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俺だけのダンジョン  作者: 橘可憐


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「話があるなら今ここですれば良いだろう」


裕はイさんが侵入者かも知れないと思いながら、思いの外冷静に対応できている事に自分でも少し驚いていた。


イさんは裕が興味無さそうに草むしりを止めずに話すのに焦れた様子を見せながら、それでも何を言う事も無く暫く黙って傍に立ったままだった。


「さっきあなたの部屋に入った人私知ってます。あなたに教えても良い、私の話も聞くね」


急に流暢な喋り口で怪しい日本語をしゃべりだしたイさんに裕は呆気にとられ、つい草むしりの手を止めイさんを見上げてしまった。


「ここで話すは誰かに聞かれる、一緒にお茶しませんか」


「俺、今人が来るのを待ってるから」


イさんの話には確かに興味があったが、一人で聞くのは少し怖いし涼太が来るのを待たなくてはならないと言う思いからそう答えていた。


「あなた狙われている、相手を知るは重要ね、そう思わないか」


イさんに畳み込まれるとそんな気がして来ると言うか、いったい誰が部屋に入ったのか、裕の部屋にあるダンジョンの存在を知られたのかとか、色々と知りたい気持ちが段々抑えられなくなって行った。


しかし裕は意外にも冷静に考える事ができていた。


このイさんの話をどこまで信用して良いのか、そもそも自分で部屋に入っておいて犯人を知っていると言っているんじゃないのか、それに本当に誰かに裕が狙われているとしたら、それは涼太が言う様に管理者の意志の疎通問題や、他にもダンジョンの場所を知っている事を知られていると言う事になる。


ただ単に部屋にあるダンジョンの存在を知られているだけならば、狙われるのは裕では無くてこの土地の所有者の方だろう。

そしてこの土地はもう既に叔母の物ではなくなっているから、そこからして裕が狙われる理由がない。


だとしたらイさんは裕にかまをかけて何かを聞き出そうとしているか、それとも何か交渉をしようとしているのだろうと裕はそう判断した。


「俺には狙われる覚えなんて無いよ。だいたいこんなボロアパートの管理していて狙われると言うなら、俺は管理人を止めて引っ越すだけだね。面倒くさいのはごめんだ」


裕は自分でも意外に思う程平然と答えられていた。


「佐藤さんいつもあなたの部屋一緒ね。二人何か隠しているか」


「ああ、勉強を教えて貰ってるだけだよ。佐藤さんは俺が高校中退だから心配してくれてるんだ。もっとも佐藤さんの仕事が決まるまでの話だけどな」


裕は万が一誰かに聞かれた時のために、涼太と事前に考えていた言い訳をそのまま話した。


「ではなぜ、あなたの部屋あの中国人秘密で入るね。私その秘密探している。あなたそれ私に教える。私あなたに好きなお礼する」


イさんは既に裕が知りたかった事のだいたいを話している事に気付いていないのか、まだ裕と交渉するつもりでいる様だったが、裕はもうイさんの話にまったく興味が無くなっていた。


それよりも裕が留守の間に中国人の宋さんが部屋に入ったと知り、やはりこのアパートには他国の諜報員しか残っていないのだと、確信めいた事を思っていた。


そして今後こんな風に絡まれる事が無い様に、早い所あのダンジョンを消滅させなければと考えていた。


「アナタタチオモシロイハナシシテルネ、ワタシノコトハナシテマシタカ」


折角イさんを適当にあしらえると思っていたのに、部屋に入った犯人と思われる宋さんまでが突然の様に登場して来た事に裕は驚きを隠せなかった。

話しが部屋まで聞こえていたとも思えなかったし、今の今まで気配さえ感じなかったのだ。


「さっき俺の部屋に無断で入った犯人は宋さんだと教えてくれてた。それでどんな用があったの?」


これが涼太相手だと意外にしどろもどろになっていただろうに驚いたのも一瞬で、裕は二人が相手だと結構肝が据わっていたのか冷静に話ができていた。


「ワタシハナンノヨウモナイ、ヘヤニハイッタオボエモナイネ」


話し方はカタコトだが、イさんよりよほどしっかりとした日本語を話す宋さんは裕が考えてもただただ胡散臭かった。


「ふ~ん、それなら別に良いんだ。盗まれた物も無いみたいだし。でも知らない間に入られるのは気分が良くないから、用があるなら俺が居る時にしてよね」


裕はそう言ってから二人を無視して草むしりの続きを始めた。


二人の話が嘘か本当か裕には判断出来ないが、多分あのダンジョンの存在はイさんはまだ気づいていない様だが、宋さんには薄々気付かれているのかも知れないと何となく考えていた。


しかし裕の部屋にダンジョンがあると言う確証はまだ掴まれていないと不思議とそう思えた。


だから裕は不自然な態度を取る事も無く、狼狽えて涼太に電話した時とは違い、二人が傍に居るのにその後も草むしりに没頭する事が出来たのだった。



読んでいただきありがとうございます

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