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第6話 楽観主義者は問題を抱えている

鍵っ子です。


最近は突然気温が下がりましたね。夏が一番苦手なので、個人的は嬉しいです。


皆さんはどの四季が一番、嫌いなんだろう。

 件の謝罪作戦から数週間が経過し、とある日の昼休み。

 気が付けば季節の流れは早い物で、梅雨入りを果たす。

 春山さんの紹介もあり、新たな部員候補は見つかっているのだが……。

 どうやら、僕自身の軽率な行動が祟り大きな勘違いをした一人のクラスメイトによって、僕に対する風当たりが悪くなっている。


 それはズバリ、根暗を決め込んでいた大山虚秋おおやまうろあきはクラスの女子を弄んでいる説が流行してしまった。


「それで~! そんでさぁ、やまっちはーどっちが本命なわけぇ?」

「だーかーらー! なっつーは話を盛り込みすぎよ! 本人も違うって再三いってんでしょーが!」

 コツン! と、友人の鼻先にデコピンをして訂正を何度も宣言する春山さんでさえも、現在進行形で部員候補者でありながらも、走り出すと止まることを知らない恋愛脳暴走特急マシーンと化した彼女を前にして非常に参ったご様子。

「よっ、元気かい? って、見れば分かる今日も今日とて巻き込まれんてねぇー」

「相変わらずのエンジン全開っぷりで、夏川さんは止まらない」

「ねぇねぇ! どぉーしてうっちーまでもがだんまりなのさぁ!」

 そもそも、夏川さんがこうなってしまったのも一見すれば僕が二人を誘い出す為の露払いとしてジュースを買いに行かせてしまった。と、言う春山さんの選択が大きなミスを呼んだ。


 順序を追えば、ざっくりとこんな感じだ。


 夏川さんがジュースを買いに行く→僕が二人を誘い出す話をする→今にして思えば恥ずかしいことをまたしても言っていた僕→グワングワン僕を揺さぶる春山さんをちょうど教室に戻ってきた夏川さんが目撃→教室の異様な盛り上がり具合→僕との間に春山さんと冬梅さんの二人の名前が浮上→恋愛脳暴走特急(夏川爆誕!)マシーン


「いやぁ~、それはね? ほら、色々とかくかくしかじかでしてぇ~」

 ですよねぇ~! 流石にさぁ~、わざわざ海岸に二人を誘導して男二人が土下座してましたぁ! なんて、言えるわけもない! 第一そんなことを話してみろ、第二第三と問題が募るだけだ!

「とーにぃかぁーく! なっつーはしつこい、ちょっとは周りの迷惑も考えなさい!」

「なぁ~んだよぉ~! ケチィ」


 普段から明るく、活発な女子で非常に明るい性格、明るめの茶髪にショートヘア。

 また、本人がちょこまかと動き回る為、彼女にはぴったりな髪型だと言える。

 そして右手首にはミサンガを付けているが、当然僕は夏川さんの願いとか知らない。

 でも、ミサンガってそう言うやつでしょ?


「ぬるちゃんが隠し事するならぁ! もう一人の当事者にアターーック!」

 ムギュっと、小さな体を包み込む様にして夏川さんが冬梅さんに抱きつく。

「ひゃぁあ!?」

「ほうほーう! これはこれは~、冬梅ちゃんもなかなかによい胸をもってるではないかぁ~」

 ガッデムガール!(なにやってんのこの人) ただでさえ引っ込み事案印の冬梅さんに! 何たるお触りをやっているんだぁあ!

「な、夏川さん! や、やめぇ! ……っ!」

「おばかー! 男子の前でなんてことをしてんのよぉ! おたんこなつかわ―!」

「ほうほう……」

「あー……」

「あっ! そだ!」

 何か閃いた表情で夏川さんが、フニャフニャになってしまった冬梅さんを解放する。

「じゃさ! やまっちのが本当の本当に女子を弄んでないか、私自身が実験体になっていい?」

「えーっと、それはつまり?」

「あんたはー! 余計な問題を増やすなぁー!」

「えー、春山さん? ここは大山君の内なる部分に大きく触れられる盤面でもあるし、任せてもいいんじゃない? 面白そうだし!」

「まぁまぁ、諸君! 聞き給えよ、体験と言っても私自身がちょーっと困ってることがあるっていうかぁ~、そうでもないっていうかぁ~……」

 非常に歯切れの悪い感触、困っていると言っている半面で実は困ってもいない? そんな半端な状況があると言うことだろう。

「わかった、とりあえず。話だけは聞かせて欲しいけど……」

 ちょうど、タイミングよく昼休みが終了を告げるチャイムが鳴り響く。

「じゃ、続きは放課後ね!」

 そう言って、夏川さんは自分の人差し指を唇に当てた。










 そして、放課後になった瞬間に夏川さんがウキウキしながら僕の机の前に現れる。

「はーい! じゃあ、ここからはあたしとやまっちの領域なので~部外者の皆さんは先にこの場からはなれてくださ~い!」

 開口一番がコレ、なんなんだ本当にこの人は……。

「あ~! もう分かったわよ! 今日はなっつー抜きで帰るからねぇ、ばいばいー」

 そう言って、案外素直に春山さんが退場。

「んじゃあ! 俺もさき帰るわ、大山君! 何かあれば相談するんだよ~」

 ニマニマしながら、桐内君が退場。

 残るお一人様は……って、既にいねぇ! 冬梅さんは既に退場。

「えっへへ~、ごめんね? 迷惑じゃない?」

「いえ、別にお話を聞くと言ったのは自分ですし早速、本題をお願い致します」

「じ、実はね~特に迷惑って言うか? 困ってる……とかでもないんだけど」

「あー、めんどくさ」

「ひどっ! わかったよ~、話すね。あたしね、電車通学なんだけどさ帰る時にこの学校の先輩にさ、目を付けられちゃったみたいで? さ……」

「目を付けられた?」

「そう、たまたまボックス席に座った時に声を掛けられちゃってそれからさ、大体時間が被っちゃってるだけなんだと思うんだけどね。ここ、一週間くらいは一緒にボックス席に座って帰ってる」

「なに、嫌味ですか。自慢ですか」

「違うの」

 違う? 学校の先輩に目を付けられ、ここ一週間は時間帯が被ることが多くてボックス席に座っている。そして、嫌味でもなく自慢でもない。

「ちょっとね? へんかなって思うことがあってね。あたしってね、特に決まった時間に帰るとかはしないんだよね。でも、その先輩ね――」

 この言葉の後に続く物は酷く嫌な予感がしていた。

「絶対にいるんだ。駅のホームに」

 一週間連続で、百発百中の被り。そして、一方はランダムに動いているにも関わらず一方は必ず時間を被せてきている。

「なにそれ」

「まぁまぁ、大したことじゃないよね!」

「それは、本気で言っているのか」

「え?」

「そいつに好意があるならば話は別だけど、話すってことは違うんだろ」

「好きでもないし、嫌いでもないかな」

「なぜ、ここまで放置した。春山さんには相談したのか」

 無言で首を横にブルブルと振る夏川さん。

「無理無理! ぬるちゃんに言ったらそれこそ大問題に発展しちゃう!」

「確かに、自分の正しさを持っている春山さんに言えばどんな厄介ごとになるか……ふむ、理解した」


 しかし、一週間という時間経過は非常に大きな問題となる。二、三日程度でことが済んでいればマシだったがそれを一週間も放置した罪は重い。


「それでさ、どうしようかなって思ってて。別にこのままでも問題は起きてないし、それでもいいじゃん! て、考えてるのもあるし良くないのかなぁ~? う~ん、ともなってる」


 どっちつかずな心理、純粋な相談として捉えるとしても大きな障害となるのは彼女自身がもとめている答え……いや、答えと言うよりも対応と言うべきか。


 相談をされた場合に受けた側で良くやりがちなのは、アドバイスなどをして問題をすぐに解決しようとする先走りの思考。

 そもそも、考え方の違う女の人から異性に相談を投げかける場合、解決に導こうとする男の思考が間違っている可能性がある。

「先に言っておくと、僕は夏川さんの考え方も悪くないと思うよ。何もなければ何も問題はない、これも一つの正解だ」

「だよね、だよね!」

「ただ、今の状況を考えるといつだって何かが起こる状況と隣り合わせと言う考えもあるんだ」

「……」


 そう、何もなければ何も問題はない。しかし、既に一週間もの時間を何もないで過ごしている証明があると同時に、同じ空間をその分だけ共有している時間ということにもつながる。

 ましてやボックス席ともなれば、お互いのパーソナルスペースを犯されており、それだけでも無意識の内にストレスを抱える原因ともなりうる。


「もし、その先輩のカバンや足、手なんかを不可抗力だとして触れた場合や触れられた場合に夏川さんはどうなるかな」

「……わい」

「ん、なんだろう」

「こわい!」

 これが、夏川さんの中に眠っていた核となる心、嫌だと思うのでなく嫌悪感よりも恐怖が勝った証拠。しかし、ここで問題なのは怖い=僕に解決して欲しい! と、言うことではない可能性があることにも注意だ。

「教えてくれて、ありがとう」

「ううん、やまっちが言ってた可能性は十分にあると思っているんだ」

「例え、同じ学校の先輩だとしても所詮は他人、素性を知らないんだから夏川さんみたいに色々と思い悩んじゃうことはたくさんあるよ」

「すごっ! 根暗だな~って思ってたのに、やまっち頼りになるね!」


 い、言えない! 過去の僕が色々と感情やらなんだかんだと知るために心理についてもかじって勉強じみたことをしていたとは、言えない!


「なんか、やまっちだって他人なのに! 安心しちゃうじゃんか!」

「あ、あぁ~それはまぁ、同じクラスだしちょっとは情報が入ってきてたって言うのもあるんじゃないかな」

 ニッコリと、笑う夏川さんはこの問題にどんな答えを出すのだろうか。

「決めた! あの先輩とは距離を置きたいと思います!」

「そっか、僕は素敵だと思うよ」


 これにて、彼女自身で思考しだどりついたもう一つの終着点。我ながら寄り添い考えるというのは一筋縄ではいかないと、改めて感じさせられた。


「じゃあ、その後は部員にもなってくれると、助かるよ」

「なら、付き合って欲しいんだけど……」


 ん!? 何々、ドユコトですか? 付き合う、それはつまり先輩を寄せ付けない為の疑似恋愛的な奴でカクカクシカジカ……。

 ダメだ、整理が追っつかない。

「ねぇ? ダメ?」

「あ、えとーその~。僕はそのほんと大したことも経験してないし」

「えー! 相談に乗ってくれたのに協力はしてくれないのぉ~!」

「そっちかい」

 あー! すごい、すごい! ナチュラルにツッコミが出た、うれしい―けど紛らわしい!

「むふーっ! もしかしてぇ~」


『かんちがいした?』


 と、彼女は僕の耳元で吐息混じりに質問を投げかけた。


「あー、めんどくさ」

「怒んないでよ~!」

「怒ってないし、協力する」

「ほぇ? そ、それは素直にありがとっ」


 ともあれ、少しばかり夏川さん自身に頑張って貰う必要がある。協力をすると言った手前、情報がなければ何も始まらないのだから今日一日だけは頑張って下さい。そう、心の中で訴えた。


「じゃあ、僕は情報を映像と音声としても欲しいので、今日は電車に乗る時にこれだけはしてくださいね。まずは必ず――」

 今日の任務を夏川さんに告げて、そそくさと荷物をまとめて帰宅準備を行い、数歩進んだ先で――。

「とりあえずやるけど、その前に!」

 柔らかな手が、僕の手首をカッチリと掴んで静止させる。

「やまっち! サインの交換っこしよっ!」

 そう言った彼女の表情は雨が降りしきる外とは裏腹に、とても煌めいていた。


「お、おん」

「なに、その返事! ウケる」


 その後、すぐに夏川さんとは解散し同じ電車通学の自分は離れた位置から夏川さんと先輩の監視をする運びとなった。


 

 降りしきる雨音が傘を揺らす。いつも何も考えずに向かっていたはずの駅は雨のせいか、どこか重苦しい雰囲気に感じてしまった。


~楽観主義者は問題を抱えている END To be continued~

いよいよ、本格的に釣り部を始動させる為のラストピースの人物が登場しました。

これから先の内容もしっかりと計画しながら、少しでも多くの方に「面白い」「続きを読みたい」と、思えるような作品にしていまいります!

良ければ、ブックマーク、評価&感想を頂けるとさらなる励みになります!


では、次の更新もお楽しみに!

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