第19話 然れども、雨は降り止まず
鍵っ子です。
そう言えば、私のペンネームってなんで『鍵っ子』なんだ? って、お悩みの方もいることでしょう(調子乗りました。すいません)
一般的な意味としてざっくり説明すると家族がいないからお家の鍵を持っている子供と、言うものです。
当時の鍵っ子さんも家の鍵を持ってました。と、言うか今の時代はほとんどがそうかな? とは、思います。
ですが、そんな理由から鍵っ子と言うペンネームは誕生してません! いや、もしかしたら他にも鍵っ子がペンネームの人がいるかも!? すいません!
では、何故鍵っ子なのか! その正体は!
Key作品が大好き人間だからですね!
いやー、言っちゃいました! 皆さんびっくりだろなー……。分かる人は分かるはず!
梅入りおむすびと十秒チャージを二個、平らげてお昼休みは終了する。何だかんだで、なんとか春山と会話ができたのは嬉しい誤算だった。
後少しで蟠りが解消される寸前まで漕ぎ着けたのだ! 足取りは軽やかになり、流れ出す授業の時間でさえ、あっと言う間に放課後へゴールする。
「んぎぎぃ〜」
頭上高くで指を組み合わせて伸びをすると、ポキポキと骨が鳴った。
そんな僕の様子をチラリと横目で春山が見ていた。
「部室で話すの?」
「あっ……っと、そうだね。そうしよう」
部室と聞いて、一瞬だけ思考したが……部活に来なければ良いのだ! 部室に行くのは制限されていない!
「んでんで? お二人はこれからどーすんのさ?」
話の途中から割り込んだ夏川が僕と春山に目配せする。
「ちょっとだけ、二人で部室を利用させてくれないかい」
「んー?」
あの条件を提示した張本人は思案している。
「いや、でもそれはさぁ――」
「あっはは! 全然、全然! 問題ないですよ〜」
「ムグッ!」
余計なことを言う前に素早く冬梅が両手で夏川の口を封じ込めた。
「なに? なっつー、なんか言おうとしなかった?」
「心配しなくていいんだぜ! コイツはちょっと、今日はあれだから! 俺達二人で暫く預かるわ!」
「むむむーん! むぐー!」
ズルズルと引き摺られながら、桐内と愉快な仲間達は教室からいなくなった。
「なんか、知らんけど……とりあえずは部室だよね?」
若干、困惑気味な表情を見せながらも春山は僕にそう、問いかける。
「うん、部室に行こう」
返事をして、そそくさと身の回りの物を片付けて移動の準備を二人して開始する。
「おおやまー? あーしは準備できたけど」
「僕も、大丈夫」
「つか、あの子達……荷物置きっぱなしじゃんか!」
いたずらっぽく笑いながら、二人して足並みを揃える様にして教室から歩き出す。
そして、スライド式ドアの窪みに僕は手を掛けてゆっくりとドアを開ける。そのまま、一歩を踏み出そうと視線を上げた――。
「やぁ、こんにちは!」
「わっ」
「ゲッ!」
その先に彼は、張り付かせた様な笑みを浮かべて待ち構えていた。
「成瀬川君、どうしたの」
「アンタも部活でしょ? サボってんじゃないわよ」
「あ~っとね? 今日のテニス部は生憎とお休みなんだよね。だから、こうして急いでやって来たのさ」
「なら、残念ね! あーしは生憎、大山と部室に行くのよ! 分かったでしょ? そこをどいて!」
「なら、良かったよ!」
「はぁ!?」
笑顔を崩すことなく、彼はニコニコと僕達の前に尚も立ちはだかる。一体、何を考えているんだこの、イケメンは……。
「オレは間に合ったのさ! 悪いが大山、君がまだ春山さんと仲直りできていないのは知っているんだよ」
「どうしてそれを知っているんだ」
「オレは君たちのクラスでさえ、既に情報係を手に入れているんだよ?」
そう言って、指差す先には……奴が様子を見に来た時に状況をゲロっていた女生徒がコクリと頷いていた。
「だとしても、アンタにあーしは用なんてないわよ!」
「悲しいけど、現状はそうだね。だけど、彼は約束を破ろうとしているんだ。それをオレは許さないし、ここを通さない」
「大山、なんか約束したの?」
「いや、してないけど」
「なら、春山さんにも教えてあげるよ! 彼は部室で他のメンバーと約束をしたのさ!」
「何なのよソレは!」
なんでだ……なんで成瀬川は知っているんだ――。
「春山さんと仲直りをするまでは部活には顔を出すなと言われたから、彼は焦って君と仲直りしようとしているんだよ? 部活がしたいから……だけど君の気持ちは一切理解していないにも関わらず……ね」
「な……に、ソレ? どういうこと!」
春山の鋭い眼差しが、僕に向けられる。まずい! 成瀬川の放った言葉は一気に春山の信頼度にまで響こうとしている。
思考しろ! 巡らせろ! じっくり――。
いや、違う!
グツグツと何かが僕の中で沸き立っている――。
今の僕になら、少しだけ分かる。みんなが僕に教えてくれたのだ!
だから――
「よく知りもしない奴の話を真に受けるなよ、春山」
「えっ――」
僕だって、分からない! 分からないけど、成瀬川の存在が酷く不快だ! 邪魔をするなら――。
その行動自体に僕の思考はない、だだあるのは……。
気が付けば、素春山の手首を掴んで引き寄せていた。
ただ一点に、友達が間違った答えに辿り着こうとしていたから、僕が望んでいた結末と違ったから、反射的に僕は奴の前に出る。
「ちょっとぉ!? ふぇ!?」
「何処でそれを知ったのかなんて、今はいい」
「ほう?」
「だとしても、勝手な思い込みだけをぶつけて満足する人を僕は許さない! 成瀬川、お前の本気ってのはそんなしょうもない手を使うことなのか?」
沸騰――。自分でもびっくりするくらいの沸騰、冷静に物事が判断できない。
ぷりぷりとよく怒っていた春山の姿を思い出す、物怖じせずに噛みついて行く彼女の存在が僕に――
鍵を掛けてしまった感情の一つが、目を覚ます。
「わがっでんだよ! そんなことはぁ! イケメンなオレがこんな手を使っている自覚なんてとっくに理解してんだよ!」
そんな瀬戸際で凄まじいがなり声が入り混じる。
演技じゃない! コイツも本気で怒っている……こんなはずじゃないと、自分でも理解しながらそれでも尚、成瀬川は春山と仲良くなりたいのだろう。
「クソっ! マジで調子が狂うんだよ! だから嫌いだよ、お前がな、大山虚秋」
「奇遇だな、僕もお前が嫌いだよ」
「仕方ない、本当は見せる気なんてさらさら無かったが、春山さん自身が覚えていないなら、オレがこうなった始まりを見せるしかない」
「な、なんの話よ! ちょっと、わたし今、色々テンパっとるけんね!」
一人称が変わるくらいに春山も動揺しているが、そんなことはお構いなしに奴は懐から何かを取り出した。
「こいつをみてくれ」
「な、なんだ」
見ればそれは写真だった、黒髪天パにメガネと白いマスクの男子生徒が撮られている。
「あれ、なんかー? 合格発表の時に見た気がする」
「そうだよ、春山さん。この姿のオレに優しく声をかけてくれたのが、君だよ」
「いや、アンタかよ! これ」
「思い出したあああああ! ウロウロして迷ってそうだから一緒に見に行ったやつぅ〜!? アンタだったのね!」
「くっ……その通りさ」
「いや、なんでこんな格好してんだよ」
「バカなのか君は? こんなイケメンがいたら大変だろ? だから姿を地味にしたんだよ。本当は学校生活でこのイケメンを晒すつもりはなかったさ」
なんだコイツ、今すぐその整いまくった口をセンブリ茶でも飲まして歪ませてやろうか? あぁん?
「はいはい、じゃあなんでそのイケメンさんは本当の姿を晒したんですかー」
突然、ビシッと成瀬川は指を指す。
「ヒィッ!」
びっくりとパニックの二段構えで、春山は震えている。
「最初に出会った、春山さんに気づいて貰うためさ!」
「だとしたら、女をはべらせたのが間違いだったな」
「たがらこそさ! 僕が自由に動き過ぎれば女が集まり過ぎる、たから逆に利用したのさ! 君を見つける為に!」
なるほど、ある程度は女の子を付ければ虫除けになり、更に女子は繋がりを持つ傾向にもある為、他のクラスを探る為に利用した。
だからあの時、情報係とか言ったのか……いや、コイツも大概やべーやつじゃね?
「なら、最初の姿のまま春山を見つけても良かったんじゃ……」
「言うんじゃねぇよ! 馬鹿野郎がよぉ! 冷静になるとそうだったって、気づいてんだよぉぉ! でも、これが一番早く出会えると思ったんだよぉ!」
頭を抱えてグワングワンと、左右に揺れながらキレてるのか悶えてるんだか、分からないが……とにかくコイツもやべーやつなのは、間違いない。
「とりあえず、事情は分かった。成瀬川がマジなのも分かった。ただ、今回みたいにそのーなんだ、自分らしくないスタイルで無理に間へ入るのは改めてくれ」
「オレはクラスも部活さえ、違うんだぞ! 彼女と会える要素がないじゃないかぁ!」
いかん、確かにその通りだ。邪険にしてしまったとは言え、春山との接触を間接的に僕が妨害していたとも思われるだろう。
ゆっくりと、僕の後ろにいる春山へと目を向ける。
「う、うぅ……面と向かってそんなこと言われても〜! うぅ〜ん、あーしも初めてだらけで困るんだけど!」
あらら、お顔が真っ赤! 照れてる!? やだ、なんか新鮮!
「すまんが、成瀬川なりにそこも改めて考えなおせ」
「その余裕も、オレが君を嫌う理由の一つに入れておくよ。まぁ、それはそれとして……ふむ」
「春山は、成瀬川と話すのは嫌なの?」
「理由知っちゃったら、やだなんて言えないじゃん!」
ごもっともです。
「そ、そうか。春山さんからその言葉が聞けただけでも、今回は良しとしよう」
「良かったな」
少しだけ満足した様子の成瀬川が去ろうとしたが、そうはさせない!
「おい、まて! 成瀬川、お前は何処から仲直りの話を聞いたんだ?」
「あぁ、それか」
再び僕の方へ向き直ったかと思うと……悪そうにニタリと笑みを浮かべる。
「知りたいかい?」
「あぁ」
「明日は珍しく、梅雨時期にも関わらず晴れ間となるそうだよ」
「何を言ってんだ」
「知りたいのならば、明日の放課後にオレと的当てゲームで勝負しろ! 勝ったなら、教えてやるよ」
「的当てって……アンタはテニス部なんだから得意じゃない! 大山はテニスなんて、できないわよ!」
いや、勝手に決めないでね! 多分、ちょっとならできるよ?
「フフッ、オレは! テニスラケットさ! でも、君は! 違う物なら投げることができるんじゃないかい?」
「あぁ、なるほどな。それでいいなら、受けて立つ」
「え!? やめなよ、負けるよ?」
いや、負ける前提をまずはやめようね? 後、疑いようがないくらいの心配そうな目もやめてね!
「互いの得意で勝負って話だもんね。それなら負けないかな」
「決まりだな! お前が負けたら、そうだな……」
少々思案し、何かを言おうとしてはまた、止まるを繰り返す。春山を絡めるお願いごとは却下の構えで行こう。
「大山のことを教えて貰おうかな」
奴め、こう言う場面でもしっかりと判断ができるか。
「わかった」
「恩に着るよ、じゃあね。今日は二人の時間を使わせて悪かった、後は好きにしてくれ」
本当に満足したのか、成瀬川はそのまま振り返ることなくその場を去って行った。
「とりあえずは、予定通りかな」
「あーし、今日一日でめちゃくちゃ疲れた〜」
「ごめん、それじゃあ……部室に行こう」
「分かったんだけどね……その〜さ? そろそろ離して欲しいかなぁ〜、なんてー」
ん? 話すとは何だろう? ここで?
「ん? ここで話すの」
「やっ! マジか! 離して欲しい、の方」
そう言って、春山がフリフリと揺らす左手に共鳴する様にして僕の右手も揺れていた。
もう一度言おう、僕の右手も揺れていた。
しまったああああああああ! あの時からずっと握ってたああああああああぐるああああああああああ!
「あっ、ごめん」
「いや、いいよ別に……ちょっとかっこよかった」
「照れる」
「無表情じゃん! ばかぁ!」
すぐさま手を離すと、春山は僕の前に駆け出して行く。
そして、ちょっと進んだ辺りで、くるりと踵を返して僕を見る。
「ちょっとだけね! ほんのちょっとだけアンタのこと、信用してあげる!」
その、無邪気な笑顔は僕が欲しかった物だったのかも知れない。
〜然れども、雨は降り止まず END To be continued~
さて、取り敢えずは落ち着いたんですかね? お話も、しかしながらまだまだ梅雨時期は続く? かな?
なので、次なるエピソードも仕込み中です!
では、次回の更新でもお会い致しましょう!




