四話「警告の銃弾」
小鳥遊です。
第四話では、処理課の動きが本格化し、蓮にも「選択」を迫る兆しが現れます。
まだ戦いではありませんが、じわじわと首が締まるような気配を感じていただければ幸いです。
翌朝、店を開けると、入り口に「何か」が置かれていた。
無造作に置かれた小さな封筒。
ありふれた白い紙だが、蓮はそれを一目見ただけで、嫌な予感を覚えた。
封筒を手に取る。
軽い。中身は紙だけか──そう思いながら、蓮は店のカウンターでゆっくりと封を切った。
中から、一枚の写真と、短い文章のメモが出てくる。
写真は、蓮の自宅。
二階の窓、妻の部屋の灯りがぼんやりと写っていた。
メモには、殴り書きのような字でこう記されていた。
『次は灯りじゃなくて命を消す』
蓮の指先がわずかに震えた。
それは怒りではない。
恐怖でもない。
ただ、抑えきれない「衝動」だった。
(……この感覚、久しぶりだな)
蓮は無意識に、拳を強く握りしめていた。
皮膚の下で筋肉が、かつてのように鋭く研ぎ澄まされるのを感じる。
そのとき、扉がカランと鳴った。
「マスター、おはようございまーす!」
芹菜だった。いつもの明るい声。
蓮はすっと封筒をカウンター下に隠し、何事もなかったように顔を上げた。
「おはよう。今日は早いな」
「講義が午後からなんです。だから、朝の珈琲を飲みに来ました!」
蓮は静かに頷き、珈琲を淹れ始めた。
だが、その手の内側にはまだ「怒り」と「焦燥」が渦巻いていた。
(奴らは本気で、俺の生活を壊す気だ)
処理課。
あの夜の残党が伝えたのだろう。
「白刃の蓮」が今も生きていると、そして「甘い日常」を送っていると。
蓮は、珈琲をドリップしながら考える。
このままでは、妻が、芹菜が、店が──すべてが壊される。
(まだだ。まだ俺は戦いたくない)
蓮はそう自分に言い聞かせる。
だが、その心の奥底で、「否」を突きつける自分もいた。
──本当にそうか?
──もう戦うしかないんじゃないのか?
珈琲を注ぎ終え、カップを芹菜に差し出す。
彼女は無邪気に笑い、「いただきます!」とカップを持った。
その笑顔を見ながら、蓮はふっと目を細めた。
守らなければ。
どうあっても。
再び「白刃の蓮」に戻るとしても。
封筒の中にはもう一つ、銃弾が入っていた。
黒光りするそれを、蓮は掌の中で転がし、無言でポケットに仕舞った。
戦うか、逃げるか。
だが、蓮はもう答えを決めていた。
(殺すべき時が来れば、俺は迷わない)
その決意と共に、珈琲の香りだけが、今日も静かに店に広がっていた。
お読みいただきありがとうございます、小鳥遊です。
今回は、直接的なアクションはありませんが、蓮の中の「死神」が目を覚まし始める描写を意識しました。
次回はいよいよ、妻との時間や、その「静けさの裏にある危機」に蓮が触れていきます。
お楽しみに。




