4話 幸運
「ここがあなたの部屋ね。」
そう案内されたのは急いで片づけたであろう内装と全開の窓、ただ過ごしやすそうなとても良い部屋だという印象を受けた。
「ありがとうリン。」
「どういたしまして!じゃあゆっくりしててね私まだやること残ってるから。」
そう言って出て行ってしまった、そしてとても明るい良い笑顔だ。
よし、ゆっくりしててと言われたが実は試したいことがあるんだよなぁ~
なぁユスト俺の使える魔法は?
--以下が使用可能な魔法関数です--
--名前だけ表示します--
【送風放射】
【火炎放射】
【修復】
二つだけかと思ったがもう一つあるとはな・・・
この魔法名前からして風系だよな、よし試してみよう!
意気揚々と案内された家を飛び出して、人の居なそうな先ほどの森まで戻り、新しい魔法を使う準備を整えた。
よし!ここなら大丈夫だな。使ってみるか、【送風放射】!!!
--魔法補助プログラム起動--
--対象関数:自然族風力系統魔法--
--【送風放射】を発動します。--
定めた手の掌から空気の流れを変え、目の前に一つの空気のトンネルができるほどの風が拡散せずまっすぐと狙い通りに飛び出した。1~2mほど進んだ先で風の旋律は消えてしまった。
いいねぇ!とりあえずこんなとこかな、さてそろそろ帰るか。
てか、この風で空でも飛べたらなぁ・・・
--魔法補助プログラム起動--
--対象関数:自然族風力系統魔法--
--【送風放射】を発動します。--
へ?
こちらの理解よりも先に、足の裏から先ほどよりも数段上の風力で空へと一気に飛びあがった、木々は翻弄され、先ほどの村がまるで地図のように見えるほどに。
やばいやばい!死ぬ!死ぬ!命の危機!もう地に足つけたい!あ・・・
突如魔法が止み、先ほど持ち上げられた位置エネルギーを運動エネルギーに変える現象が起こり始め、重力で体が地面に押しつぶされた。
--オートメーションスキルトリガー確認--
--魔法補助プログラム起動--
--対象関数:生物族遺伝子系統魔法--
--【修復】を発動します。--
痛ったぁあ・・・痛いっていうか衝撃が体を揺するよぉ・・・
てかユスト、急!
--すみません、空を飛びたいと思われていたので飛んでしまいました。--
にしても急、報告してくれ。
--善処します。--
てか足にも出せるのか?
--はい、利用可能なアウトプットは
[左足]
[左手]
[右足]
[右手]
です--
四肢ならできるってわけか、いいこと聞いた。じゃあ 徒 歩 で帰るか。
--もうしません--
いい子だ。
部屋に戻ると機嫌の悪そうなリンが立っていた。まさに今にも噴k・・
「どこいってたの!」
「申し訳ございません。」
流れるように先ほどのよりも素直に重力に身を任せ、膝をつき額を地面につけてもう一度復唱した。
「申し訳ございません。」
「べつにいいよ、怒ってないし。」
絶対怒ってる。
「さっき空に何か打ちあがっててさ!見せたかったな~!」
「てか今まで何してたの?」
まじか。
まあ見える距離か、まぁ「その面白物体が目の前にいるんですけどねぇ~」
「え?あれ君?」
あ、どこから口に出てた?ここは正直に・・・
「はい。」
「魔法使えたの!?」
「はい。」
「じゃあさ!一緒に来てほしいんだ!でも今日はもう疲れたよね?
明日また話すから今日はご飯食べてお風呂入って寝よう!」
たしかに今日は色々あったな、お言葉に甘えるとしよう。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^数分後^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「おまたせ~」
用意された食事は魚と肉と野菜、とても体によさそうだ。
しかし魚は見たことのない骨の形をしている、野菜に関しては色のたとえが思いつかない、言うなれば新鮮な黄身にオレンジを混ぜた色?
とりあえずおいしそうということだ。
「いただきます。」
一口味わうと口に広がる野菜の嫌いじゃない苦味、少しの甘味。それとともに肉を頬張ると肉特有のあじに調味料が重なり、味がまとまり、味が強くなるところは野菜で抑え、しかし薄くはない。
魚に関してはその二つとはまたベクトルの違うおいしさで食事に飽きない、総合評価は・・・
「おいしいな!」
少し驚いたような表情の後に
「でしょ!」
とほほ笑む自信満々の笑顔はやはりこの娘はリンだと再認識させる。
「ただいま~」
軽快な声とともに村長が返ってきた。
「お!うまそうね~。えーっとディレム君、風呂はあそこらへんだから好きに入ってね~」
そう言って向かって右手であろう場所を杖を振るようにグルグルグルグル辺りをなぞった。
「いただきます。」
入浴後割り振られた部屋に戻り寝ることにした。
今日幸運だったのはこの懐の深い家族に引き取られたことだ、何らかの形で恩返ししたいものだがな。タイミング見つけていつか返そう。
リンが言ってた明日の誘い、あの顔からして体力を使うだろうもう寝ておくか。
ドタバタな一日であり、記憶喪失の自分であるが不思議と不安は感じなかった。




