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第26話 我儘と意見【Ep.春山怒留湯編】

鍵っ子です。


突然ですがタイトルに関しまして、誠に勝手ながら変更させて頂きます。

理由と致しましては、より明確に読者の方に分かりやすくしたいと、思いました!

旧題『痛みを知って……。』は変更され……


新タイトルは『どうやら僕は釣り部の仲間に恋をしてしまうみたいです。』


上記の新タイトルに変更致します! 今までお読み頂いた方に混乱を招かない様に旧題タイトルも載せて、しばらくは投稿致します!


何卒、よろしくお願い致します!

 冷静に思考しろ。


 僕の目的は色恋沙汰をするよりも先に成し遂げなければならない任務がある。

 それに、鳴瀬川の存在を無視なんてできない。


 恐らく、彼女が揺らぎと言っていたあの言葉は、僕に対するもの以外に鳴瀬川の存在も関与している筈だ。

 春山と仲直りをする寸前で鳴瀬川と言い合った、あのタイミングで、こう言っていたのを思い出す。


『う、うぅ……面と向かってそんなこと言われても〜! うぅ〜ん、あーしも初めてだらけで困るんだけど!』

『春山は、成瀬川と話すのは嫌なの?』

『理由知っちゃったら、やだなんて言えないじゃん!』


 鳴瀬川に対する春山の嫌悪感はこの日を境に、変化したと証明できる発言だ。


 この時点で、少なくとも春山自身の鳴瀬川パラメータに変動があったのは間違いない。


 なまじ鳴瀬川の恋敵みたいな存在になってしまった自分を悔いる。

 もっと、僕が『線引き』をしっかりしていれば、春山は遠からず鳴瀬川と難なく恋人関係になっていたのではないか?

 いやしかし、僕自身が鳴瀬川に嫌悪感を抱いていたが故に、春山を守ろうとした。


 守ろうとした……? 

 そう、その事実は変らない。


「ねぇ、大丈夫? あーしが変なことを言ったから気にしてる?」

「え? あぁ……いや、少し釣り方を考えてたんだよ」

「まじぃ? さっきの話を聞いてもノーダメってこと!?」


 いや、んなわけあるか!

 こちとらめちゃくちゃ思考してる。


 とにかく、春山が僕を気にしていることに関しては問題ではないと考えておく。

 だか、『気になる』次のステップに僕は居てはならないのだ。


「いや、ノーダメって言うか……あんなことを言われた時の対応を僕は知らないんだよ」

「ばっ! だ〜か〜ら〜! そこまで考える程のあれじゃないじゃん!」

「いや、初めて言われたし……そもそも異性とのエピソードで良い思い出がなかったし」

「呆れた……碌なめにあってないってのは、なんとなくオーラで察するわ」

「だから、そう言った意味では凄く嬉しいことだとは思う」

「別に! 普通に思ったことを言っただけよ」

「なるほど」

 彼女の真意は不明だが、僕には恋愛などと言う代物は扱い切れない。

 ただでさえ、自分のことすらまともに面倒見れない様な奴が、誰かを好きになるなんて想像できない。

「そもそもアンタ、恋愛できるの?」

「ははっ、仰るとおりです」

「でしょうね!」


 つまり春山はそれを理解した上での発言、つまるところ……


「もしかして、僕の感情を揺さぶる為にワザと……狙ってやったな?」

「と、当然でしょ!」

 腕組みしながら、ドヤ顔をする春山……。

 ならば、そこまでじっくり難しく考える必要もないだろうと、言う答えに辿り着く。


「おっ、ヒット」

「やるじゃん! 大山」


 その場に体育座りをして、春山はボーッと海を眺めている。

 その様子を気にも止めずに僕はひたすらにリールのハンドルをクルクル回してキスを釣り上げる。


「実際、さ? 感情を上手く出せる様になったら、大山はどうするの?」

「どうする……かー」

 その先の未来、僕の求める次のステップは何なのか、自分自身でも分からない。

 取り戻すことに明確な理由を持ち合わせていない? 仲間に協力まで促しておきながら、そんな無責任なことがあるか?


 いや、違う――。

 もう、自分でも理解(わか)っている。


「おーけー、質問を変えるわ。どうして、感情を取り戻すの?」

「それは、所謂……羨望の眼差しってやつだよ」

「つまり、羨ましい的な?」

「羨ましくなった。僕も自分の感情や表情で色んなことをもう一度、取り戻したくなった」

「それってさ、紛れもなく……自分の本当の意志でそう、思えてる?」

 突き刺さる様な言葉は波音に掻き消されることなく、しっかりと僕に食い込む。

 『それは、自分の意志で決めたことか?』

 『周りに流されて適当に決めたんじゃないか?』


 手離した物を再び手繰り寄せる。


 僕の場合はそうやって、自分と言う存在を保護する為に敢えて自ら自由にさせた。

 その癖、今度は『羨ましい』なんて言うちっぽけな理由で手離した物を元に戻そうとしている。

 その癖、元々は嫌な過去から……トラウマから逃げる為にお世辞にも奇麗な手段とは言えない方法で自分さえも騙してきたのだ。

 感情や表情を贄として、深い悲しみに飲み込まれ続けた日々から逃げて……。

 両親が離婚した影響で、家族から逃げて……。

 人と接すれば、別れがきた時に辛い想いをするからと、言う理由で人間関係から逃げて……。


 失感情症になり、今まで色んなことから逃げて、逃げて……逃げ続けた。


 そして、いよいよそれなりに未熟だった図体だけはすくすく育ったくせに、逃げ癖のついた醜い自分は、中身だけは何も成長しない……。


 いつしかそんな現実だけが僕に突きつけられている。


 『お前は、いつまで逃げる気だ?』

 『お前は、いつまでもそのままで良いと思っているのか?』

 『お前は、いつまで何もしないままでいるのか?』


 つまるところ、この三年間で僕は変わらないといけない! そんな、想いが誕生したのだ。


 将来を想像してみろ、このまま失感情症を盾にして全てから逃げる様になるだろう……。

 放っておいても、平等に全員が歳を重ねる。年齢が上がれば、それ相応に舞台も変化していく。

 まだ早い、なんて考えはその場しのぎの錯覚(エナジードリンク)みたいな物だ、少なくとも今の僕が使って良いカードではない。

「間違いなく、僕の意志だよ」

「どう……して? そこまで、しっかりした考えができるの? あーしの姉は……」


 あぁ……そうか、春山の姉は別の意味で逃げることをし続けている。


「別に……考えてすらなかったんだよ、今まで僕は逃げることしか選んでいなかったんだ」

「に、逃げていた?」

 すっかり弱々しくなってしまった春山は、消え入りそうな声音で問うてくる。

「失感情症を盾にして、逃げて……人間関係から逃げて、家族からも逃げた。その末路が今の僕だ」

「そ、そんなことないじゃん! 逃げて……逃げてばかりじゃないでしょ!」

「ようやくなんだ、新しい仲間が僕を支えてくれるって、言ってくれたから立ち向かう意志が生まれた」

「でも、あーしは……何もできていないよ! まだ、まだ! 何一つできない!」

 大好きだった姉はただの操り人形で、両親は自分たちの敷いたレールに乗せたがるだけの機械みたいな存在で……。


 結局として残ったのは中途半端で何もできないままの自分だけ。

 きっと、反発していく中で自身の『正しさ』さえも見失ってしまったんじゃないだろうか?

「春山はさ、両親もお姉さん含めて仲良くなりたいって、思ってる?」

「本当はその筈なんだよ……でも、あーしは意見なんて出せない! 意味ないんだもん!」

「意味がないって、どうしてだい?」

「あーしがなにかを言う度に、それは全部我儘になってしまうから……今だってあーしは、我儘に付き合わせているだけ」

「なにも、言うことなすこと全てがわがままになるわけじゃないよ? それとも、春山は無理難題をふっかけてるの?」

「わかんない……でも、きっと! そうなんだとおもうの! だって、だって――わたしは……っ!」

「おーい! お二人さーん! そろそろお開きにしようぜー!」


 春山がなにかを言いかけた矢先で待ったがかかる。


 確かにスマホで時計を確認すれば時刻は十八時三十分を示していた。

 ぐぬぬっ……正直言ってしまえば、消化不良で後味が悪いったらありゃしないが……それと同時に過ぎゆく時は無残にも一定の速度で今を蝕む。


「いこっか! あっ! なっつ〜? 片付けはあーしも手伝うー!」

 さっきまでの表情とは打って変わり、春山は明るく振る舞う。そんな様子で駆けていく春山を眺めながら、僕自身も片付けを開始する。



「大山、なにかあった?」

「え?」

 そんな疑問を投げかけて来たのは、あまりにも背丈には見合わない投げ釣り用のロッドを携えたままの冬梅だった。

「なんとなく、ぬるちゃんがいつものぬるちゃんっぽくなくて……気になってた」

「僕より冬梅はそう言うのに鋭いね」

 まさに、優れた第六感? と、言うやつだろうか? その類に関して冬梅は圧倒的なまでに勘が良い、これまで歩んで来た彼女の人生からソレは、培われた物なのだろう。

「そんなことより、私には教えられない内容かな?」

「う〜ん、ごめん。一応、そう言う決まりなんだよ」

「わかった、じゃあもう追求はしないけど……」

 そう言って、冬梅は振り出し竿をカシャカシャと縮めたと同時に、僕に向けて再び向き直る。

 そのまま、微動だにせず約数秒が経過した、タイミングで僕と冬梅の間に潮風がすり抜けて行く。


 その拍子に冬梅の黒髪は靡く――。


 長い前髪の隙間を縫うようにしてチラリ、チラリと覗かせる彼女の瞳は藤紫(ふじむらさき)に輝いていた。


「きっと良くないことが起こる……と、思う」

「急に予言みたいなことを言う……」

「そう思うのが普通だよね。実際、私も直感みたいな物だからアテにはしてない」

 アテにはしていないと言いながらも冬梅は僕に向けて預言者みたいな発言をしていた。

「なら、何故僕にそんなことを言ったの?」

「保険みたいな感じかな、言わないよりは意識をして貰った方がいいかな? みたいな」


 えー……ここにきてなんか、不思議ちゃん要素を更に盛り込んでくるかー! いや、確かに元々冬梅はなんと言うか独特な雰囲気があったけどさ、ちょっと中二病っぽいよ? いや、まぁ本人には口が裂けても言えないけどさ。


 今後は彼女のこともしっかりと更に理解する必要がありそうだ。


「分かった、ありがとう。注意しておくよ」

「あっ、でも! 注意するのは……その〜、ぬるちゃんの方、だよ?」

「えぇ~……なんで僕に言うのさ」

 だとしたら、僕に言ってどうすんのさ!

 え? なに? これに対して僕はなんて反応を返すのが正解なの!? むずくない?

「だって、こんなことを言ったら変な子でしょ?」

「ごめん、僕も少し思ったよ」

「ふふっ! でしょ? だから一番ダメージが少なそうな大山を選んだんだよ」

 えっ……なに? つまり釣り部のメンバーで痛い奴は僕だ! 的なやつ? 嘘、なんか不名誉なんだが……。

 まぁ、でも……冬梅が適当にそんなことを言うタイプでもないだろうし、一応だけど気にかけておくことに越したことはないか。


「おーい! 冬梅と大山! 帰るぞー!」

「いまいくー」

「わかりましたー!」


 気が付けば、釣りに集中するよりも、春山との会話でほとんどが終了した晴れ間の釣行一日目だった。


〜我儘と意見【Ep.春山怒留湯編】END To be continued~

さて、今回の内容で更に春山と大山に距離の変化が訪れました〜。


いや~、いいですね~。こういうの……ただ、まぁ大山が大分めんどうな歪み方をしているので、不安ではありますが。


では、次回の更新でもお会い致しましょう!



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