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俺だけのダンジョン  作者: 橘可憐


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誤字報告ありがとうございました


ジュサッ!!


つららの様な槍状の氷の刃がかっぱ擬きに突き刺さると忽ちに光の粒子へとその姿を変え消えてゆく。


裕は成長したこのダンジョンで、かなり早くなったかっぱ擬きの湧きの早さにも楽々と対応できる様になっていた。


魔法を使える様になったのは本当に有難かった。


魔法と言っても実際の所それは裕によるただの想像の具現化である様で、氷の刃だけでなくかっぱ擬きを焼き尽くす様な炎も出せたし、ブーメランの様な風の刃も出せたし、窒息させるような水の球も出せた。


何なら大津波や空間内の広い範囲に雷を落とす事もできたが、範囲や威力が大きくなればなるほど具現化に時間が掛かり、所謂長文詠唱をしている様な不便さがあったので止めた。


試しにと5mもあろうかと言う長い剣を具現化して自分を中心に回転しながら戦ってみたりもしたが、目が廻るし意外に疲れるので止めた。


地雷の様な罠魔法を片っ端から仕掛けたりもしたが、あまり効率が良いとは言えずやはり止めた。


それに最近気づいたのだが、光の粒子が消えるのが早いとその分かっぱ擬きの湧きが早くなる様だった。

多分かっぱ擬きが湧く一定の時間間隔と言うのは湧いた後の経過時間だけでなく消滅にも関係する様で、要するに1秒でも早く倒す事が地味に次の湧き時間にも影響するのだろう。


それに気づいたのは、アパートの住人の来訪による中断が何度かあったにもかかわらず目標金額達成時間が少し早かった事があったからだった。


その日は考え事もあって、初級魔法の様な攻撃で作業の様にかっぱ擬きを倒していた日だった事から、きっと自分の考えは正解だろうと思い、今は風の刃の様な発動の早い魔法やビー玉の様な弾丸を指鉄砲とばかりに指の先から放出して楽しみながら1秒でも早くを意識して倒していた。


≪本日の報酬目標350,000円達成≫


裕は今日の目標を達成したのを確認して出口へと向かい黒猫を肩に乗せ、いつもの様に報酬を受け取るとダンジョンの外へと出た。


最近裕は少し早い時間に行く事でボクシングジムの練習器具を使わせて貰える様になったのが嬉しかった。

なので空手道場も同じ様に早めに行き自主練習をしている。


魔法を使う様になり折角鍛えた体力や筋力が衰えるのを防ぎたかった事もあるが、何だか習うのが楽しくなっていた。


出かけようと玄関で靴を履いているとドアの外に人の気配があった。


何だか部屋の中の様子を窺っている様にも思える。


裕は構わずにドアを開けると、中国人入居者の宋さんだった。


宋さんは裕の姿を確認すると「アブラアリマスカ」と慌てる様子も無く聞いて来る。

この中国人夫婦は事あるごとに醤油だ砂糖だ小麦粉だと借りに来るが、いまだかつて一度も返してもらった事が無い。


裕が管理人だと知り借りる=貰っても構わない位に考えているのか、貰うのは当然だとでも思っているのかこう頻繁に続くと裕もぶっちゃけ面白くない。


しかし裕はこれも管理人業務の一環だと思うと嫌な顔をする事もできず、かと言って返して貰えないのもこうなってくると腹立たしい。


裕は少し考えて、以前唐揚げを揚げてフライパンにそのままにしてあった油を思い出し、そのフライパンを持って来ると「油はこれしか無いけど良い?フライパンはちゃんと返してよ」そう言って差し出した。


裕にしてみれば使用後長く放置して酸化した油の処理をしてくれるなら有難い程度に考えたちょっとした嫌がらせのつもりだったが、宋さんは躊躇する事無く受け取って部屋へと戻って行った。


このアパートの住人は何をしているのか良く分からない人が多いが、この宋さん夫婦もちょっと良く分からない所があった。


仲が良いのか悪いのか、夕方夫婦で出かける所をよく見かけるが、何故かアパートを出るといつも別行動で別々の道を行く。


ジョギングやウォーキングと言った風でも無くただ散歩するのなら別に夫婦一緒でも良かろうにと見掛ける度に裕は思っていた。


「まあ、俺には関係ない。行ってきます」


裕は誰に言うでも無くそう言うと部屋を出てドアに鍵をかけ、部屋の外に止めてあるママチャリを押してアパートを出るのだった。



読んでいただきありがとうございます

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