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俺だけのダンジョン  作者: 橘可憐


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裕は涼太との交渉の結果から、願いの申請で手に入れた1億円と部屋に新たに隠してあった現金も一緒に例の口座に預け入れる事にして出かけていた。


涼太が一緒に行ってくれるのかと思っていたが一人で出かける事になり、裕は現金の入ったカバンを抱える様にして銀行へ行った。


銀行で預入票を書いて提出すると、応接室の様なブースに通されて裕は忽ちドキドキしはじめ、現金を預けるまでは気が気じゃなかったが、銀行員も慣れたものなのか明らかにその場に相応しくない裕にもとても丁寧に応対してくれた事で、裕もなんだかVIPにでもなった様な気分になっていた。


そうしてちょっと良い気分でアパートに帰ってみると、どうやら誰かに部屋に入られた形跡があった。


まず絶対に閉め忘れた筈のない部屋の鍵が開いていた。

恐る恐るドアを開けて中を覗くと、荒らされてはいなかったが物が動かされているのが分かった。


裕の部屋は物が少ないだけでなく、裕は意外に物の置き場や向きにも拘る方なのでほんのちょっとの違和感も敏感に感じ取れたのだった。


最近は裕が部屋に居なくても涼太がダンジョンに入っている事が多かったので、裕も少し気が緩んでいた所もあったが、涼太から今日は来られないと連絡があって一応用心はしていた筈だった。


(やっぱりこの前の話聞かれちゃったのかな)


部屋に盗聴器が仕掛けられていた事から用心のためいつもは大事な話はダンジョン内でしていたのだが、この前は涼太に朝食を振舞った勢いでそのままこの部屋でかなり大事な話をした様な気がする。


仕掛けられていた盗聴器は撤去してあったが、何しろこのボロアパートの壁はかなり薄いので、盗聴する気が無くても聞かれる事もあるかも知れない。


涼太曰く隠そうとすると余計に目立つからとダンジョンを隠していたカーテンは外し、キッチンが多少手狭になったがガラス戸の裏側に冷蔵庫を置いた。


この場所にダンジョンの入り口があると知っていないとガラス戸に衝突する事になり、まず飛び込む事自体考えられない格好にはなっていたし、わざわざガラス戸を開けて冷蔵庫の裏を探ろうとする者などいないだろうと言う事だった。


なのでダンジョンは発見されていないとは思うが、裕は急に不安な気持ちが身体中に広がって行くのを感じていた。


万が一誰かがダンジョン内に居たらどうしようと思うと確認のために入るのも怖かった。


本当だったらこれからダンジョンに入るつもりでいたが、裕は部屋を出て鍵をかけ直しアパートから離れてから涼太に電話をした。


「誰かに部屋に入られたみたいなんだけど」


散々涼太に身の危険も考えられると脅されていた事が急に現実になり、電話に出た涼太にそう言うのが精一杯だった。


「分かりました、今から僕が向かいます。それまでは・・・そうですね、庭の草でも毟っていてください。できるだけいつも通りの雰囲気でお願いしますね」


既にアパートから離れてしまっていたが、涼太にそう言われ裕は大きく深呼吸をしてからアパートに戻った。


そしていつも通り、いつも通りを意識しながら敷地内の草むしりを始めると、意外な事に段々と無心になって行き不安な気持ちも落ち着き始めていた。


「オソウジデスカ、モウデカケマセンカ」

イさんが部屋から出てわざわざ挨拶をして来た。


裕は咄嗟に部屋に入ったのはイさんかも知れないと思った。

彼の部屋は裕の隣なので、聞くとはなしに話も聞こえているのかも知れないと考えた。


「出かける予定は無いけど、出かけてたの知ってた?」


「スコシムズカシイネ、ワタシトデカケナイカキキマシタネ」


裕はさり気なく探りを入れてみたのだが、イさんには通じなかったのかはぐらかされたのか良く分からない返事が来た。


「俺とイさんで一緒に出掛けようって事? 何処へ?何しに?」


「ワタシアナタトナカヨクシタイ、アナタワタシアンナイスルシゴトネ」


「俺にイさんの案内をするのが仕事だって言ってるの? 冗談だろう」

裕は話の内容が分かり思わず鼻で笑ってしまった。


イさんは良く裕に韓国の総菜をお裾分けしてくれたので裕もお返しに色々と渡したが、その度に何となく人懐っこいと言うより段々と図々しくなって行くのが不愉快になっていた。


極め付きが裕の自転車の鍵をどうやって外したのか、無断で乗り回された事で頭に来てそれからは付き合いは浅くしていた。


自転車を勝手に乗り回すのは犯罪だと言ったのだが、国民性の違いなのか彼の道徳観念なのか知らないが、友達の物を借りただけだと悪びれる事も無く、ちゃんと元の場所に置いてあると威張られたのには裕も開いた口が塞がらず、結局もう二度とするなと抗議して終わらせた。


なので今まであくまでも管理人と入居者と言った関係だけにしていたのに、一緒に出掛けようなんてどう言う魂胆があるのかとますます疑わしい気持ちでイさんを見詰めた。


「ワタシアナタニダイジナハナシアル、ヘヤダメカラデカケルネ。ダイジョブ、オカネワタシダスネ」


裕はその返事を聞き、部屋に入ったのもこのイさんだと確信し、いったいどんな話をするつもりなのかと少しだけ興味が沸いたのだった。



読んでいただきありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[良い点] 何回やらかせばわかるんだこのバカ主人公は笑 無視しろ笑アホ笑
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