まぐるしく発光し始めた。


「うわっ、眩しッ!?」

「おお……! 光った! 虹色に輝いているぞ!」

「最近のゲーミングパーツは、とりあえず光らせるのが流行りなのよ」

「なんと……! これが『ゲーミング』の輝きか! まるで魔界のネオン街(歓楽街)のようだな!」


 薄暗い6畳一間が、ディスコのように照らし出される。

 無駄に派手だ。だが、その無駄さがたまらなくカッコイイ。


「ありがとう、白崎。……これは、いいものだ」

「ふふ、喜んでもらえて何よりよ。これで明日からの配信、言い訳できないわね?」

「うぐっ……善処する」


SNSの反応まとめ


トレンド:#ベル様高画質化


@古参リスナー

ベル様の配信、画質良すぎて草。

今までドット絵みたいだったのに、急に実写レベル(言い過ぎ)になったぞ。

毛穴まで見える勢い。


@新規ファン

PC新調したって言ってたけど、スペック高すぎない?

ヌルヌル動きすぎて、ベル様のポンコツエイムが鮮明に見えるの面白いwww

あと、叫び声がクリアになりすぎて音量注意テロップが必要になった。


@特定班A

ベル様がアップした「新しいPC」の写真、机の端に映り込んでるコンビニのプリン……。

これ、セブンイレブンの新作だよな?

あと、このケーブルの結束バンドの縛り方、プロの犯行だろ。ベル様にこんな几帳面な配線ができるはずがない。

結論:業者がやったか、"誰か"が家に来ていた。


@考察厨B

>>特定班A

日曜日にアキバで目撃情報あったぞ。

「黒ずくめの不審者」と「肩出しの超絶美少女」がPCショップにいたらしい。

……まさかな。


失敗チェキの行方


 組み立てが終わった後。

 白崎は自分の部屋(202号室)へ戻る前に、あるものを私に手渡してきた。


「はい、これ」

「ん? これは……コンカフェのチェキか?」


 渡されたのは、カオル(神楽メテオ)がミスりまくった失敗チェキの束だ。

 指が入っていたり、ブレていたりする心霊写真のような代物。


「捨てておくのも勿体ないし、半分こしましょ。……ネタになるかもしれないし」

「ネタって……。こんなもん、魔除けにしかならんぞ」


 私はブツブツ言いながらも、その中の一枚を手に取った。

 それは、唯一「まともに撮れた」一枚。

 ……といっても、カオルが目をつぶってしまっている失敗作なのだが。


 しかし、その隣に写っている私は、オムライスを前にして、驚くほどマヌケで、楽しそうな顔をしていた。

 そして私の反対側には、見切れているけれど、ピースサインをする白崎の手と、その笑顔が半分だけ写り込んでいる。


「……ま、貰っておいてやる」

「大切にしなさいよ? じゃ、おやすみ」


 白崎はヒラヒラと手を振って、ベランダ越しに自分の部屋へと帰っていった。


 私は部屋に一人残され、七色に光るPCの明かりの中で、そのチェキをデスクのマットの下にそっと挟み込んだ。

 最強のPCと、一枚の失敗チェキ。

 私のデスク周りは、少しずつ賑やかになっていく気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ