第18話 観察力と洞察力は月とすっぽん
鍵っ子です。
そう言えば、最近カリカリ梅の酸っぱい奴がブームになってましてー、自分の中でですよ!
ゴソッと買うんです。三個とか四個とか、なので当然お店の在庫がなくなるじゃないですか? 買えないじゃないですか? しょんぼりするじゃないですか? んで、別のお店で買うんです! んで、在庫なくなるです!
はぁ~、お店の人ごめんなさい! また入荷したら買います。
春山を除いた部活メンバー達との会話を終え、夏川から仲直りをするまで部活の参加禁止令が出されてしまった。
まぁ、梅雨時期なので釣り自体もそんなにできないので大きな影響はあまりない。
問題はどうやって会話するか、だ。
「うにゃ~ん」
「よしよし」
自宅の猫を撫でながら、一人で突破方法を探る。
文章で表すならば謝罪なんてものは簡単だ、現実においてもただ単に謝るだけ。
ごめんなさい。
それだけ言えば良いのだ、至って単純だがそんな物は理解している。要はそこに至るまでの素材の準備が重要なのだ。
要素は謝る相手がいる→話す→ごめんなさい。すごく分かりやすい! でも、中身がないとステージにすら、相手を誘い込めない。
「今、撫でている猫だってお触り禁止ゾーンが存在する」
逃げもすれば、怒りもするし、時には傷つけもする。割と身近にある物だけどさぁ……問題なのは彼女が怒った原因だ。
「どこで怒ったかをもう一度、思い返せば……」
だとすればあの辺りだ――。
『さぁ、お詫びなどを兼ねてと言う物であれば作ることもあるんじゃないですか』
『いい加減にして!』
「ふむ、そう言えば……カチューシャも返すの忘れてたな」
いや、現実から目を逸らすな! それもあるが、お弁当を作ってくれたことは善意であることは間違いない。海に僕を落としてしまったお詫びと僕だけがその場で食べれなかった罪悪感からくる物であることも間違いではない筈だ。
「わからん」
当たり前のことを今更実感する。
いくら知識を詰め込んでも、実行せずに経験として活用をしなければただ知っているだけに過ぎない。
そもそも、僕が持ち合わせている武器など、所詮はナマクラだ。大層な知識など備わっていない。
であれば、少々痛みを伴うだろうが……手近な観察対象を利用するか。
時刻は過ぎ去り、22時を過ぎた辺りだ。
ターゲット達は何も知らず、帰宅してくる。
「や〜ん、息子ちゃんがおきてるぅ〜!」
「どうも」
さて、今回のご登場はいきなり酔っ払いな模様。我ながら興味を示さなかった分、父親が連れている彼女とは何者なのかを全く知らない。
フルネームすら知らないのだ。
「はいはい、まいちゃんは座ってねー」
「うぅ~ん……」
「分かってます! 分かってます! お水ねー」
特に女性は何かを語った訳ではない。が、父親はそれだけで十分に察している。
さっぱりわからん。第一、何も言ってないし。
「なぁ〜に、見てんのよぉ〜! 息子ちゃんがエッチ」
「そんな対象としては見てません」
「なんだ? 今日は珍しいじゃないか、あきが話すなんて」
「まぁ、少しだけ話そうかなって、それだけ」
そう、何かを得る為にワザとそれっぽいことを並べて、あたかも相手を少しだけ信頼した風を装う。
無論、信頼などしていない! 必ず化けの皮が剥がれると確信しているから、深い理由なんてない。
「えへぇ〜! なんか、うれしぃ」
「随分、ベタベタですがお二人は喧嘩しないんですか」
「なっ! 何をいきなりいってるんだ! あきは!」
動揺する父は放置して、メインターゲットを見据える。
「ふーん? まぁ、よーく喧嘩なんてするわよ〜?」
「あ、そうなんですね」
「些細なことが喧嘩になるのよぉ〜? その癖、理由はしょーもないのぉ! でも、大喧嘩する」
「あっはは……」
乾いた笑い声の父を見るに、どうやら事実らしい。
「仲直りはどうしてるんですか」
「そんなもの、自然と悪いことをした方が折れてあやまるのよぉ〜」
「どっちも意地を張らないんですか、悪くないって」
「そりゃ、最初はお互いがそうでしょ? でも、いつまでもこのままじゃ嫌だって、なる時にそれは折れる」
「折れなければどうするんですか」
「互いに拗れて、歪み続けるだけね」
その一言は、酷く冷たくて……けれど、凄まじく鋭い何かだった。
「でも、まぁ? 大体はなんとかなるんじゃないかなぁ〜」
「なるほど、勉強になる」
「いえいえ〜! じゃあ、いっちゃんはお酒! おさけをワタシによこしなさぁーい」
「じゃあ、身に覚えがないけど相手が怒っている場合なんかはどうするんですか」
「ん~~? なぁるほどぉ、息子ちゃんは誰かを怒らせたわけか〜」
「そうですね」
「女の子だねぇ? じゃないと、ワタシに聞かないもんねぇ〜?」
「ではぁ! 問題です! 彼女との別れ話になりました。彼女は最後に追いかけてこないで! と、吐き捨てて走り去ろうとします。さぁ、どうする?」
「追いかけないですね」
「正解はねぇ~? 無回答だよぉ〜」
「なんだと」
「こんなのにはそもそも回答なんて、自分よがりな正解を押しつけるのが間違いなのよ? 人それぞれよ、自分が接してきた人間ならば本質を自分で見抜きなさぁい」
今まで、関わりを持たなかったがそれなりに大人はできる様だ。ならば、何故この人は自己紹介すらしないのだろうか……。
「答えなんて、結局は自分達で見つけるのよ。相手の小さな変化や言葉を見抜いて探るのよ」
「わかりました」
件の内容から察するに意地を張らずに素直に、答えはお互いの人間性によって見つけていくと言うこと。
問題は僕が何を間違えているのか……そもそも、間違えている前提で考え過ぎているのが良くないのか。
「分かんないし、聞くか?」
ただ、今回は当人が僕に怒っている以上リスクを伴う、自分なりの良くない点を洗い出す必要はある。
みつからないのではなく、みつけられていないのだ。
その時、ふと……サインのメッセージを思い出す。
「あっ、なるほどな」
改めて読み返した短い春山のメッセージには僕のズレた回答が浮き彫りとなってくる。
「なんとなく、見えた気がする」
後は、コレを直接本人に伝えるタイミングを!
翌日――。
今日も相変わらずの曇り空で、太陽は隠れている。
教室内は特に大きな変化はなく、いつも通りだ。珍しいことと言えば、桐内や夏川が全く絡みに来ないことと……。
「春山、おはよう」
「……」
ご覧の通り、春山はフルシカトを決め込む始末だ。
僕の存在には目もくれず、夏川を含めたおなじみメンバーと合流して談笑をしている。
「まだ、怒ってますねー」
小さく、僕に聞こえるくらいの声で冬梅が対象のお怒り度合いメーターを宣言してくれる。
「んだなぁ~、ありゃあ相当頭にきてるんじゃね?」
「困りましたね。これは」
「ありゃま、珍しい」
僕の状態を見るに見かねた冬梅と桐内は自然な形で合流をしてくれる。
自分なりの答えは見つけたが、それを伝えるには至らず、その場で足踏みをする。
「まずいよね、これ」
「下手したら、部活すら辞めかねないぞ?」
「そうなると、なっつーも辞める流れができますよ?」
「やめてくれ、二人共……心臓に悪い」
あはは……と、引きつった笑顔を見せる桐内がいる辺り、深刻さが伝わる。
機微を良く見ると言っても、そもそも会話にすらならない状態の相手を観察した所で何の意味があるのか。
かと言って内面を見るなんてことは更に難しい。
円の形からそれがどんな物かをイメージすると人によって捉え方が違うだろうし、変化から気持ちを読み取るのは更に難易度が跳ね上がる。
「もしかしたら、冬梅に相談するかも」
「わ、私に!?」
何故か少しだけ、戸惑っている様な雰囲気が感じ取れたが、相変わらず長い前髪を武器に表情をひた隠しする。
「確かに、今回の件は冬梅が良いかもな〜、俺なんて役には立たないし」
「僕も作戦を練ってるけど、どれもこれも上手く行かないんだ……後少し、何かがあればとは思うけど」
「なになにぃ! やまっちは何の作戦立ててるのー?」
僕の苦悩なぞどこ吹く風と、言わんばかりにコチラもこちらでいつも通りにいつも通り過ぎる夏川であった。
「あぁ、夏川かおはよう。別に対した作戦なんてなにもないよ」
「作戦ってそもそも、なんの?」
あかん、この人って本当はアホの子なんじゃないか? え? なに、記憶まるごと抜き取ってる?
「ねね! ぬるちゃん、やまっちがなんか作戦立ててるってさー」
「あ、あーしはそんなの興味ないし! 知らんけんね!」
「ありゃりゃ、イヤホン付けちゃった……」
なぁあああああにやってんじゃああああああ! 悪化したよ!? 傷口が更に広がったやんけ! どうしてくれようか、この女!
「やまっち! なんか、ごめん」
チロッと、舌を出して可愛く謝っても駄目ですよ! おとーさん許しません! いや、おとーさんじゃないけど。
「ばっか、おまっ! 傷口広げて何を考えてんだおめーは!」
「あっはは〜……致命傷なら、まだ! だいじょうぶじゃない?」
「なっつー、それは死んでるよ」
「ゔっ……」
やられた! まさに八方塞がり、どの方角に行っても致命傷なんだが……。
打つ手が更になくなったタイミングで朝のフリータイムが終了を告げるかの様にチャイムによって支配された。
そして、時は流れて4時限目は英語の時間だ。
「OK! それじゃあ、グループになって自己紹介のコミュニケーションを英語で行いましょうか!」
グループだとぉ! それはつまり、前の席にいる春山と同じグループになるんだが……。
「冬梅さんは大山君と春山さんの三人グループでお願いね!」
各々が机を向かい合わせて、グループとなる。
当然、僕らもグループな訳で……。
「宜しく頼みますね、春山」
「お願いしまぁ〜す……」
「な、なによ! 二人して!」
き、きまじぃー! 気まず過ぎる。
誰か助けて!
「では! 自己紹介を皆で開始です!」
先生は陽気な声で、有無を言わせることなく合図する。生徒の事情なぞ一々把握なんてしていないだろうし、当然ではある。
「Now's your chance!(今がチャンスだよ!)」
と、小声で冬梅さんが言った。そうと言えばそうだが……。
「Well,Sorry for the other day(えーと、この前はごめんなさい)」
「Please introduce yourself(自己紹介をして下さい)」
「ふふっ……」
おう! 冬梅よ、今お主は笑ったな? この可哀想な僕を見て笑ったな?
「ソーリー」
「まぁ、でも……」
はぁっと、小さく春山はため息をついていた。
イメージ的にはやれやれ……と、言った雰囲気が感じられる。
「Let's talk later(また後で話し合いましょう)」
そう、彼女は言ってくれたのだ。何だろうか、このポワポワした感覚は……。
「やったね!」
隣では無邪気に笑う冬梅の表情が隠れた前髪から少しだけ顔を覗かせていた。
「馬鹿言ってないで、自己紹介をしなさいよ! ばかぁ!」
ちょっと目を逸らして、語尾も少しだけ優しげな罵倒だった。いや、シンプルに悪口だけどね。
正直、彼女の機微は不明だった。それでも、一つだけ分かったことがある。
友達って、こう言う関係だってこと。
こうして、無事に英語の授業は終了した。
そして、昼休みが訪れる――。
今日は特に後半の授業に関しても消費エネルギーが大きい授業がない為、十秒チャージを二個だけでお昼を済ませる腹積もりだ。
そんなことを考えていた矢先で、不意に春山と目が合った。チラッとだけ、見つめて居場所が悪そうに春山の視線が左右に揺れたと同時に――。
フワッと、何かを春山が僕に向けて投げてくる。
「わっ、なんだ」
「一個だけ、あげる」
おぼつかない手つきでなんとかキャッチしたのは、海苔の巻かれたおむすびだった。
「ありがとう」
「感謝してよね!」
長い髪をフワリと靡かせて、彼女は夏川達と合流するのだった。
「お? 仲直りできたのか?」
「ん〜、どうかな……半分くらい」
「英語の時間が活きましたね!」
「何を話したのさ?」
「それは、後々わかります!」
そう言って、可愛らしくドヤるのか……。冬梅は絡んできたからこそ、少しずつ分かってきたが凄く頼りになるのかも知れない。
「まぁ、なんだ……その〜、良かったな!」
「たぶん」
塩味の効いたおむすびはとっても美味しくて――。
「あっ」
ただのおむすびではなく、その中には……。
「梅干しが入ってるんですね」
その酸っぱさは、何故かとても優しく感じたのだった。
~観察力と洞察力は月とすっぽん END To be continued~
突入している時期が梅雨時期と言うこともあり、これまでにまともに釣りしてる描写が一回だけと言う事実!
さらに、春山が怒っちゃったりして拗れて、てんやわんや! なんか、自分で執筆してて思うんですが……こう言うのって! なんか、良いですね!
ムズムズする! 良いよね!
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