第40話 第三者からできること【Ep.春山怒留湯編】
昼休みも終了し、誰もが解放感に心を躍らせるであろう放課後が訪れた。
「っしゃあああ! おわりだぁああ! かえろーぜ、いつメン達よ!」
「ほいほーい! んじゃね、ぬるちゃん~」
「はいは……ご、ごめん! もう行くね!」
一幕、ほんの少しだけ見せた陰りを僕は見逃さなかった。けど、それ以上は何も考えない様にした。
「ん? なんだろ? ま、いっか! んでね~忘れるとこだった! あたしも今回は寄るとこあるからパスね!」
「おやま! めずらしっ! けど、りょうかーい! またな!」
「また明日、なっつー」
「またね」
そう言って、もう一人も脱落した。
「珍しく三人かぁ、うっし! いこうぜ!」
特にこれと言って賑わう会話もろくにせず、自然とボックス席に吸い込まれる。
「ふぅ~! 今日はなんつうか、めちゃめちゃつっかれたな~」
「ほう、それはよかった」
「桐内でも疲れるんだね」
「ちょいちょい! 失礼過ぎんかい⁉ お二人さん!」
シーン……。なるほど、これが夏川のいない時に起きる気まずい空間か? 流石に昼休みの件が尾を引いている。
桐内一人では対応不可か。
「で、さ? 実際問題ぬるちゃんのことはどうして行くの? みんな、ノータッチって選択もあるけど」
「確かになぁ~、その話題……しない訳にはいかんよなぁ」
「ふーむ……」
僕が僕自身が半端な気持ちでこの件に首を突っ込まないことを前提にして物事を判断するとしよう。
なら、間違いなく問題解決に向けて行動を起こす。
「半端な気持ちじゃなく挑むって言う前提なら、僕の答えは決まっている」
「お? それってつまり好意があるってことか!?」
ほらみろ、期待通りの食いつきだ。
「まって、桐内も大山の現状を理解してるでしょ? この人が持つお節介ってそこら辺の人が抱くモノとは異質なんだよ」
「あ~? そうか、そうだったな。感情を取り戻す的な意味合いも兼ねてるのか」
「客観的な見方をするならこういった感情のぶつかりを感じることはすごく良い刺激だよ?」
「知ってる、その通りだ。しかし、これを主観的にすれば他人の家庭問題にどこの馬の骨とも分からん奴が乗り込んでくることになる」
「普通に考えて最低なお節介」
「あぁ~……そうだよなぁ。別に恋人でもないし」
「いやいや、恋人でも普通は乗り込んでいかない領域だよ。私ならまず、踏み入らない」
「あ~……」
当たり前だ、それぞれの家庭によって教育方針がそもそも違うのだ。そんな個々のグループで形成されているルールを一個人の勝手な考え方を説いた所で反感を喰らう。
「だから、僕はその領域には踏み込めないし踏み込もうとは思わない」
「なら、何をしでかすつもり?」
一際、鋭い視線が容赦なく僕を貫く。
「こ、こぇえ~……」
「要は春山怒留湯自身に自分の意見を知ってもらう術を身に着けて貰う」
「そんなの、一日や二日では会得できない。 とてもじゃないけど、アナタには荷が重すぎるよ」
「そんなことは分かっている。だからこそ時間をかけて……」
「そんなの押し付け! 大人たちがやってるやり方と一緒じゃん!」
「うっ……」
「あーーーもう! ほら、喧嘩しない喧嘩しない! 落ち着けって二人ともさ」
クソっ! この考え方も良くないのか……確かにこのやり方はそうすれば良い! と、言う押し付けなのか。
「もっと言えば、アナタの意見なんてぬるちゃんは求めてるの? なんで、すぐにアドバイスみたいな僕はこんなこと知ってんだぜ! みたいな披露をされないといけないの!? そんなの、望んでないよ!」
「えっと……? いや、え~? そ、そういうもんなのか? 女子って」
「それも嫌い! 勝手に決めつけないで、男だから女だからとかの話なんてしてない」
「はぃ……」
「なら、僕には問題解決をしなくていい。と、言う訳だね」
「そうだよ。確かに大山は言葉とか知識は沢山あるし、すごいけどそれに見合う行動と感情が一致してない、だからちぐはぐ」
「そういえば、別に春山は解決方法を教えて欲しいなんて一言も言ってなかったよな」
「あ……」
ようやくだ、ここにきて理解する。
この問題、誰が間違っていてこの人は正解を言っているとかないのだ。
あるのは考え方が違うという、事実だけ。
「もんだい……いや、これに関しては問題ではあるけどそうじゃないって言うべきか……なんと言うか」
「すごく難しいって言うか、ね? これを問題として回答するなら一番の正解? みたいなのが実はあるんだよ?」
「まじぃ!? なんそれ、すごっ!」
~第三者からできること【Ep.春山怒留湯編】 END To be continued~




