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6話 早めのチュートリアルの終わり

 「お、おかえrって!どうしたのその恰好!?」

 そう言われるのも無理はない。

 そこには泥が体中に飛び跳ねている娘とリュックサックのように娘に乗っかっている俺が今にも倒れそうな格好で戻ってきたからだ。


 「いやぁ、あの冷夏花がさいてる崖降りるときにさぁ・・・」


 「登ったの!?ふぇ!?」

 娘の意外な発言に変に喉に力を入れたのか、いままで聞いたことのない笛のような音を出した。


 「そうそう!ディレムが魔法使えてさ!」


 「・・・そうか、お前さんは魔法が使えるのか。」

 声のトーンが明らかに低い、地雷だったか?


 「まぁいい。リンは先に風呂に入ってなさい。」


 「は~い!」

 そう言ってリンはこの場からいなくなった、

 その時、村長は俺の体を観察し、一息つき質問をしてきた。


 「ディレム、使える魔法を教えてくれんか?内容でなく名前で頼む。」


 随分変わった質問だな・・・

 まあ答えてもいいか。


 「おん、え~とね・・・」


--以下が使用可能な魔法関数です--

--名前だけ表示します--


--【送風放射(サーキュレーション)】--

--【火炎放射(ファイアリング)】--

--【修復(リペアー)】--


 「【送風放射(サーキュレーション)】、【火炎放射(ファイアリング)】、【修復(リペアー)】で全部だよ。」


 「【修復(リペアー)】・・・?」

 不思議そうに復唱している。


 「回復する魔法だよ、効力は大けがしてみないとわからない。」


 「・・・わかった。【火炎放射(ファイアリング)】でわしの腕を燃やせ。」


 「何を言い出すかと思えば!ついにボケたか?爺さん。」

 さすかに余計なお世話ではあるが体が心配すぎる。


 「なぁに、わしは【修復(リペアー)】の能力が知りたいのじゃよ。」


 「でも治る保証が・・・」


--【修復(リペアー)】では炭にさえならなければ短期間での治療が可能です--

 

 でもな・・・

 「いいのか、爺さん?」


 「ははw、舐めるな小僧が!あと、」

 その姿はとても老いぼれと表現するわけにはいかないほどの自信と勇気が表れていた。


 「いくぜ・・・」


--魔法補助プログラム起動--

--対象関数:自然族火炎系統魔法--


--【火炎放射(ファイアリング)】を発動します。--


 狙いを定めたその線はまっすぐと伸び予定通りに腕を燃やした。

 すぐさま回復魔法をじゅんb・・・


 「まだまて、()()と言ったら直せ。」


 まじでなんなんだこいつ!?


 爺さんは自分の腕をある程度観察したのちに、その火をキッチンの水で消火した。その腕は元の肌の色とは随分暗い色により爛れた腕になってしまった。


 「()()


--魔法補助プログラム起動--

--対象関数:生物族遺伝子系統魔法--


--【修復(リペアー)】を発動します。--


 爛れた腕は【修復(リペアー)】と同時に緑色の光で包まれ、数秒で直すことに成功した。


 「ちょっと腕見せろ!」


 「別におかげさまで治ったわいw」


 「心配だ。見せろ。」


 「う~い」

 納得のいっていないような声色で渋々腕を差し出す。

 その腕は右手と同じ様相であった。


 「な?いったろ?とりあえず席につけ。」


 今度はこちらが納得しない様に席に座った。

 席に座ったとたん初対面の時とは随分印象の違う空気感でその口を開けた。


 「この世界で魔法というものは魔法陣による発動、精霊による発動、術者自身による発動が一般的で中でも術者自身による発動が一番困難だ。

多くと月日をかけて努力で培うか、才能でどうにかするしかない。つまり何が言いたいかというと、君はとても稀有な存在で、常人の努力を少しの努力で上回れる。」

 

 長々と話したのち本題はこれからだ、と言わんばかりの眼差しでこちらを見た。


 「君はこれからどうしたい?」


 ・・・ん?気迫におびえていたがそんなことを聞くのか?


 「自分探し?」


 「自分を見つけた後は?」


 「特にないが・・・じゃあリンの飯でも食べに来ようかな。いいか?」


 そう答えると、村長は拍子抜けしたかのような顔をして肩を落として、ため息をついた。


 「そうか、聞くなら本人に聞きなさい。」

 「あと、この村から北に行くと帝都につく、そこには魔法最新技術、多くの文献が存在する。

 「わしの知り合いに君のことを紹介しておく、よく遊んでもらいなさいw」


 そう含みのあるニヤニヤした声で笑いながら話してくるその姿は少し親子の遺伝子を感じた。


 「わかったよ、ありがとう。もう今にでも出発しようかね。」


 「一泊してけば?」


 「特に理由はないが、こうゆう場面だと面倒なことになった気がする。」


 「・・・そうか、じゃあこれもってけ。」


 そうして服の内ポケットから年季の入った手のひらに魔法陣が描かれた手袋を取り出し、こちらに差し出した。


 「中古で悪いが、この手袋は右手は水を出現させて、左手は光源となり辺りを照らす魔道具だ。これからの生活で役に立つだろう。」


 「え・・・水?」


 「おん、喉乾くじゃろ。」


 たしかし


 「ありがと、爺さん!」


 「おう!自分見つけて娘の飯食いに来い!」


 そう俺を送り出す顔はやはりあの娘の親だと再認識できた。

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