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俺だけのダンジョン  作者: 橘可憐


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裕が涼太の案内で連れて来られたのは、霞が関にある古いビルの中のそれ程大きくもない一室で、ドアの脇には国家未詳案件調査対策室と書かれた表札の様な古ぼけた木札が張り付けられていた。


「ここなら盗聴の心配なく秘密の話もできるから、遠慮しないで入って」


涼太がドアを開けて入って行くのに裕は少し緊張し躊躇いながら続いた。


中に入るとお役所風の雰囲気のまんまでデスクが5つ並べられていて、少し奥に行くと衝立で仕切られた場所にある古ぼけた応接用の革製のソファーに座る様に促された。


「皆出払っているみたいだから緊張しなくていいよ、だけど課長にだけ連絡させてね」


涼太はそう言うと何処かへ電話をしはじめ、この場から離れて行った。


裕はその間どうも落ち着く事ができず、辺りをあれこれと見回してみるが、すぐ傍の衝立のせいか狭く窮屈さを感じるだけで、あまり部屋の様子を窺う事はできなかった。


これからどんな話をされるのか、あのダンジョンはどうなるのかと考えると、裕はさらに緊張していく様だった。


そうして戻って来た涼太によって出されたお茶を飲み、しばらく他愛もない雑談をしていると、慌てた様子で現れたのは白髪でべっ甲フレームの眼鏡をかけた細身で神経質そうないかにも課長と言った感じの人だった。


「お待たせして申し訳ありません、私この国家未詳案件調査対策室の課長をしております。名は体を表すと言いますが私はその逆と言いましょうか、子供の頃は海辺の町でまったく学ばないヤツだと言われながら育った山辺学と申します」


名刺を差し出されギャグの様な挨拶をされたが、裕はどう返して良いかもわからず、立ち上がり軽くお辞儀をしてから名刺を受け取り「山伏裕治です」と答えた。


「どうぞ座ってください。何やら山伏さんは不思議な現象を体験をなされているとか、私ねぇそう言う話昔から大好きなんですよ。私が子供の頃はスプーンを曲げたり透視をしたりが流行ったので、私も夢中になって練習してみたんですがねぇ、私にはどうもそう言う特殊な能力は無かったようでしてね、かと言って研究する程の知恵も無く、仕方なくこうして調査する仕事をしてるんですよ。山伏さんの貴重な体験を是非詳しくお聞かせいただければ私も勉強になります。どうぞご協力くださいねぇ」


グイグイ来る課長に圧倒されながら裕は返事もできず頷いていた。


「課長はこんな風でもとても優秀な人なんだよ」

涼太が裕の隣に座り内緒話をする様に耳元で話してきた。


「佐藤君、そういう事はもっと大きな声で本人に言ってくれても良いんだよ。でも僕としては優秀と言われるより凄いって言われる能力が欲しかったんだよねぇ。時間を止めたり瞬間移動なんてできたら最高だよねぇ。そうしたらきっと人生ももっと楽しかったかも知れないよね。もし若い頃にそう言う能力を手に入れていたら、遣りたい事が尽きなくてきっと勉強も手に付かなかっただろうねぇ」


課長は眼鏡のフレームを上げながらニヤリと笑いそんな事を話した。


裕はすっかりと課長のペースに引き込まれ、さっきまで感じていた緊張などすっかり吹き飛んでいた。


「それでは時間も遅くなってきましたし、そろそろ本題に入りましょうかね」


課長の眼鏡がキランと輝いた様な気がしたのは裕の気のせいだろうが、しかし課長のその言葉に裕はヘビに睨まれたカエルの様な気分になったのは確かだった。



読んでいただきありがとうございます

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