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5話 執着の花

 コンコン

 「おはよう!」

 「ご飯できたから、食べにおいで~!」

 目覚まし時計のようにこちらを夢の世界から引きずりだしてくる声だ。

 布団から立ち上がり、ふらふらしながら食卓へ向かう。用意されていたのはやはりおいしそうな品目か並べられていた。


 「お父さんはもう仕事に行っちゃったから、それ食べたら昨日言ってた場所に行かない?てか来てよ!」


 「ふふぁふぁいふぁ(すまないが)・・・何の説明もまだされてないんだけど・・・」


 ハッとした顔をした後

 「ごめんごめん、あの森にある崖の上にきれいな花といい食材があるんだ。私が登るのはさすがにきつくて、手伝ってくれない?」


 あそこの崖かな?まぁ【送風放射(サーキュレーション)】の訓練にもなるし、昨日の様子だと数秒で終わるだろう。


 「了解、じゃあ連れてってくれるかい?」


 「ありがとう!じゃあ急いで食べてね!」


 「ふぁい」


 急いで味わっても味が混ざらずにおいしいカフェとかレストランとかやったほうが良いんじゃないかな?

 そんなことを考えていくうちに食べ終わり、余韻に浸る間もなく手を引かれ森まで連れていかれてしまった。


 「ここの崖なんだけど、いけそう?」


 いけそうか?ユスト


--可能かと、もし不安なら私が操縦しましょうか?--


 そんなことできるの?


--はい、ただし足に力を入れないでください。入れてしまいますと体の主導権があなたに移ってしまいます。--


 なるほど、体の自動操縦が可能なのか。ますます自分が何なのかユストが何なのかわからなくなるな。まぁまず了解!


 「できればでいいんだけど私も連れてける?」


 いける?


--・・・体重を知れれば--


 「・・・」

 覚悟を決めパンドラの箱を開けてみる


 「体重どれくらい?」


 「死ね」

 レスポンス速度が今まで見てきたもののどれよりも速く、そして鋭く、気持ちを知るには十分すぎるものであった。


 「根性で運べ、私を!でも無理そうだったらおろしてね。」


 「はぁい」

 選択肢どれをとっても不正解のこの問題、もう少しまともな聞き方があれば未来は変わったかもしれない、ただその言葉を俺はよく知らない。


 よし気を取り直していこうか!


 「うぉを!」

 「ちょっと持ち上げるときには声かけて!」


 「あ、ごめん無理」


 「へ?」


 あまりにもサイズ感が違いすぎた、卵はダンベルを持ち上げることなど不可能なのだ。にしても困った、どうにかして上に飛ばすことができれば。

 ・・・気球ならどうだ?


--計算しています/--

--完了:直径約8.2mの熱気球が必要です。--


 辛、ではどうしたら・・・


--別にあなたをリンさんが背負えばいいのではないでしょうか?--

--ジェットパック方式を提案します。--


 たしかに、ああ、たしかに。

 灯台下暗し、いや深く考えすぎて逆に生産性のない思考をしてしまった。よし、柔軟に柔軟に・・・

 心を引き締め提案してみる。


 「俺を背負ってくれ、エンジンとなって空を飛ぼう。」


 「あ~・・・あぁ!了解!」


 どうやら理解してくれたようだ、思っていたよりもしっかり背負っている。手をベルト代わりに足を噴射機構としてうまくいけばいいが・・・ユスト!


--魔法補助プログラム起動--

--対象関数:自然族風力系統魔法--

--対象関数:自然族火炎系統魔法--

--対象関数:生物族遺伝子系統魔法--


--【送風放射(サーキュレーション)】を発動します。--

--【火炎放射(ファイアリング)】を発動します。--

--【修復(リペアー)】を発動します。--


--オートメーションスキルトリガー確認--

--魔法同時合発動プログラム起動--


 おいおいやけどしないのか?


--あくまで【送風放射(サーキュレーション)】の補助です、それに修復(リペアー)でやけどそのものを痛みを感じる前に治癒します。--


 思ったよりもごり押しだな・・・くれぐれもケガさせんなよ。


--当たり前です。--


 いつもより少し自信を感じたその声が起爆剤のようにジェットパックに火をつけた、その音はまるで雷のようで・・・


 「わはは!すごい音!ああ、もう目が開けられないw」


 どうやらけがをしてそうなそぶりはないな、よし。

 少し経つと俺の足は先ほどの空気ではなく地面に足をつけていた。


 「大丈夫か?」


 「うん!またやって~!」

 よかった、この笑顔は健在だ。


 「どれが目当ての品だ?」


 「え~とね・・・あれと・・・あれ!」

 そうして指をさした先にあったのは藤紫色の小さい果物と、ターコイズにエメラルドグリーンを足したような色の花がたくさん生えていた。


 「この果物はシェイクベリーていって、振ると甘くなるんだ!

あの花は冷夏花いう私の一番好きな花。花言葉は'少しの希望'・・・

本当にここまで連れてきてくれてありがとう。」

 とてもうれしそうでまっすぐした気持ちが伝わる声色が、ここに来たかった気持ちを象徴している気がした。

 リンは冷夏花を一輪摘み、シェイクベリーを粗方ポケットに入れて、こちらに振り返った。


 「帰ろっか!」


 「そうだな。」


 なぜか、ここに来れてよかった気がした。

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