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≪願いの申請完了しました、空間の成長促進設定を申請します≫
黒猫と言うかAI音声の説明によると、このダンジョンをさらに成長させるために進化させなくてはならないそうだ。
発見されずただ放置されたままの空間は、ひたすら地中目指し空間を広げていくそうだが、ダンジョン認定されたこの空間は裕の希望を取り入れられるそうだ。
このままこのダンジョンを広げるか、新たな階層を作り新たな生物を設定するか等ある程度の希望は叶えてくれると聞き裕は少し考えた。
新たな階層で新たな生物で新たなドロップ品設定にも魅力を感じるが、今の自分の能力では今のかっぱ擬きを一撃で危なげなく狩っている方が効率よく稼げる気がする。
冒険にも魅力を感じない訳ではないが、何しろ目標は働かないで食べて行くための『現金』が最優先なのだ。
如何に効率よく稼ぐかが最重要課題で最重要事項なのだ。
そうでなければこのダンジョンに挑む理由がない。
それに階層を増やしたら部屋の様子も分からなくなるだろうし、宅配の受け取りにも支障が出る事になるだろう。
それは困る。マジで・・・
「このまま謎生物の湧きを早めるってだけじゃダメなのか?」
裕は今現在体力的に余裕ができ、謎生物の湧いて来る時間間隔に少しばかり不満を感じていたのだ。
もう少し早い間隔で湧いてくれればもっと稼げるのにと。
だから裕の不満解消のための提案をしてみた。
≪可能ですが、それですとかなり早くなってしまうかと思われます≫
「早いってどの位?」
≪3倍です≫
「その辺の調整って難しいのか?」
≪成長に見合った進化が必要なのです≫
成長に見合った進化って何だよとイマイチ理解が覚束なかったが、裕はその後も交渉を繰り返し、結局空間の広さを2倍湧きの早さも2倍にして貰う事にした。
そうする事で今までの2倍稼げるようになると、裕は脳内で簡単に単純計算をしていた。
そして取り敢えずの目標である1億円達成まで2年頑張れば良いのかと内心でほくそ笑んでいた。
しかしこの考えが甘かった。
とにかくダンジョン内を走り回る事になり、忽ちに息が上がり足もガクガク言い出す様になり休憩回数が増えた。
息を整えているうちに何体も湧いていて、纏まられてしまうと攻撃を避けきれず傷を負ったりするようにもなり、本当に自分の戦闘能力の足りなさまで痛感する様になっていた。
単純に2倍稼げるとの目論見は見事に外れ、休憩時間が増えたせいで今まで通りの10万円もやっとの日も増える事になった。
結局裕は考えに考えて夕方の時間帯を利用してボクシングと空手を習い始めた。
何故かって?
どちらも週に3回通うのが限度だったからだ。
どうせなら早く身に付けたいと言うか、今のままでは全然ダメだという焦りが強かったからだ。
そしてサバイバルナイフを2本購入し、フライパンと鉈の二刀流からサバイバルナイフ2本持ちの戦闘法に変えた。
フライパンで防御に構えるよりも、蹴り飛ばしたりサバイバルナイフで切り上げた方が対処が早く攻撃を受ける事が少ないだろうと考えたからだった。
その考えは当たっていた様で、お陰で大分マシに戦える様になったと裕は少しだけ満足していた。
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