第44話 いざ、病院へ 【Ep.春山怒留湯編】
病院での一件からその後、僕と春山は特にそれ以降は内情に関して干渉することはなくなった。
明確な変化と言えば、春山は部活に参加せずお姉さんのお見舞いに欠かさず通っている。
それくらいの変化があるだけでその他は特にメンバー自体も心配はしつつもいつも通りの春山を見ては何気ない会話をしている日々が経過していた。
「なぁ、おーやま? この後、部活はいくのか~?」
「あ、うん。そうだね、金曜日だし釣りにでも行こうか」
「うっし! そうと決まれば……っと、春山も久々にどーよ?」
「あーしも!? あー……その、お誘いはありがたいんだけどぉー」
「むむむ~! 最近ぬるちゃん付き合いがわるいんじゃあああ! うがぁ~!」
「コラコラ、なっつー? ワガママ言っちゃダメだよ」
「あはは! すっかり、りあちゃんにあやされてやんの~」
「なにお~! むぐぐ!」
こうやって見れば、いつも通りの日常なのだが全然違う。
そりゃあもう、天と地ほどの差があるくらいには一目瞭然で、でもそれを決して誰も口にはしない。
春山は週初めの一件から、もっと言えば僕との病院での会話から五日間連続で部活には参加しておらず欠かさずにお見舞いに向かっている。
そして、お姉さんが倒れてから一週間が過ぎ去ろうとしている。
この間、一度も目を覚ましていないと言う。原因としては熱を出してしまったことが尾を引いているらしく、状況はなんとも言えない。
「今日もお見舞いですかな? 春山よ」
「えぇ、その通りよ。一々なんか、言い方に含みがあんのやめなさいよ」
なんて、会話をしている最中で春山がふと……。
自分のスマホに目を向けるのが感じ取れた。
「ん? どったのさ、ぬるちゃん?」
「あ、え? うそ……」
「な、なにが起きたんだ! 春山!?」
「ぬるちゃん? 大丈夫?」
心配する仲間を他所に春山は、安心した様な表情を浮かべる。
この感じ、ようやくか?
「お母さんからメッセージが来て、お姉ちゃんが! 目を覚ましたって!」
「うおおおおおおおお! まじかよおお!」
「やった! やったねーん! ぬるちゃんの健気さが身を結んだんだね! ヨヨヨ~」
「よかった、本当に良かった」
「ぬるちゃん、本当に良かった。安心した」
長かった、本当に長くて厳しい7日間にようやく光が差し込んだ。これで、安心だ。
「でね、お母さんが部活の子達も良ければ連れて来れる? って、言ってるんだけど……」
「あったりまえだ! 一度、釣りをした仲ならば問答無用で部員同然だ! 行こうぜ! みんなで」
桐内の一声で、全員が首を縦に振る。
「ありがとう! みんな! 後、なんか知らないけど皆が来てくれた方がすっごく刺激になる! って、お母さんが言ってる」
ん? 刺激になる? それは、一体どう言うことだろうか?
「ほらぁ! そうと決まれば準備してさっさといっくぞぉ~い! とと……その前にあたしお花摘んでくる~! 五分後に正門でしくヨロ~!」
「おっけ! んじゃあ、俺はつぶあんに挨拶してから行くわ!」
となれば、三人が取り残される訳だが……。
「そんなに、待ち時間もないし。先に行っちゃう?」
「そうしようか」
「え、えぇ! 行きましょ」
き……気まずいな、流石の僕でも理解できるくらいには気まずい。
にしても、刺激になるって言うのは何だろうか?
確かに病院では、楽しいことは少ないと言えば少ない……っ!
ゴンッ! と、脇腹辺りに衝撃が走る。
「おっ」
見れば、冬梅がものすっごいジト目で僕をみてる。え、なにこわい!
「そーいやさ! 部活はどんな感じ?」
「部活かい? そりゃあまぁ……べつ……」
「ふんっ!」
再度、脇腹に今回は悶えるクラスの衝撃が走る。
「ガッハッ! ウグォ……」
「へ? 何々!?」
「あー……どうやらコレは相当へこんでるみたい」
「うそぉ!? そんなに!?」
あぁ、確かに凹みそうな程の威力だったよ! んで、ちげぇよ! 悶えただけなんだか!?
冬梅さん? まぁ、でもいっか。
「ここが、お姉さんが匿われてると噂の病院だね?」
「ハナシによれば、そう簡単にはたどり着けないって噂でさぁ! そりゃあもう、ヤバイのなんのって……」
「はい、ほらそこー? バカ女とアホ男二人組、前のエスカレーター乗ればすぐだからね〜」
「なっ! バカ女ですって!?」
「なぬっ! アホ男だって!?」
「ふ、二人とも? ここは病院、ね? 分かるでしょ?」
「おっ、こわ」
目的地である四階に到着し、個室部屋番号02と書かれた番号のドアへと意気揚々と立ち止まる。
僕と桐内は遅れて後を追う。
「いやあじゃああああああああ! 死ぬんじゃああああああ!」
「おわっ!? なにごとだ!?」
「おばあちゃんが叫んでるね」
まぁ、稀にあるヤツと言えば良いのだろうか。病院も中々に大変……。
なんてことを思っていた思考が全て、桐内が肩掛けしていたエナメルバッグから顔を覗かせる住人によって吹き飛ぶ。
「キュー!」
「ん? なんだ……っ! はひぃ!? ちょ、おまっ!」
「つぶあん、連れてきたのまじ?」
「いや、コレはいつの間にか入ってやがったみたいだ。あはは……」
いや、まず! その自己主張の塊であるモフモフをおばあちゃんから隠せ!
なんて思考を巡らせていると、おばあちゃんがコチラを指さす。いや、正確にはエナメルバッグに向けて指をさしている。
「あんだい! アンタ、そのモフモフは!」
ヤバイ、ヤバすぎる……。
〜いざ、病院へ【Ep.春山怒留湯編】 END To be continued~




