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第22話 梅雨時期の晴れ間

鍵っ子です。


私の個人的ニュースですが、実はゲームするのが好きでして新作ゲームが出ると気になる奴は買うのですが……。

所謂、買ったら満足して遊ぶのを疎かにする! みたいな現象に苛まれ、積みゲーが沢山量産されています。いやー、ほんっと! 純粋にゲームやっている人は『はぁ? ゲームは遊ぶから楽しいんじゃん!』全くその通りなんですが、フィルムすら未開封なんて物もあります。


ただ! 必ず遊んで行こうとは思っているんです! タイミングさえ! それさえあれば!


最近は『まほよ』だったり『ヘブバン』をやってます。いや、ヘブバンはアプリゲーやんけ! 痛いツッコミなのでやめてね……。

 夕方なれども、雨は降り止まずレインスーツもとい、合羽を着て三津浜駅から自宅へ向けてラストスパートをかけようか?

 そんな間際、同じ駅で降りた桐内は傘を差したままテクテクと少し先を歩いていた。

「ありゃ、桐内は歩いて来てるのか」


 元々は自転車組の桐内は高校までの道のり、実際には一時間弱の旅を平気でやってのける猛者だ。

 自宅から駅くらいは徒歩で来るのなんて朝飯前なのだろう……夕方だけど。


「おーい」

 我ながら間抜けな声だと思いながらも、桐内の隣まで一気に自転車を近づける。

「おー、どったのさ?」

「自転車戦士は駅の帰りすら徒歩なのか?」

「いやー、なんか気乗りしないだけだよ。なんとな〜く、歩きで来てるだけ」


 ほう、つまりはなんだ……その〜あれだ。


 無性に雨が降ってると傘とか差さずに敢えて濡れながら帰りたくなる、みたいなやつか?


「あれだ、わざと雨に濡れながら帰りたくなるやつでしょ」

「分かる! 理由はないけど、自分に思い耽るヤーツだろ」

 そうそう、ぼっちなんだけど……なんか知らんけど格好つけたくなるやつだ。

 夜空見上げてボーッとしてみたりするやつ。

「そうそう、一人で急に夜の静けさに溶け込んだりね」

「うっわぁ、大山も意外と痛いやつだな〜」

「うるせー」

「格好つけもいいけど、程々にな〜」

「話して損したわ」

「そうかよ、んじゃあな! 俺はこっちだ」


 そう言って、お互いに違う信号を待ちながらそれぞれの自宅へ帰宅するのだった。




 自宅に帰るとビチャビチャのレインスーツを物珍しそうに愛猫がクンクンと脱ぎ捨てた上着部分の匂いを嗅いでいた。

「なんか、ニオイでもするのかー?」

 そんな、愛猫ことミルの姿を眺めていると……。

 徐ろに小さなお口をパカーっと開く、まさか!?

「フレーメン反応!?」

 何故! どうして……僕のレインスーツ臭いのか? 嘘でしょ、つまりは僕が臭いってこと!? いや、ちょっと待ってよショックなんだが!

 それで言えば、父親の足の臭さのが圧倒的に優勝だろ! ありゃ兵器だぞ! 鼻がひん曲がるなんてもんじゃない、知ってるか? 足のニオイは納豆のニオイと似た成分があるんだぞ!

 いや、それでも納豆は食べるよ? 美味いじゃんあれはさ、不思議だけど。

 今日出たらちょっと食べるの厳しいかもしれんがな……。

「って、そういやアンタは納豆食わなかったな」

 しばらく臭いを堪能したのか、僕の話など気にもとめずに猫は奥の部屋に向かって行った。

 しばらくして父親が夕食として購入して来てくれたのは……スーパーで購入したであろう半額シールの付いたお惣菜と、納豆パックだった。

「おおう、父さんや……貴方はエスパーか?」

「ん? なにが?」

「いや、いいんだ! なんでもないよ。いただきます」

 複雑な心境を抱いたまま、僕は夢中で納豆を食べた。




 一日と言うものには長く感じる時もあれば一瞬の様な場面が存在する。ゲームしてれば時間は一瞬だし、逆に面倒だと感じることは永遠の様な長さがある。あれ、マジで呪いだと思うよ。

 夕食後だってそうだ、本読んで気づいたらもう、父親がいないんだもん。

「気づいたらもう、彼女を迎えに行く時間か」

 やべ! 風呂に入らないと、あの人に絡まれたら面倒くさい! 大体酔ってるし、そもそも家に来る頃にはでき上がってるのは何故だ。

 そそくさと、風呂に入る準備を整えて父親と女の人が来る前には風呂に上がっておきたい。風呂の最中に乱入されかねないからだ!





 そして、風呂場から上がってみれば……。

「うひゃあーい! たらいまー!」

「こらこら! 酔い過ぎだよ」

「おかえり」

 タオルで髪を乾かしながら、一応は挨拶する。

「むすこちゃーん! あれ? 三人いるぅ〜、うぇへへ〜」

「はぁ……それは、すごい」

「いや、関心すな! つか、アキも運ぶの手伝って……うわあああ!」

 ガッシャン、ガッシャン! と、巨体の彼女が転倒した拍子に色んなものと一緒に父親もプレスされて行った。

「おやすみ」

「やーん! むすこちゃあぁ~ん! おやすみぃ~」

「おう……良い夢みろ……よ」

 なんか、凄い光景だけど、こうして今日も一日が終わる……。

 長いようで短くて、色々起きたなぁ~と、思いつつも充実はしているんだと思う。


 そんなことを思いながら、自室に戻る。しばらくすれば自然と眠気は襲って来るもので……。


「ねむい」


 スゥーッ……と、何も考える間もなく意識は()ちていく。










 突如としてけたたましい程のアラームが鳴り響く――。



「ん……ふあぁ~」

 不思議な物で眠りにつくと一瞬で朝がやってくる、感覚で言えば本当にあっという間になんとやらだ。

「ぐるな~ん」

「よしよし」

 愛猫のスリスリ攻撃を受けながら、カーテンの隙間明かりへ目を向ける。

「快晴だ」


 そこからの僕は自慢じゃないが、早いものだ! 素早く目覚め、朝食のスティックパンを二本平らげた後に、洗顔からの歯磨きだ。

 その後は猫との戯れで猫吸いをキメ込み、着替えを済ませる。まさに早業、我ながら惚れこんでしまう。以上が学校へ行く前の支度、素晴らしく無駄がなかろう……うむ!



 後は家のドアすぐ横に止めてある自転車の鍵をポーンと、放り投げた後にキャッチしてカシャン! と、音がするまでひねれば! 駅に向かうだけだ!








 それなりに混んでいた電車を華麗に脱出し、後は同じ制服を着た連中と同じように同じ目的地を目指すだけだ。

「おっはようさーん!」

「おはよう、桐内」

 今の僕では到底、再現できない程のハツラツさで、桐内が僕の横に並ぶ。野郎から声を掛けられるなんてのも新鮮だが、あんまうれしくない。

 だって、うるさいんだものこの人ってば!

「今日なんだろ? 鳴瀬川との対決」

「そうだね」

 ボフン! と、僕のセカンドバッグに軽いパンチを決めた桐内は何故か楽し気だ。後、教科書やら色々入ってるから、角みたいな部分が脇腹に当たって普通に痛いからやめてね!

「気合をいれてけよ!」

 暑苦しい! なんだっけ? ギャルゲーやってた時に女の子が確か言ってた言葉を引用しても良いんじゃなかろうか?

「朝からテンション高いね。どすこい!」

「まぁな! ん? どすこいってなんだ?」

 だめだぁ~! この人には全く効果はないみたいだ……。

 ならば、こちらもコチラの言い方で奴を鎮めようぞ!

「ええい! あつかんしい!」

「うぇ……なんでそんなこと言うんだよぉ~」

 ふむ、それなりに効果はあるみたいだ。やはり、人には人の乳酸菌! 効果には個人差があります。

 とは、よく言った物だ。いや、乳酸菌は関係ないか……。

 少しだけ静かになった桐内を連れ、程なくして学校へと到着を果たす。

 






 教室に着けば、各々がつるむメンバーを構成しており、上手い具合にグループと言う物が完成している。


 例えばクラスの一軍と言われる子たちは春山を筆頭に数人がいるし、人当たりが良くて分け隔てなく人気がある桐内がいたり所謂、クラスに必ず一人はいるヤツ。なんてのは、高校だろうとなんだろうとテンプレって奴でお約束みたいに存在している。

 一方で異端な者もこれまたテンプレとして存在している。顔すら普段は見せないような根暗が春山や夏川と言った人気女子ランキング上位と会話したり、クラスの女子を弄んでいた!? なんて、話が出たりした奴がいる。挙句、鳴瀬川と言うイケメン代表みたいな奴からライバル認定されてしまう根暗もいる。


 と、言うよりさ……この学校やっぱおかしいよな、顔面偏差値のパラメータどうなってんのよ? イケメンがポンポンいるじゃありませんか? 僕の知る限りで最早二人もいるとか、明らかにバグでしょ!


 つか、天は二物を与えずってま~じで嘘! 理不尽じゃん!? 明らかにおかしいじゃん。

 神を許せないね! 本当、許せん! 僕が与えられた物なんて精々、性根の腐った捻くれた考え方くらいじゃいかな? 

「お、おはよう? すごい顔してるけど大丈夫?」

「お、おはようございます。本日はお日柄も良く……」

「え? あ~、どうもご丁寧に?」

 いかん、会話がいまいち噛み合っていない! 不意打ち気味の冬梅との会話によって、強制的に回路が断たれおかしな感じに……。

「今朝は珍しく皆、違うグループで話し込んでるね」

「まぁ、本来はこんなもんじゃないかな」

「そうかも」

 そう、本来の在り方で言えばこれが正解の筈だ。お世辞にも自分は目立つような容姿でもなければ立派なコミュ力なんてものが備わっているわけでもなし。

 群れを成す上では一種の特性が存在する。例を出せばそう、代表的な奴は類は友を呼ぶってやつ。

 似た様な特性を持つ者たちが自然と引き寄せられる。そのシステムはどのコミュニティでも発揮される。


 つまり――。


「私たちも気付かないだけで、引き寄せてるのかな?」

「え?」

「ぬるちゃんや、なっつーに桐内もだけどさ……私たちには似た要素なんてないってレベルだけど」

「あ~、まぁ」

「類は友を呼ぶって効果、じつは発揮されてたり?」

「そんな風な考え方を実は脳内でしてた」

「それはそれは……」

 まさに、これも類は友を呼ぶってことなのだろうか。だとすれば、別の意味で皆とは共通しているのかもしれない。

「別の意味で、僕たちも共通しているの、かも」

「面白い考え方だね」

 そんな二人だけの会話をしている内に朝の時間は瞬く間に消費されて行った。

 




 その後、退屈とも感じてしまう四つの試練を乗り越える。

 と、言うか前から感じていたが! 板書の度に春山が動く関係で僕まで巻き込み事故を起こす。春山が右に傾けばその隙を縫うように僕は左へ、更に後ろにいる冬梅も見えないだろうから僕の隙と春山の隙を縫って左右に揺れる。

 そこで、僕は対策を生み出した! それは、授業の後半になるまで板書しない! まさに画期的な手法だが、弱点もある。知っているか? 黒板はラーフル一つでサラッと文字が消えるんだ。

 おかげで、要点だけをまとめたメモ書きみたいなノートになる。しかし、このまとめ方が案外良いみたいで、今のところ問題はない。

 インタビューしたり、聞き込み調査とかできそう。

 そんなバカみたいな考えを巡らせている隙に桐内がニッコニコでこちらに近づいて来ている。人間、あそこまで笑顔になれるんだなぁ~、なんて考えるくらいには……。


「お昼休みだぞ~! 喜べ、大山よ!」

「テンションが高いよ」

「とか言って、今日のお前もバッチリ昼ご飯を買ってるじゃねぇかよ!」

 いや、お昼ご飯をちゃんと買ってることと、貴方が勝手にテンション高いのは何一つして関連性はないんですが……。

「本当だね~、めずらしい」

「って! マジじゃん! あーしもびっくりなんだけど」

「ほれほれ! 今日も紅まどんながあるぞよ~? おたべ~」

 そう言えば、この人いつだったか忘れたけどちょくちょく紅まどんなを持っているのは何故?

 愛媛生まれのオリジナル品種、確か皮が薄いだか何だかでカットフルーツとして~、なんて言ってたような気がするけど……普通に手で皮を剥いてる辺り、なんと言うかまぁ夏川らしいけど。

「なっつー、おみかん好きだよね」

「いんや、りあちゃん! この子は姫たんざくも好きよ?」

 そういや、地元じゃないけどお餅を使ったお菓子って他にもあるんだけど……確かに姫たんざく、これはこれで僕も好きだ。

「ひめたんかよ! うまいよなぁ~、あれ」

 なんだ! その変な略し方は!? なんでもかんでも略せば良いってもんじゃないのよ? 桐内、君は略すことに慣れ過ぎている! つか、商品名もそんなに長くないだろ! 良いだろう、そんなに省略したいのであれば新勢力をお見舞いしてやろう!

 さぁ! 略せる物なら略してみろ!

「山梨でも似た様なのあるよ? 信玄もちってやつ」

「やまなしぃ~!? どこにあったっけ?」

 ダメだったかぁ~~~~~! 

「全然知らないわね~」

「ん~っと? どこだっけ」

 いや、これは学生だとしても酷い! 酷すぎる! 身延饅頭とかも美味しいし、シャインマスカットや葡萄! 桃にとうもろこしだってうまいんだぞ!

 まぁ、じいちゃんが山梨県にいるから知ってるんだけどね。

「話した僕が馬鹿だった」

「元気出して、大山」

 そう言いながら、モグモグと紅まどんな食べてると説得力がないんですよね、冬梅さんや。

「でさ! 今日は鳴瀬川との戦いを繰り広げるやまっちの意気込みは?」

 意気込みと言われても、正直なところ……な~んもない! そりゃそうさ! 僕は別になんでもない、タダの釣り好きなんだし。

「いきごみ?」

「そりゃあ、そうだろ? 作戦も考えてるんだろ?」

「作戦って……そもそもプラをする時間もなかったし」

「ぷらって?」

「ペットボトルの話を急にされても困るんやけど?」

「あぁ、ごめんプラクティス」

「でたな~、釣り人あるあるが」

「でましたなぁ~? やまっちさん、こいつぁきっと気分がいい時には活性が高いとか言いやがるタイプだよ」

 言うよ! えぇ、言いますとも言いますとも! 何かにつけてちょ~っと言いたくなったりしますよ! ただ実際は心の中だけで言ってることがほとんどなんですがね! 本当だから!

「練習、練習です」

「あぁ、釣り用語だったんですね」

「流石、釣り脳ってカンジ」

 そう言って唇を尖らせながら春山はブーブー文句を垂れていた。

「やんなっちゃうよねぇ~りあちゃーん! 知らない釣り用語言われてもねぇ?」

「ふふ! ですねぇ~」

「とにかく、今日の対戦は真っ向勝負をするだけです」

 そんな会話をしている最中で、気付けば教室内が一層騒がしくなった。

 やれ『かっこいい』だの『イケメン』だの『キャー! キャー!』そんな声が突如として上がり始める。

 この感じ、前にもあったな……。


「ん? なんだぁ?」

 不思議そうな顔をした桐内が顔を教室内の周囲を見渡す……。

「やぁやぁ! 皆さんお揃いで」

「でたぁ!」

「鳴瀬川! どうしてこの教室に!?」

「どうしたんですか」

 冬梅は特に反応を示さなかったが、他の面々が口々に鳴瀬川の登場に驚く。んでもって、や~っぱり女子は引き連れている。やっぱりこの人、見せつけてる? 当てつけ? いや、まぁ……理由は前に聞いたけども、マヌケな内容だった。

「いや、大山君との戦いの場を伝えていなかったと思ってね」

「なるほど、そうでしたね。場所をお伺いしても?」

「放課後、テニスコートで」

「わかりました」

「フッ! では、楽しみにしているよ」


 本当に簡単な会話を済ませると、鳴瀬川は二名の女生徒と共に教室から居なくなった。


「早いご退場でしたね」

「律儀なんだか、見せつけてんだかよくわかんねぇな」

「もう、どっちでもいいわよ。この際ね」

 そんな会話をしていると、お昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響くのだった――。


~梅雨時期の晴れ間 END To be continued~

さて、次の物語から鳴瀬川VS大山の勝負が始まるわけですが……ここまでに至るのに時間がかかっているような? いや、そもそも個別EPに行くまでが長いんじゃ?

そんなことを考えてしまうのですが、ついつい日常を描き込みがちな気もしなくないのです……。

つまるところ、時間経過の使い方が私は下手なんじゃ……と、不安になりつつも皆様に続きが気になる様な作品に! を、モットーに頑張って参ります!


良ければブックマークだけでも! 宜しくお願い致します!


では、次回の更新でもお会い致しましょう!

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