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「このダンジョンが誰かに特定されているって事はあるのか?」
≪現在特定はされていませんが存在は知られています≫
「もしかして最近このアパートに越して来た奴らは関係者だったりするのか?」
≪分かりかねます≫
そもそもこの空間の管理者と明確な意思の疎通ができるのは今の所裕だけだそうだ。
何故なら管理者に空間に入った者の意志が言語に関係なく理解できたとしても、管理者の意志が発見者に伝わる事は少ないらしい。
それは人間の方が頭から分からないとどこかで拒否をしてしまう事が多く、なかなかに伝わりづらいのだと言う。
その点裕は純粋と言うか、普段からミステリーものやオカルト関連や異世界物の知識が多く拒絶する事無く受け入れていたのが幸いしたのだろう。
なので例えばこのダンジョンに別の人が入り込んだとして、ダンジョンだと受け入れられず別の意識が強く明確に働いてしまうと、この空間の様子は上書きされてしまう事もあるそうだ。
故に管理者とも意志が通じなくなる事も多く、いまだにこの空間の真の存在意味も伝わっていないらしい。
「良く分かんないけど、じゃあさ、このダンジョンが誰かに見つかって俺がここを諦めたとして、別の同じ様な空間を探し出せばまた俺はダンジョンに挑めるって事か?」
≪そうですね、ここは予定よりだいぶ速い速度で浄化が進んでいるので、今後放置されたとしても何ら問題はありません。別の空間でも浄化を進めてくれても構いませんよ≫
「何かノルマでもありそうな言い方だな」
≪ノルマはありませんが、穢れが多い場所で浄化速度が追い付かないとこの様な空間が増える事になり、混乱を招く事も多くなるとともに管理も行き届かなくなり、実際管理者不在の空間も増え始めています≫
「管理者が居ないと何か変わるのか?」
≪空間の書き換え認定も無理なので、願いを叶える事も無理です≫
「それってただの浄化空間としての機能しか無いって事か」
≪そうです、空間内に人間が入る事は不可能となり、人間界とこの空間がただ重なる事になり体調不良や怪奇現象などを引き起こしがちになります≫
「それじゃ、1個でも多く早い所こんな空間を見つけて浄化の手助けすれば、俺も稼げて世の中の役にも立つと言う事か」
≪そう簡単に見つけられるとも思えませんが、手助けをする事は可能です≫
「それってどうやって? 場所を教えてくれるって事か?」
≪あなたが次の願いで空間内転移を望んでくれるのなら、別の空間への転移が可能になります≫
「それって空間内だったら転移でどこの空間へも移動出来るって事なのか」
裕の理解であっているのか確かめる様に慎重に聞き返す。
≪そうです≫
裕はその返事を聞いて、たとえこの空間を手放す事になったとしても別の新たなダンジョンを手に入れられるのだと内心で安心し喜んだ。
既に3億円を稼ぐ事を目標にしていたので、できる事なら誰にも邪魔されず一刻も早く達成させたいと願うのは当然だったので、少なくとも新たなダンジョンを手に入れられるのなら問題ないと胸を撫で下ろした。
「じゃぁ次の願いを叶えるまで頑張るか」
裕は次の新しいダンジョンでは1体あたりの討伐金額の引き上げを要求しようと考えながら、だとしたら魔物は少し強い奴って事になるのかなど、既に心は新たなダンジョンに向かっていた。
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