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バカ達に絡まれたせいで結局寄ろうと思っていたスーパーは閉まってしまい、コンビニで用事を済ませて帰った。
バカの為に2時間以上無駄に振り回された事をボロアパートに帰ってコンビニ弁当を食べながら、ダンジョンに入っていたら3万円は稼げていたと考えて悔しさが再燃していた。
「次はマジ許さねぇ」
裕は人目を気にしなくなった事で大分好戦的な性格になり、その体格だけでなく顔つきまで変わった事を自分でも気づかずにいた。
そしてそんな事に関係なく、今の裕の一番の関心事は時間の有効な使い方だった。
2倍沸きのかっぱ擬きとの戦闘にも大分慣れ、裕に寄って来るのを待つ余裕もでき、ダンジョン内を無駄に走り回る事をしなくなった。
何体か纏まられても攻撃される前に仕留めるか、蹴り飛ばして距離を取る事で囲まれる事も防げたので最近は無理なく戦える様になっていた。
無駄に走り回る事が無くなったので息を切らす事も無くなり、必然的に休憩に取られる時間も減った。
お陰で少し残業する事で一日20万円と言う自分に課したノルマもこなせる様になっていた。
しかしその残業分の時間を作る為に色々と時間の使い方を見直す事になった。
管理人の日に管理の仕事をしながら合間に一週間分の纏まった洗濯をし、時間が余れば総菜の作り置きを作り雑務はなるべくその日に済ませていた。
そのお陰で今では夜にダンジョンに入りなおす余裕もでき、休憩もたっぷり取れる様になっていた。
裕は今人生で一番充実した楽しい時間を過ごしていた。
「この調子で稼いだとして、年間6000万円弱、5年頑張れば3億円弱、5年後と言えば23歳か。人生85歳まで生きるとして、3億円あったら年間500万円を切り崩しながら生活できるな。うん、500万円あれば少なくとも貧乏はしなくて済みそうだ」
裕は脳内での皮算用で自分の人生設計をしては英気を養っていた。
そうして2度目の知らせが来た。
ダンジョンに入り始めてから半年近くが過ぎていた。
≪一定値の浄化の確認ができました、願いの申請を受け付けます≫
この日を心待ちにしていた裕は飛び上がって喜んだ。
思っていたよりも早かったこの日の到来であったが、2度目ともなればたっぷりと考える時間もあった。
裕は次の申請では身体能力の数値化を願うつもりでいたが、それよりも試したい事ができていた。
「魔法って使える様になるのか?」
≪この空間内だけでなら可能です≫
そもそもこの世界で魔法を使うには、辺りに漂う気を使う事になる。
しかし肝心のその気と言うか魔素と言うか霊力は穢れ淀んでいるので使えない、と言うよりどんなに頑張っても効果が著しく出づらく、そとの世界で魔法を使うとなると余程の気の溜まり場所を見つけるしかないそうだ。
「じゃあ、俺の魔力とかMPなんて関係なく魔法が使えるって事か?」
≪必要なのは浄化され綺麗になった気です≫
そしてこの空間で浄化された気を使って魔法を使う事で、循環が早まり浄化が進むスピードが速まる可能性もあると聞き、裕は迷う事無く魔法を使える様にして貰う事にしてどの属性を使える様にして貰うか悩んでいた。
しかしそんな悩みなどまったくの無駄で、そもそも裕が思っていたのとは違い攻撃魔法には属性など無く、ただの具現化だと説明され驚いていた。
「じゃあ、例えば如意棒の様な剣を具現化して振り回すのも可能って事か?」
≪具現化できるのなら可能です≫
(それって魔法って言えるのか?)
裕は心の中で思いながらも口にはせずに、それでもこれからどんな戦い方をしようかと心を躍らせていた。
「じゃぁ、魔法を使える様にしてくれ」
裕は最終的に魔法を使える様にと願った。
≪願いの申請完了しました、空間の成長促進設定を申請します≫
そうしてさらに空間の広さを2倍沸きの早さを2倍にする様に設定する事に決め、さらに稼げる様になるのだろうとほくそ笑んでいた。
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