1章 生死
死に場所を探す吸血鬼と少女
ああ、早く死にたい…。
あと何年間飲まず食わずで過ごせば死ねるのだろうか…
吸血鬼という生き物は何故もこう長生きなのだろう。
地球という星に住む生き物のほとんどが100年も生きずに寿命で死ぬというのに私は100年を超えても見た目も変わらず生き続けているのだろう。
もう何日飲まず食わずで過ごしているか分からない。
一年かもしれないし10年かもしれない。
過ごしている廃墟の窓があったであろう場所から外を見る。
木に止まっている鳥や飛んでいる虫などを見る度
「羨ましいなぁ…すぐ死ねるんだから…」と思う。
今日もいつもの変わらぬ一日
昼間は必要の無い睡眠、日が落ちた頃に起き何もせず廃墟の壁に頭を預けながら何も考えず死ぬのを待つ。
そして、また死ねなかったと朝眠りにつく…
そんなある日、いつも通り暗くなった頃目が覚めた。
しかし、なにかいつもと違う。
体の一部が干し肉のように干からびていることに気づいた。
やっと死に近づいたのかと思ったがそれと同時に喉の乾きも今までとは比べ物にならないほど感じる。
後、何日、何年で乾ききり死ねるのだろう…そう思いながらその後も過ごしていた。
喉が渇く…
早く死にたい…
誰かこの呪いから解き放ってくれ…
「あなた、なに?」
突然人間の少女の声で話しかけられた。
人間?
喉が渇く…
血…
血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血!
血が飲みたい
そう思うとどこにそんな力があったのか飛び上がり少女を押し倒し若く綺麗な首元に牙を突き立てた。
血を飲み始めるとすぐに身体が元の艶のある姿へと戻る。
元の姿へ戻ると同時に頭も正気に戻る。
「あああああぁぁぁ!」
少女を突き飛ばす。
血を…血を飲んでしまった…あと少しだったのに…あと少しで死ねたのに……つい若い少女の血の匂いに反応してしまった…。
そうだ、動転して突き飛ばしてしまったが少女は…と頭をあげる。
少女壁に身体を打って痛そうにしながらもこちらに視線を送る
「ねえ、もう吸わないの?」
…は?
「な、なにをだ?」
「いや、だから血」
何故こんなに冷静なんだ?
「す、吸わない…それよりなぜ逃げない?襲われたんだぞ?襲われなくとも廃墟に死にかけの者を見かけたら逃げるだろ」
「あたしは死ににこんな山奥まで来たんだよ?なんで逃げなきゃ行けないの?」
こいつも死に場所を探したいたのか?
「だとしてもいきなり襲われたんだぞ怖くないのか?」
「別に…ねえ、あなたって吸血鬼なの?」
「そうだ」
「じゃあ…血を吸われたあたしも吸血鬼になるの?」
人間界では吸血鬼に血を吸われた者が吸血鬼になると思っている者が多いと聞く
だが、実際は違う。
「いや、ならない」
と言うと少女は嬉しそうに
「なーんだ、良かった〜死ねなくなるのは困るからね〜」
「お前は…なぜ死にたいんだ?」
単なる興味と自分と似ているかもしれないと思いつい聞いてしまった。
こんなこと聞いても何も変わらないのに
「そうだな〜吸血鬼の人に伝わるか分からないけど〜」
と言いながら少女は吸血鬼の男の横に座る
「なぜ隣に座る?」
「話しやすいじゃん」
本当に恐れられていないようだ。
「あたしね、親の顔知らないのね?生まれてすぐ捨てられたの」
昔人間界では捨て子という者がいるのは聞いていたが今もあるのか…
「それからは〜孤児院で育ったんだけどまあそこも酷い環境でさ〜」
暗い話をしてると思うが少女は明るくしゃべり続ける。
「まあ孤児院なんてどこもそんなもんなのかもしれないけど暴力は当たり前、大人だけじゃないよ?年上の子とかも…同じ孤児なのにね〜」
「人間同士なのになんで仲悪いんだ?」
「あはは!人外みたいなこと言ってる〜あっ人外か!」
人外、私のことか
「まあ人間同士一緒にいると気に食わないことってあるわけですよ?孤児院はただの八つ当たりとか憂さ晴らしだけどね。」
吸血鬼同士は関わろうとお互いしない為よく分からない習性だ。
「人間ってすごいんだよ!暴力ってずっとされてるとね?慣れちゃうの!おかげで身体は今も丈夫!」
なぜ笑って喋れるのだろう?
吸血鬼だって殴られるのは嫌だ
「でもやっぱ心はいくら無にして過ごしたって蓄積していくわけよ。学校行ってもさ、孤児院で傷作って来てる子なんて気持ち悪がられるし馴染めず一人でいるのよ。そんな風に過ごして頼れる人もいなくてさ生きていたいと思う?」
「まだ……早いのではないか?」
「え?」
なぜ自分が早いと言ってしまったのかは自分でも分からない
だけど、何故かまだ早いのではないか?と思ってしまったのだ。
「理由は無い、だがお前はまだ子供なのだろう?大人になったら…」
「大人になったらいい事あるよって言われたことあるよ?でもさ、自分が大人になってあたしを育てた大人みたいになるかもしれないんだよ?そんな未来を想像したら吐き気がする。楽しいことって何?今まで寝ても起きてもいつも通りのことしかさせて貰えなくて本を読むことくらいしかしたことないよ。楽しいことなんて一つも分からないよ…」
楽しいか…私もそれは分からないな…
「てかさ、あなただって死にたかったんじゃないの?そうじゃなきゃこんなとこで干からびてないでしょ?」
「私はもう生きることに飽きたんだこれ以上生きても無意味だ。」
「ふーん…じゃあどうやって死のうとしてたの?」
「血を吸わずに過ごしていればそのうち死ねると思ってここで何年も何もせず過ごしていた。」
「え?吸血鬼血を吸わないだけじゃ死ねないって何かの本に書いてあったよ?」
「は?そんなはずは…」
「なにで血を吸わなきゃ死ねるって知ったの?」
「人間の書いた本で…」
吸血鬼は吸血鬼のことをよく知らない
陽の光を浴びては行けないことは大体一度陽の光を浴び死にかけることで覚える。
吸血鬼同士で関わらないせいで自分で経験したことしか知らないのだ。
「吸血鬼なのに人間の本で学ぶの…?ちなみにどんな本読んだの?」
「よくわからないが死にかけの吸血鬼を人間の少女が救う話が書かれていてその中に書いてあった。」
「ぶっ…あははは!!吸血鬼が人間の書いた小説の知識で死のうとしてるあははは!」
少女が笑っている…あれは昔本当にあった話なのではないのか?なぜ笑われている…
「たぶん読んだ本は人間が考えた創作話だよ…あはは面白い…こんな笑ったの初めてかも…」
少女は笑いすぎて涙を流している
「創作話で本を作るのか?知らなかった。」
人はありもしない話を本に残すとは知らなかった。
「これで死ぬ方法わからなくなっちゃったね?他に方法何かあるの?人間界だと太陽の光浴びると灰になるって言われてるけど?」
言われると思った…。
「陽の光は…怖いから嫌なんだ…」
「え?怖い?」
「怖いだろう…灰になるなんて…」
少女は何言ってるか分からない顔している。
「死にたいのに死に方で怖いとか思うんだね。」
「きっと本能的に怖いんだ…だから他の方法をしていたんだ…」
「なんか可愛いね!」
可愛いなんて初めて言われたな
「ねえ、じゃあ今は死に方探し中ってことになるのかな?」
死に方…探し中…まあそうなるのか?
「そうなる…な」
「じゃあさ!少しだけあたしと生きるの付き合ってくれない?」
「生きるのを手伝うとはなんだ?お前は死のうと思えばいくらでも方法はあるだろ」
「んーそうなんだけどさ!吸血鬼と会えたんだよ!?本の中に出てくる創作の生き物だと思ってたんだよ!?」
なんだか勢いがすごい…
「私となにがしたいんだお前は…」
「何したいとかはないよ?ただあなたに興味があるだけ!初めてなんだよ!こんなに興味が出たのは!」
「一緒にいても面白いことなんかないと思うぞ?」
「いいよ?別に面白いことしてもらおうなんて思ってないし、吸血鬼話聞いたりあなたを見ていたい。」
そんな行為の何がいいのだろうか…
「私といたら人間世界では暮らせないけど耐えられるのか?」
「さっき話聞いてた?人なんてきらーい」
「食べるものとかはどうする気なんだ?」
「その辺で何とかなるでしょ!」
大丈夫なのだろうか…
「いいじゃん!細かいことは気にしないでよ!そっちにだっていいことあるよ?」
「いい事?」
「あたしが死に方一緒に探してあげる!どう?」
「それはありがたいが…」
「じゃあ決まり!」
と言うと少女は立ち上がり私の方を見て言う。
「あたしは興味のあるあなたのそばに居させてもらう!その代わりあなたの死に方を探し終わるまで一緒にいて死に方探してあげる!」
月明かりが眩しくて少女の顔は見えない。
今どんな表情をしているのだろうか?
今どんな気持ちでいるのだろうか?
「だから…あなたが死ぬまであたしと生きてくれないですか?」
表情はわからないが声が少し震えていることはわかった。
私は……




