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欲の虫  作者: 久芳 流
第3章

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第35話 灰枝色VS進藤始2

「なにが可笑しい……?」


 そう言って灰枝色を睨む進藤始。

 だが大の大人が凄んでみても少女は腹を抱えて笑い続ける。


 笑いを堪えるように息を吐き出し、色は口を開くと、


「いやね。ボスがあまりにも滑稽で……愚可愛(おろかわい)くて」


 色は煽るように始に向かって笑いかける。


「なんだと……?」


 その言葉を聞き始は静かに怒りを露にする。


「色。お前は私に対して愚かと言ったのか?」


「ううん。『愚可愛い』だよ」


「どっちでも同じだ!

 相変わらず身の程をわかっていないようだな。

 以前の襲撃の時も、6年前のあの日も!

 私に為す術もなく逃げるか泣くしかできなかったくせに!」


 その言葉を聞いて才はあの少年――灰枝新のことを思い出す。


「『王の虫』の実証実験。

 灰枝の家族を利用しての初めての『欲の虫』の解放でお前は摂取者にもかかわらず、私の能力に屈しただろ?」


 始がそう言うと色は黙り込む。


「支配され、自分の理性とは裏腹に欲が解放された時の気分はどうだった?

 自分の意思とは関係なく、父を籠絡し母に嫉妬紛いの目をされた時はどう思った?

 その惨状を目の前で大好きな叔父や弟に見られた時はどんな気持ちだった?

 お前は私に一度たりとも勝てたことがないんだよ」


「言いたいことはそれだけ?」


「ハッ。まだまだあるぞ。

 だが、そんな私に愚かだと?

 身の程知らずもここまで来ると清々しい!」


 始は手を広げ叫ぶと、「ツカマエロ」と奴隷たちに命令する。

 その瞬間、警と侑里は真っ先に色の元へ駆けつけ、才はやや遅れて歩き出す。

 警は色の身体を羽交い絞めにし、侑里は右から、遅れてきた才は左から色の頭に銃を突きつけた。


 色は抵抗しようとはせず、そのまま動かず。

 そんな色に向かって始はゆっくり歩くと、才を支配した時と同様に色の頬に触れた。


 進藤始は色をも支配するつもりなのだ。

 そして、色の顔に自分の顔を近づけると、


「王に歯向かうとどうなるか。この身で思い知れ」


「思い知るのはそっちだよ」


 瞬間。妙な喘ぎ声を出して膝から崩れる奴隷たち。


「!? な、なんだ……?」


 その状況に目を丸くして後ずさる始。

 警と侑里は目を白くさせ、ぴくぴくと身体を捩らせ倒れている。


(な……ナニ……?)


 才は間一髪のところで抑えることはできた。

 摂取者故か欲に耐性があるのが幸いしたが、震えが止まらない。


 動悸が激しく、息が乱れる。

 この感覚は前に経験したことがある。

 学校で色と相対した時に経験した『色の虫』の能力(ちから)


(でも――どうして……!?)


 と疑問が湧いて出てくる。

 警はまだしも、侑里や才は操られたこともなければ、色の粘液に触れたわけでもない。

 なのにこの内から湧き上がってくる劣情。

 しかも前の時以上に感じてしまう。


「支配が解けただと!? な、いったい……? ハァ!」


 そして、その動揺は始も同じ。

 まさか自分の支配が上書きされるとは思ってもみなかったようだ。

 それどころか自分の身体の異変も察したのか、身を捩っていた。


「だから愚可愛いんだよ、ボスは」


 そう言うと、色はゆっくりと始の元へ歩を進める。


「私がただへらへらと生きてきたと思う?

 ボスにやられるだけやられて、何も抵抗せずに」


 その言葉を聞いて始は直感したようにじりじりと後ろに下がる。


「私だって変態するんだよ」


「く、来るな!」


「もう遅いよ」


 色はタンッと軽い足取りでジャンプし、一瞬のうちに始の元に辿り着くと、自分の手を嘗め、その手を始の口や鼻元に押しやった。


「ん~~!」


 始は既に抵抗できない身体になっていた。


「もうこの部屋は私の臭いでいっぱい。

 摂取者でも耐えられない」


 人間の鼻はすぐに順応する。

 始の体内に入った『色の虫』の粒子は色の解放によって始の身体を限界まで過敏にさせた。


「でもさすがは『王の虫』摂取者。

 支配には敏感だねぇ。すごく入れているのにまだ抵抗してるんだもん。

 だけど、それも時間の問題。もう限界そうだね」


 始の顔は紅潮し、鼻からも血が垂れている。脂汗が滲んでいて、どんどんと身を捩っている。

 バタバタと身体を動かそうとするが、『色の虫』による愛撫が止まらない。


 むしろ色の手をニギニギとさせるたびに悲鳴を上げていた。


「まぁ考えてみればそうだよね」


 そして最後の仕上げと言わんばかりに、色は思いっきり始の顔を握りしめた。


「王とはいえ人間」


「~~~~~~」


 声にならない叫びを部屋中に響かせる始。

 その身体からは穴という穴から汁が出てきて――、


「ぁ……ぁ……」


「人間の根源たる性欲には敵うはずがないんだよね」


 色が手を離すと、始は目を真っ白とさせその場に倒れた。

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