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第9話 こうして釣り部は動き出す

鍵っ子です。


前回お話をしたように、今後は週一くらいのペースでお話の更新を行っていこうかと考えております。

しばらくは梅雨時期の内容が続きますので、楽しんで頂ければ幸いです。

 談笑をしながらの登校、最初の頃には絶対にイメージすらできていなかった僕の高校生活は着実に彩を見せ始めている。

 同じクラスメイトの人に囲まれて教室のドアを開けている、なんてことがちょっと前の自分に想像できただろうか。

「おはよう! みんなは元気かい?」

「はいはーい! おっはよー!」

「元気だね、二人は」

 明るい二人の人気は言わずもがなである。その中で、ピンクガールが驚きの声を上げる。

「なっ!? どういう組み合わせなのよ!」

「ぬるちゃんも、おっはよー」

 そう言って、夏川さんは春山さんに容赦なく抱きついていく。

「んにゅ! おはよう、じゃ! なくて、なっつーと桐内に大山の面子はレア過ぎない!?」

「まぁ、そのことについては今日の昼休みに問い詰めることがあるから春山さんも参加してね~」

「わー、桐内君が他人を巻き込むなんていけないんだぁ~」

「おい、こら! どの口が言ってんだ!」

 確かに、ゲリラ的に参加をしてもらった桐内君は良き見張り役として作用してくれた。そこには感謝だけど、肩に腕を回すのはやめて欲しい、重い……。

「まさか! なっつーに迷惑かけたんじゃないでしょうね? それでなくても、あらぬ誤解を招いていた張本人さんもいるみたいだけどぉ? ねぇ~、大山クン」

「あははー、いやだなぁー大丈夫さ問題は起こしてないよ」

 ザザッ! と、数名の春山さんグループにいる女子たちが並び立ち、睨みを利かせている。

 恐ろしすぎるんですが……。

「まぁまぁ! ぬるちゃんが思っているようなことはなかったよ! むしろね! 私の勘違いでしたぁ~なんちって~!」

「なんそれ!? 全くもう、一人で騒ぎ立てたかと思えば手のひら返しも爆速じゃない!」

「はいはい! とりあえず悪者じゃないって言うのが証明されたんだからそれでもいいじゃん」

「あーもう、言っとくけど、これでも心配しとったんやけんね!」

「はいはい! 分かったけん、深呼吸をしましょうねぇ~ぬるちゃんは手間のかかる子だぁ」

「あ、そうそう! 春山さんと冬梅さんにも報告しないといけないニュースもあるんだった!」

「あっ、もう! ムリィー、情報過多すぎマジ無理問題発生中! 一旦ストップ、お腹いっぱい」

 ほうほう……。これはこれは、中々に珍しい現象が起きている。普段は強気な姿勢を崩さない春山さんが夏川さんと桐内君の連撃によって圧倒されていた。


 その様を見ながら、自分の席に向かっていると、後ろの席にいる冬梅さんと目が合った。

「おはよう、今朝の駅振りだね」

「おはよ、そうだね」

 更に、彼女も珍しく僕の顔をジッと見つめている。いつもならば、すぐに目を逸らすはずなのだが……。

「なんか、気にしてる?」

「大山君、片方のほっぺたが赤くなってるよ?」

 まて! そう言えば、いつの間にか……と、いうか! 大分前から誰かに疑問を投げかけることが自然とできるようになっている。

 いや、それよりもまずは冬梅さんからきた質問への回答をしなければ!

「よく気づいたね。まぁ、その〜学校にいる先輩と少しだけ喧嘩しちゃって殴られたんだよね」

 僕の回答を聞くや否や、奇麗な指先が僕の顔に近づいてきた。頬に触れるまで、残り数センチ。

 そこで、冬梅さんの動きが止まり。そのまま、離れていった。

「そっか、気をつけてね……」

「あ、うん」

 多分、その先にも何か言いたかったことがあるのだろうな。と、言う雰囲気は伝わっていた。

 でも、僕はその先に踏み込むことができなかった。それは、どうしてなのか? あのときに冬梅さんが差し出そうとして停止した指先と同じ様に僕達はまだ、お互いに躊躇っている。

 いつか、その先に踏み込むことができるような関係を誰かと築けるだろうか。


 程なくして、担任が教室に入ってきたタイミングでチャイムが鳴り響く。

「よぉーし、それじゃあ今日は選択科目を選んで貰うから前の奴から用紙を一枚ずつとったら後ろに回せ〜」

 普段はこの教室で授業を受けるが、それとは別に自分のやりたい授業を選択して受けることができる。つまり、自分の将来を見据えた選択肢をチョイスできる、


 中には仲のいいあの人や、気になるあの人と同じ科目を選びたいと考える者もいるはずだ。だが、この選択は自分自身のやりたいことを貫く為の要素でもある。

 僕に関しては、はっきりとした夢があるので、周りに流されるつもりは全くない。


「美術は、必須だな……」

 密かに抱いている夢は漫画家だ。その為には美術を学ぶことは大きな経験値となる。

「よぉーし、全員に渡ったなー? 五分後に回収するからなー」

 ザワつく生徒をまるで見透かしたかの様に担任がため息をする。

「あのなぁ〜、選択科目は自分の為に選ぶもんだぞ? 仲良しごっこをする為のもんじゃないぞ〜」


 その通り、正論ではあるがしっかりと夢を思い描いている人は全体でどれほどいるのだろうか。


 とりあえずは進学をする、そう言う考えの人だっているはずだ。

 だが、その反面でこの学校にこう言ったシステムがあることを知って入学をしたのは本人たちだ。


 離れようが、何をしようが。


 選んだからには文句は言えない。

 それが、選択科目だ。





「はい、時間だ! 順番に先生が回収するからなー」


 そう言って、サクサクと回収をして回る。



 ものの数分で、回収作業は完了し教卓の上で回収した用紙を小気味よい音を立てて、整える。

 これにて、選択科目が決定する。








 その後は授業を真面目に聞き、数時間が経過した後に昼休みを迎える。


「はい! では、待ちに待った昼休みタイムです! 大山君と夏川さんには詳し〜く、ご飯を食べながら伺いたいとおもいまーす!」

 そう言って、桐内君は問答無用で空席となっているお隣さんの席を奪い去り、即座に準備を完了させる。

「そうね、まずは二人の事情を聞かせてもらおうか〜」

 ペリペリとおにぎりの包装を剥がしながら、春山さんも参加する。

「んむぅー! ほれはへずねー!」

 何故かミカンを食ってる夏川さんも参加する。

「なっつー、汚いからー! 飲み込んでから話せー」

「えっと、冬梅さ……」

「大丈夫! 後ろの冬梅さんも参加者だ」

  冬梅さんはお弁当袋の紐を解きながら、コクリコクリと頷いている。

 となれば、僕が移動すれば全員が見える様になると考え、窓側に背を向ける形で移動する。

「んーと、そうだな。口で説明するとややこしいから、紙に順を追って流れを書き出すね」

「やまっち! ほれはないふアイディア!」

 うるせぇ、ミカンを食いながら喋るんじゃない。つか、なんで紅まどんな食ってんだよ。


 ・夏川さんから帰りの電車がここ1週間くらい全部、被る先輩がいると相談を受ける。

 ・距離を置きたいと言う事で僕が協力をする。

 ・更に、情報を少しでも集めたいと考えた僕はボックス席での会話をスマホに動画として録画して欲しいと夏川さんに指示する。

 ・結果、予想以上に良くない面が浮き彫りになり僕が無理矢理気味に夏川さんと先輩を引き離す。先輩はお怒りモードに……。

 ・後に夏川さんがスマホで録画した動画をチェックし、先輩を懲らしめることが確定

 ・今朝の大立ち回りに発展するも、桐内君や夏川さんの協力によって、無事に解決した。


「あー、大立ち回りって言うのはね、スマホで録画した動画を大音量で流したんだよね」

「あん時は焦ったかんな! いきなり先輩に失礼かますわ、怒った先輩にイヤホンを千切られてたし、殴られはするしで、もうヒヤヒヤしたよ!」

「大山、アンタ……」

「やまっち……そこまでされてたの!?」

「かなり、無茶をしてませんか?」

 洗いざらい桐内君が補足してくれたが、何やら他の三人衆の反応が良くない。

「って、あっれぇ〜……なんか、おヤバイ感じぃ〜?」

 確かに、目的を果たす為に少しだけ体を張ったかな? と、言う自覚はあったが女性陣の感覚では目的の達成とは別に、心配をさせてしまったようだ。

「普通に考えてさ、お互いが大喧嘩に発展してもおかしくない状態じゃない? それってさ」

「私物を壊されて、オマケに殴られた! なんて、よっぽど頭にきたんじゃない?」

「あ〜、特に苛立ちとかはなかったけど、とにかく夏川さんの問題をいち早く解決することばかりを考えてはいたかな」

 

 しばしの間、沈黙が続き――。


「確かにさ、なっつーからすれば私に相談なんて容易にできなかったかなー? とは、思うよ。自分の性格は自覚してるからさ」

「ごめんね、ぬるちゃんもなりふり構わずに突っ込むと思って、やまっちに相談しちゃった」

「それに関しては、僕も夏川さんと同じ意見に辿り着いた。何よりリスクが大きいと判断した」

「流石に、先輩の男子ってだけで十分な脅威だしなー。選択肢としては間違ってないわな」

「わ、私も同じ電車にいて大山君とは会っていたけど何も協力できなかった……」

「いやいや、協力なんて! そもそも、俺だってもらい事故みたいなもんでやむを得ずだったし」


 なんだ? 呆れている訳でもなく、怒った様子でもないが……寂しそうな雰囲気を感じる。 


「ねぇ、大山。最近の動きを見てて感じたことがあるんだけどさ、もっと自分自身を大切しなよ?」

「私も、何ができるか戸惑うけど力にはなります」

 春山さんに続いて冬梅さんも僕を心配している? そこまで自分自身を粗末に扱った覚えもなければ、冬梅さんだって十分過ぎる程に力になっている。そもそも二人がいなければ釣り部の再始動すら叶わなかったレベルだ。

「だなー、確かに! 俺だっているしさ!」

「今回の件に関しては、あたしが丸投げした部分が多いから、さ! やまっちもじゃんじゃん頼ってよ!」


 四人は既に十分な程に僕を支えている。故にこれ以上頼るなんて、迷惑でしかない筈だ。そう、先を望むなんて贅沢は許されないし、その資格は僕にはない。


 僕はその辺の線引きもしっかりと理解している。


「ありがとう、助かるよ」

「あと! この際だからもう一個、気になったことがあるからこれも言う」

 そう言うと春山さんは、自分の髪の毛を指にクルクルと巻き付けてよそ見をする。

「なまえ! 気になってるの!」

「な、何か呼び方が間違ってた!?」

 う……そだろ? はるやまさんじゃなかった!? いや、そんな訳はない筈だ! 

「そう! そのー……それ、呼び方よ! もう、呼び捨てでいいから」

 ちょっとだけ気恥ずかしそうに春山さ……春山はそう告げてくれた。

「わかった、春山だね」

「うぅ~! やっぱり大山は苦手よ、調子狂うじゃん!」

 えぇ~……どうすれば良かったの?

「おぉ! 春山、その提案はナイスすぎる! 俺も皆のことを呼び捨てにしちゃおーっと」

「はいはい、分かったわ好きになさい。後は~冬梅さんはどう呼ぼうかなぁ」

「私の呼び方ですか!? えっと、ぬるちゃん?」

 恐る恐る夏川が呼んでいるニックネームを口にする冬梅の姿は新鮮だった。

「おぉ~、なっつーにはない破壊力があるわ! 単純に下の名前であいりって呼ぶのもいいけどせっかくならニックネームを付けて~……」

「は~い! 夏川ちゃんがひらめきましたぁ! りあちゃんって呼ぶ!」

「おいこらなっつー! せっかくあーしも考えたとこだったけど、りあちゃん頂き!」

「なんか、こーいう時の連携ってすごいのな、女子は」

「んで? 桐内が今朝、言ってた私とりあちゃんへのニュースも教えなさい!」

「そうだったぁ! ついに夏川さんも入部希望者になったんだよ!」

 そういえば、すっかり流れに乗せられて話題に出しにくかったが、釣り部が始動できる準備が整ったことの報告を逃す所だった。

「ようやく、釣り部とやらが本格的に始められる訳ね」

「だね、放課後に皆で木下先生を驚かせてあげようか」

「あ~、顧問は木下せんせーなんだ!」

「そそ、ついに五人揃ったし文句はないだろうさ!」

「楽しみですね、部活動」


 木下先生が期限を設けた一ヶ月で部員五名を集める条件は無事に達成した。

 

 色々あったが、こうしてようやく釣り部が動き始める。

 そんな会話を最後に昼休みは終わりを告げる。



~こうして釣り部は動き出す END To be continued~

過去にもですね、釣りを題材にしたお話を短編で書いたことがありまして……。

ジャンルも同じくラブコメでして~、思えば賞に出したのもそれが初の作品でした。で、ですね? そこで評価を頂けたのですが、ズバリ! 読者は釣りを知りたいんじゃない、バッサリ切られました。

つまり、暴走し過ぎた私は読者の目線を完っ全に無視した訳ですね。そんな過去を反省し、新たに釣りを交えた要素で挑んでおります。そこに関しましてもしっかりと考えながら、楽しんで頂ける作品を今後もご提供できるように精進致します!

良ければ、ブックマークや感想&評価も宜しくお願い致します!(エナジードリンク下さい実物は要らないです)いや、このネタすごい前にやったな……。


では、次回の投稿もお楽しみに!

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