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俺だけのダンジョン  作者: 橘可憐


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某政党本部執務室にて


「それで美憂が部屋から出て来ないとはいったい何事だ?」


「それが予定していたより早いお帰りで、そのまま部屋に閉じ籠ったご様子、奥方様も手を焼いていらっしゃるようです」


「まったくあの女は社交の役にしかたたん。放って置け期待しておらん」


赤塚泰三はかけていた老眼鏡を外して執務机の上へと置くと、目頭をつまみ疲れた様子を見せ軽く溜息を吐いた。



泰三は孫の美憂の事を殊の外可愛がっていた。

その容姿の可愛さだけでなく、純粋で穢れを知らない素直さが愛おしくて仕方なかった。

美憂の上に兄もいるが、どうも堅物すぎるきらいがあるのが性に合わず、どうしても美憂にばかりに甘くなってしまう。


「美憂の報告を詳しく聞かせてくれ」


「はい、例の空間は2日ほどで見つける事ができたそうです。そしてその出入口を予定通り離れた場所にある大学内に難なく移せたとの報告もありましたので、未調室の仕事は無事達成させたもよう。しかし泰三様のお望みは叶わなかったご様子、その事で落ち込んでいらっしゃるのではないかと思われます」


秘書の報告を聞き泰三は深く溜息をつく。


「それでは個人的には引き込めんと言う事か。中卒の若造など美憂ならどうにかできるかと思ったのだがな。仕方ない金で解決するしかないか。しかしそれが知られれば例の部署と揉める事になる、それも厄介だ」


「慎重に事を運ばれた方が良いかと思われます」


「分かっておるわ、しかしその若造は2日かそこらでその空間とやらを探し出せるのだろう?ならばこの儂にも早急に提供させるべきだとは思わんか?」


「仰る通りです」


「まったく腹立たしい、可愛い美憂を何のために未調室なんぞに入れたと思っている。もしその若造が美憂を傷つけた様ならばそれ相応の報いを受けさせる。勿論例の部署に知られる事の無い様にな」


「承知いたしました」


報告はすべて聞き終えたとばかりに泰三が掌を振り退出を促すと、秘書は軽く頭を下げそのまま退出して行く。

泰三は秘書が静かに退出したのを確認して、受話器を持ち上げると外線へと繋ぐ。


「美憂を出せ、儂が直接話を聞く」


泰三は電話に出た相手に重々しく話しかけるとそのまま美憂が電話に出るのを待った。



美憂は自室のベットで枕に顔を埋め、裕とのやり取りを思い返していた。


「それってどう言い繕っても質の悪い搾取だよね。俺がどうして君に貢がなきゃならないの?」


美憂は何を言われたのかも良く理解出来なかった。


いつだって美憂が望む前に祖父の泰三が何でも与えてくれていた。

そのせいか心底欲しいと望んだものも無かった、だから搾取だと言われてもまったく意味が分からない。


「美憂は誰かから何かを取り上げた事など一度もないわ、ただお願いしただけなのに、何をそんなにお怒りになったのかしら?」


美憂のお願いにはいつだって誰だって頷いてくれていた。


「俺って君の何なの?」


そう問われると美憂は考え込んでしまう。

ただ未調室でも祖父からも重要人物だとは聞かされたが、自分より少し年下の普通の青年だった。

そんな普通の青年がいつもなら、いや、美憂の友達なら美憂の言葉には簡単に頷いてくれる筈だったのに、怒り始めた事にびっくりしてどうして良いか分からなくなった。


「それに美憂は謝りましたわ、お怒りになった理由が分からないからそんなつもりなど無いときちんと申し上げましたのに」


いつもならそれですべてが許されていたのに、今回裕にはそうはいかなかった。


一緒に過ごしてそんなに嫌な雰囲気も無かったから、友達になれたと気を許しただけなのに「頭ん中お花畑な奴とは関わり合いたくないから」そうはっきりと拒絶されたのもとてもショックだった。


美憂を拒絶した者など今まで誰も居なかった。

寧ろみんなが美憂の周りに集まって来ていた。


「お爺様は絶対に仲良くなれと仰られていたのに、どうしたら良いのかしら?」


美憂には何度思い返しても裕の怒りの理由がまったく分からなかった。


「美憂、お爺様からお電話よ、出られるかしら?」


「ええ、私からもお話がありますの、今代わりますわ」


(お爺様に相談してみるしかないわね)


美憂は国民のために長く政治家として君臨する祖父を敬愛していた。


(お爺様ならきっと答えをくれる)


美憂にとって泰三は絶対で間違った事など無い存在だった。



泰三は美憂の話を聞いて、例の空間を手に入れるのは一筋縄ではいかないと悟っていた。


望むだけの富が手に入るかも知れないと知りながら、何やら訳の分からない子供じみた遊びに費やしているなど言語道断だった。


「最近の若い奴らは本当に腑抜けておる、何を考えているのかまったく分からん」


泰三は半ば怒りに任せた言葉を吐いていた。


(美憂に下卑た言葉を投げつけた事もまったくもって許せん。これだから学も無く礼儀も知らん奴は・・・)


しばらく何かを考えていた泰三は意を決した様だった。


「藤代を呼べ」


泰三は執務机の上の受話器を取り命令すると、程なくして一人の人物が現れた。

その鋭い目つきや顔つきだけでなく、姿勢や体躯からもただ者でない事が一見して分かる。


「中国筋にでも彼奴の情報を流せ、彼奴は自室に例の空間を独占している。中国筋が手荒な真似でもしてくれればその後に上手く言い包めて物件ごと手に入れれば良い。しかし必要以上の情報は間違っても渡すなよ、中国筋が動かぬ様なら藤代おまえが動け、少々痛い目にあわせても構わん」


泰三は沸々と湧き上がる怒りに任せた判断を下していた。


そもそもが、自分には優先的に例の空間を与えられて当然だと考えていた泰三が痺れを切らし、孫の美憂を裕の助手に据える事で裕を上手く懐柔できると思っていた。

しかしその計画が失敗した事も信じられないが、あまつさえ美憂に下卑た言葉を投げつけるなど許される事ではないと憤っていた。


考えれば考える程に怒りが湧き、秘書には慎重に行動する様に念を押されていたが我慢ができなくなっていた。


最悪裕の住む物件(空間)を中国筋と取り合う事になろうとも、自分にならどうにでもできると泰三は考えていた。

寧ろそれよりもその過程で美憂が傷ついた以上に裕が痛い目に合う事を望んでいた。

そうすれば少しは大人しく言う事を聞く様になるだろうとも思っていた。


藤代と呼ばれた男は返事もせずに軽く頭を下げて了承の意を示し部屋を退出する。


こうして裕の知らない所で何やら不穏な会話がされている事など裕はまったく知らずにいた。



読んでいただきありがとうございます。

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[良い点] 売国奴のジジイが偉そうなこといってんなあ
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