第3話 価値観の違い
鍵っ子です。
お話を書く度に、思うのですが……。どこで頭を抱える日々がくるのだろうと、震えています。
その後、空き教室を後にした僕らは状況を整理する為に歩きながら、桐内君が居なかった空白の放課後について詳細を伝えていくことにした。
「桐内君は脱兎の如く教室からいなくなってしまったから知りえない空白部分になるんだけど、放課後に少しだけ春山さんからお告げがあったんだ」
「なるほどね、つまりはそれが重要な内容ってことだね」
「春山さん曰く」
『明日中には、絶対に謝ること! じゃなかったら! あーし、許さないから』
「とのことで、桐内君はさほど気にしていない問題だったけど、春山さん自身の受け止め方は非常に重い」
「そこで食い違いが生まれた訳だね」
よし、ここまでは桐内君も想定している通りに事態を捉えることができている。
流石は柔軟な人だ。ある程度の取り扱いには心得があるみたいだ。
「これはね、例え話なんだけどさ男は火星で女は金星ってのがあるんだよね」
「ゑ!? 急にどうしたの?」
「いや、火星人と金星人がいたとしてだよ。その種族は同じ種族だと思う? って、はなし」
「いやいや、流石に火星と金星は住む星すら違うんだから、異なる種族でしょ」
そう、その通り。遠い星に存在している以上、環境も違えば何もかもが異なる。
「だよね、誰もが大体はそう答える。じゃあ、男女についてはどう考えている?」
「ん~~? 環境も性別も違うし、その観点から思考するなら異なる種族に近しい、かな」
流石にそういった視点で物事を瞬時にみることができる辺り、彼自身の地頭の良さが感じ取れる。柔軟な思考力と適応能力が他とは比べて高い水準にある。
「昔読んだ本にね男は自立と成果、女は分かち合いと配慮の異なる価値観を持つって言うのがあったんだ」
「た、確かにそれだと男女には異なる部分が多いって印象になるかな」
そうだろう、そうだろう……。
分かるとも! 高校生になりたての人間がなんて本を読んでいるんだ! と、なるであろう。痛いほどに理解る。
「それと同じ様に、今回の春山さんとの件でも似たような違いが生まれている。価値観も含めて、認識の仕方にも差ができていた」
「ふむ、春山さんの発言から察するにコトをしでかした人物も誤った認識をさせているかもね〜」
「え? なんでさ? 明らかに桐内君だけが悪いでしょ、僕は関係ないよ」
「あはは〜、面白いことを言うね! 大山君、そもそも君自身もさ前提を振り返るべきだよ?」
まさか!? どうして自分まで巻き込まれなければならないんだ! 元を正せば……元を……。
あれ? そう言えば、春山さんって桐内君が僕の机を移動している姿って、見ていたっけ?
「そう言えば、春山さんは桐内君が僕の机を移動してる姿は見ていたのかな?」
「アハッ☆ 見てないでしょうね! だって、ハリセンでシバかれた頃には大山君の机を先に冬梅さんへ向けていた状態だったし〜」
「おのれ策士め、謀ったな」
「春山さん目線だと、君が一方的に席をくっつけた図が完成する訳だね! 俺だけハメようなんて、そうはさせないよ! 旅は道連れ世は情けってね!」
「あーあ……。大変だ、こりゃ」
つまり、あれだ。春山さんの視点を修正しない限り、僕も強引に席をくっつけた奴になる→現状は同類(桐内君もセット)としての大山も、もれなく爆誕する訳だ。
「不覚、こんな所に罠があるなんて。とにかく明日はしっかりと二人に謝罪をすることで問題解決になるかな」
「チッチッ、甘い! 甘いよ大山君!」
そう言うと、桐内君はスカした顔して指をふる。
「え? なにかまだ、問題がある?」
「あの手の真面目さを持っているならば、それなりに何が、どうして駄目だと気づいたのかを掘り下げてくるよ」
ストン! と、腑に落ちる回答。
それもそのはず、彼女は間違いなく、悔い改める箇所を提示する。それに答えることができなかった日には……。
殴られてもおかしくない!
「俺は自身の行動が多少なりとも強引にやりすぎていた。と、言うことを認識できたからね! それが大元の理由にもなる」
「ぼ、僕は……」
待ってくれ! この状況はもしかしなくても、自分が一番大変なポジションになっていないか!? いや、間違いなくなってる! 仮に真実を語るとしてもどうだ?
固定概念から外れていないままの春山さんからすれば、どう対処しても言い訳として伝わる!
「おい、桐内君……君って人は、とんでもない濡れ衣を僕に装備させてるんじゃない?」
「いや、でもさ! 凄く反省した様に、心底申し訳ないって表情をすればイケるよ」
「……」
「あれ、きいてるー? もしもーし」
桐内君が言っていることは、普通のことだ。
ごくありふれた謝り方の正攻法、心を込めて謝罪をする。効果的な要素、だけど自分は心を込めて謝罪することができない状態にある。
感情の起伏やそれに伴った表情の表現が……。
今の僕は失っているから、出せないのだ。
「今の僕では、どんなに言葉で謝っても春山さんには届かないんだ。訳アリでね、上手くリアクションができないんだよ」
「それって、どう言うこと?」
「ごめん、それは言いたくない」
淡白な返答で桐内君からの疑問を僕は斬り伏せた。たしかにこれまでのやり取りで少しは理解しているつもりだが、僕自身がこれ以上踏み込まれることをまだ、許さない。
一定の距離と線引きだ、これだけは譲れない。
「そっか、おけ! わかったよ」
「うん」
「いつか、その時が来たらさ! また、大山君から教えてよ!」
「そうだね、その時が来たら」
「でも、それが本当だとしたら大山君はどうするの?」
「それに関しては、たった今思いついたよ」
僕の場合は言葉や表現では一般のソレには遠く及ばない。ならば、他の方法で示すだけだ。
「それでさ、いきなりなんだけど木下先生に付き合って貰おうと思うんだよね」
「うわっ! なにそれ! めちゃめちゃ楽しそう!」
「それはどうも。と、言うことであのおサボり先生に明日の朝一で言伝をお願いするよ? 桐内君」
「おっけー! 任せてよ。なんて言えばいいんだい?」
「それは――」
あの時、木下先生が言っていた様に青臭さを早速見て貰おうと考えている。そうすれば、少なくとも本気度はちょっとだけ見せつけられるだろう。
「うんうん! いいじゃん! それ、いきなり仕掛けるって訳だね!」
「まぁ、そんなとこ」
「いいねぇ! 俄然楽しくなってきたよ!」
「先生を桐内君に任せる代わりに、僕は二人と話をしておくよ。後、一応だけど遊びじゃないからね」
「あははー! もちろん理解してるよ。けど、大丈夫かい?」
「まかせて」
何かを得るためには自分もそれなりのことを成し遂げなければ公平さに欠ける。それに、春山さんの話を聞いたのも自分自身だし、冬梅さんに関しても変なことを口走っている手前、それなりに責任がある。
「じゃあさ! これからは部員募集やら情報共有も即座にできた方がいいだろうからさ! サインの友達登録をしようよ! 仲良くなりました記念も込めて」
「あぁー、そういえばしていなかったね。いいよ、連絡手段は必要だし」
「ありがとう! これでもう一つ前進だな!」
一つ前進……。その言葉を胸に僕はサインで新しく追加された連絡先の表示に向かって返事をするかの様に、緊張気味になった指先を滑らせて静かに追加ボタンを押す。
「最初はねぇ~、この魚スタンプを送るよ!」
「ウケグチノホソミオナガノオキナハギ……誰が分かるの。コレ」
「……ブフッ! くっ! ガハハハハハ! 言いながら知ってるじゃん!」
「センスないから、送っちゃダメだよ。コレ」
「あ~! ひっでぇ~!」
受け口の細身尾長の翁ハギ……。いや、誰が知ってるのよコレ!? カワハギの仲間だけどもさ! そもそも日本にいないんですぅ~! いかん、これ以上は足を踏み入れるべきではない。
「じゃあ、予定通りに明日は先生に話をしておくよ。また明日ね! 大山君」
「わかった、こっちはこっちで二人に話を付けておく。また明日ね」
気が付けば校舎の出入り口まで到達していた。ちょうど話の区切りも良かった為、自然な流れで解散となる。桐内君は自転車置き場を目指し、僕は最寄りの駅を歩いて目指し、お互いの帰路に向けて動き出す。
~価値観の違い END To be continued~
いや~、今のところ! この作品って本当に恋愛なんてするんですかぁ~? そんな恐ろしい声が聞こえてきそうですが、私的には頑張ってその辺りの変化も描いていければな~と、作品の物語を常にビビりながら気を付けているつもりで臨んでおります。
後ですね! やはり、やはりですが! 評価やらブックマーク、作品の感想などなどは作者にとっては非常にありがたいエナジードリンクです! 素敵じゃないですか? 体を悪くしないエナジードリンクを皆さんは作者に与えることができる力があります。私も欲しいです! もうそりゃあ、めちゃめちゃ欲しいですけど、素直に皆さんから続きを読みたい! って、思っていただけるように一生懸命、考えます頑張ります! まぁ、当然ですね。
自分はプライドと言う物は気が付いた時にはどっかに落っことしたので言います! 皆さんのブックマークと評価、並びに感想をくださーい! エナジードリンクが欲しいです! ちなみにリアルのエナドリはほとんど飲まなくなりました。
では、次の更新も頑張ります!