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第36話 新鮮なやり取り【Ep.春山怒留湯編】

 ふと、目覚ましよりも早くに自然と目が覚めた。

 そんな週末の午前八時三十四分頃――。


「ふあぁぁ〜、何とも中途半端な時間に起きたな」


 まだ半開きみたいな瞼でモゾモゾと布団から手を脱出させ、枕の横近くに鎮座しているであろうスマホを手探りで掴む。


「おぉ、あったあったぁ……」


 見ればサインの通知がきている。すかさず、パスコードをサクサクッと入力してホーム画面に移行し、サインアプリを起動する。


「ん? なんだろ」


 瞼を数回パチクリさせながら、それでもすんなり開ききらない瞼を上げながらメッセージを確認する。


 【お姉ちゃんがお風呂場で倒れちゃった。一日経過したけどまだ、意識が戻らない】


「ん? ん? はっ……はひぃ!?」


 ま、まてまてまて! 落ち着け……。とんでもないメッセージが春山から来ている。

 一日が経過と、言うことは土曜日には既に意識がない状態であったとするならば……。


「間違いない。金曜日だ」


 送信された時間は朝の六時二分と、言うことはまず金曜日に何かがあったのは間違いないだろう。

 状況は不明たが、おそらく“春山自身”が何かしらの問題を引き起こし、姉が意識不明になったとも考えられる。


 いや、そこまでは考え過ぎだろうか? 


 しかし、このメッセージに対して僕はなんと返事するべきなんだろうか?


 そもそも、返事が必要なのか? いっそ知恵袋で聞くか? いや、そんなことを質問されても第三者からすれば『知らんがな』状態だろうし、迷惑過ぎる! 


「いや、かと言って僕が根掘り葉掘り理由を聞くのもおかしな話だし……」


 かと言って、無視はできないし。誰か部活メンバーに相談する? いやいや、それこそ僕に向けて個人宛にメッセージを送っているんだ。

 迂闊にこの内容を広めれば、鳴瀬川にも及ぶ筈だし……いずれ話が行くにしても早く広める種にはなりたくない。


 ならば、ここでの最善択はなんだ? ギャルゲ的な思考を用いるなら……選択肢次第ではBADエンドもあり得る奴だ。


「ここは慎重にかつ、踏み込み過ぎない様な返しで〜……」


 くそう! 決められた選択がない分、現実(リアル)は本当に難易度が高すぎる!


「ならば、こうしてみるか」


 なんだかんだと思考した結果、多少の緊張を含みながらも、僕は送られてきたサインへの返信を行う。


【きっと休んでいるだけじゃないかな? もし、何か僕にできることがあったら教えてね】


 こ、これくらいならば問題のない範囲であろう返しをする。

 後は本人の返答次第だ。


 いつ、どのタイミングで来るかも分からない……。

 いつまで経っても来ないかもしれない相手からの反応に少々翻弄されながらもさも、自分は冷静であるかのように振る舞う。


 いや、実際には誰に言い訳するでもなくただ一人寂しく我が家にいるだけなので、他に見られている。なんてこともない訳だが……。


「いや、僕よ冷静になれ! 特になんてことないだろう」

 そんな、バカみたいな独り言を披露したり考え込んではや、数分……。


 掛け布団を被りながら、もうひと眠りするか起きるか? そんなことを考え込み無理やり意識を別の方向へ矢印を向けさせようとした矢先でスマホが二回程振動する。


「ヒッ!」


 めちゃくちゃ、情けない声を出してしまった。

 恐る恐る、スマホの画面を確認するとそこには……

【わかった】

 

 ただただ短く――。


【明日、はなし聞いてくれる?】


 だけではなかった。追いメッセージが間髪入れずに届けられる。

「お、おぉう……」


 さぁ、この質問……単純に捉えれば男子高校生にとって願ってもない超絶大フラグ&イベントであるのは間違いない! ないのだが~なんと言えば良いのだろうか。

 前提としてかなり重めの内容となりうるであろうことは明白で、そこで問題となるのは踏み込むべきか否かの部分になる。

 

「簡単に請け負っていいものか……」


 そう、今まではあまり何も考えず首を突っ込んでいた。しかし、冬梅から唐突に突き付けられた僕の弱さと矛盾を再認識しそれを知った上で僕はどのように行動すべきなのだろうか?


 改めて自分は何処までのことをすべきか? あるいはこれ以上の干渉は避けるべきか?


 まてまて、何も現段階では話を聞くだけに過ぎないのだからそこまで深く思考する必要はないのでは?


 しかし、春山の気持ちを知った上で中途半端な対応もそれはそれで自分の春山に対する気持ちを知る為にもちゃんと向き合って行くことも重要ではある……。


「なら、ここは踏み込む……べきだ」


 そう決意を固め、再びサインの画面と向き合い。

 一呼吸を入れ、一文字一文字を連ねていく。


【わかった】


 それは、先ほど僕が見ていた文字と同じ文言で返事する。

 

【ありがとう。それじゃ、また明日ね】

 今度はあまり、時間を置かずに返事がやってきた。


 なんと言い表すべきだろうか。こう言うやり取りも含めて、何もかもが新鮮だ。

 悪い気はしない、しないのだが……。

 どうやら人間関係と言う奴は、自分が想像するよりも遥か彼方のレベルで……。


 複雑だし、面倒くさいし、難解だ。それこそ答えなんてもんがないんだから更に厄介なもんだ。



~新鮮なやり取り【Ep.春山怒留湯編】 END To be continued~ 

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