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「そう言えば今回空間の成長促進設定の申請をされないけど良いのか?」
裕は管理者である黒猫に聞いてみた。
≪この先は空間が縮小していくだけなので成長の予定はありません≫
「ああ、それで放置しておいても問題無いと言ってたのか」
≪かなり早いペースで浄化が進んだので問題ないと言ったのです≫
「なになに、僕はその話は初耳なんだけど詳しく聞いても良いのかな」
どの話が初耳だったのかは知らないが、裕よりもいつも積極的に色々と質問をしていた涼太が、黒猫から聞いていない話があった事に裕は少し驚いていた。
「何を聞きたいの?」
「ある程度まで浄化が進んだら後は消滅していくとは聞いていたけれど、かなり早いペースで浄化が進んでると言うのは事実なの?」
「そうみたいだよ」
「その早いペースっていうのはいったいどの位早いのか統計って取れないものかな」
「俺だってダンジョン攻略なんて産まれて初めてなのに、そんな事を俺に聞かれても分かんないよ」
「じゃぁ、初めからどんなペースで攻略していたのかできるだけ詳しく聞かせてくれないかな」
涼太にそう望まれ裕は取り敢えずこのダンジョンを見つけてからの事を思い出せる限りで話した。
初めはかっぱ擬きを1体倒すのにも手こずっていた事、願いの後の成長促進設定で湧きの早さを早めた事や、それに伴った一日の稼ぎの推移などを特に重点的に話していった。
裕が話し終わるまで涼太は「うんうん」と時たま相槌を入れるだけで大人しく聞いていた。
「じゃあ、山伏君はここで願いを4回叶えた事になるんだね。僕はそのうちの3つの報告は受けているけれど、やっぱりそのうちの一つで叶えた隠した能力があるって事なのかな?」
あまりにも静かに聞いていたので、裕はその辺の矛盾も考えずについうっかりして話してしまったが、空間内転移の能力は知られる訳にはいかなかったのを思い出し思わず顔を顰めてしまった。
「そんなに秘密にしておきたい事なのかな?」
涼太の圧を感じる鋭いツッコミに裕は少し狼狽えた。
空間内転移出来る事もその空間の出入口を好きな所へ設置出来る事も秘密にしておきたい。
と言うか、知られたらどんなヤバイ状況になるか今は何となく想像してしまうから絶対に知られたくはない。
でも、涼太の事は信用しても良いと思い始めている今、涼太になら話しても良いかと裕の心は少しだけ揺らいでいた。
「え~っと、ココとは別のダンジョンの場所を教えて貰った」
裕は取り敢えず嘘は言っていない体で涼太に秘密を打ち明けた。
多分裕が詳しく打ち明けなくても、涼太ならいずれは空間内転移もダンジョンの出入口設置の話も思いつくだろうと裕は思ったのだ。
切っ掛けは黒猫からの提案だったとは言え、裕に思いついたのだから涼太が同様に思い付くのも時間の問題だとしたら、わざわざ裕がその能力を持っている事を教える必要も無いと咄嗟に考えたのだった。
「なるほどね、だからこのダンジョンにあまり執着を見せなかったのですね。納得しました。それで、そのこことは別のダンジョンの事は秘密にしておきたいと言う事ですか?」
涼太に改めてそう聞かれると裕は少し困った。
もう既に涼太にならあのスライムダンジョンの事は教えても良いかなと言う気はしていたのだ。
しかしその出入口を新しいアパートの自分の部屋に設置して、また一人で楽しもうと考えていたとは言えないし、どう説明したら良いかと悩んでいたと言う所が大きかった。
「別に秘密にしておきたかったという訳じゃないよ。ただここから通うのには大変だったから諦めていたと言うか、忘れていただけで。最悪の場合、またダンジョンに入りたくなったら行くかも知れないとは思うけど」
裕は苦し紛れに思いついた事を言ってみた。
実際あのスライムダンジョンに歩いて通うとなったら近場とは言え大変なのは確かだったし、涼太にこうして知られる事が無かったら一人で楽しむつもりでいたのは本当の話だ。
嘘は多少の事実を織り交ぜると信憑性が増すと聞いていた裕は、そのお陰か思い付きで話したとは言え嘘をついているという後ろめたさなど無かった。
もっとも裕にとって隠しておきたい重要な事を話してはいないだけで、あながち嘘とも言えないのだから罪悪感など抱き様も無いのは確かだった。
「そういう事ですか。それじゃぁその場所も教えて頂けるのですかね。僕としてはもっとデータも取りたかったし知りたい事もまだまだありましたので、是非そうして貰えると嬉しいのですがね」
裕は結局こうしてスライムダンジョンの事を涼太に教える事になってしまったが、今となっては後悔などまったく無かった。
それよりもこの場でスライムダンジョンを使って涼太とうまく交渉して、裕にどんな有利な事を得ようかと内心でしっかりと考え始めていたのだった。
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