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第15話 景色は最高

鍵っ子です。


本当に少しずつ、少しずつですが進んでるなぁ〜って実感を致します。


そして、花粉症さん僕をいじめるのはやめてください!

 駅に着いたとて、服が乾くなんてことはない。

 むしろ、濡れたまま皆と合流しに行っても良かったのではないかとすら思う。


 かと言って、今更戻るなんてそれこそリスクだ。


 鳴瀬川君が周りを走っている以上、再度出くわすなんてことになったらそれこそ面倒を重ねるだけだ。

 幸いなのは、寒くないことが救いだ。

「あ、そうだ……」


 そんな呟きと同時にスマホを眺めて数回タップした後に、サインの画面を引っ張り出す。


 サインの相手は、桐内だ。


【例の鳴瀬川君と接触してしまった。そして、面倒なことになってしまいそうで……どうしよう】




 数分後、スマホが二回ほど振動する。


【まさか、やらかしたのか?】

【いや、勘違いされたと言うべきかな】

【……おいおい】

【僕の主張が弱かったのも原因なんだと感じてる】

【とりま、詳しい話は後で聞くよ。待ち合わせ場所、ふるみつ食堂なら分かるだろ?】

【分かるよ】

【じゃ、そこに夕方の16時30分位に集合だ!】

【了解】


 むちゃくちゃ、近所だな……。そんなことを考えながら、丁度到着した電車へと乗り込む。

 すぐさま辺りを見回し角にある空席を発見、静かに腰を掛ける……と、思ったが自分は濡れていることを思い出し、ギリギリの所で踏ん張る。


「おっと、そうだったな」


 仕方なく、手すりに捕まると電車は動きだす。一定のリズムを刻みながら、小気味よく目的地へと僕を運んで行く。

 

 ここでふと、今までの春山や夏川に対して好意を抱いているのかを冷静に分析してみる。


 自慢ではないが、これでも読書以外に感情を取り戻す要素として恋愛ADVなどのゲームを嗜んでもいる!

 俗に言う、ギャルゲーと言われるものから乙女ゲーにもチャレンジしている僕に抜け目なし!


 各人物を惚れさせる為にはフラグ……すなわちその人個人でのイベントが好感度を上昇させるには必要事項となるわけだ。

 その経験を経て、島を離れていく男の子に対して白髮の女の子が【あなたを好きになりました】と、言ってくれる様になるわ、ある作品では女の子のことが好き過ぎて監禁しちゃったり……


 まてまてまて! シチュエーションが明らかに限定的過ぎるだろうがあぁあ! いや、だとすればあの作品なら【あやつ……裏表……】いかん……特殊過ぎる。


 視点を変更しよう、今まで二人と出会ってからのイベントを振り返るのだ、そうそうイベントなど起きる筈はないのだから!


 え~っと、確か春山の場合は勘違いを解消する為に砂浜で桐内と土下座したなぁ〜……。

 んで、夏川の時はエルフ先輩を公開処刑気味なことをして助けたなぁ〜……。


 ん? んん⁉ あれ、おかしいな。思い返せば中々にパンチの効いたイベントが起きてませんか? 


「両者ともフラグ? ある、か……?」

 いや、特に二人とも特別な感情がある様には思えないし、寧ろ本気になれば共に僕なんかを軽く凌駕するハイスペック彼氏がすぐにでも作れてしまうレベルだろう。


 そもそも、僕は感情が出にくい性質になっているのだ。

 好意を抱く以前の問題だろう。


 あぁ……冷静に分析するまでもなく、答えはソコにある。


「そうだ、好きの感情はまだ分からないんだ」


 ようやく、足掛かりが見つかったレベルの人間が到達するにはまだまだ先の話であるということが判明した。


 これにて、分析は終了だ。これ以上の思考は現段階では不必要であると判断した。


「ふぅ……先は長いな」


 言葉を吐き捨てると同時に――。


【え~、次は~次は~三津浜】


 そんなアナウンスを共に、電車はしばらくしてゆっくりと速度を落とし、停止する。


 



 程なくして、駅から十分すらかからない距離にある我が家に……到着する。


「ただいま〜」

「うにゃーん」


 ポワポワした表情の愛猫が尻尾を高らかに上げてお出迎えする。見た目ではめちゃくちゃ判断しにくいが、これでも16年くらいは生きている。


 それなりにお年寄りの筈だが……


「おー、お出迎えご苦労さん! ミル」

 そう言って撫でようと顎に手を近づけた矢先にパシンッ! と、お手々を振り払われてしまった。


「あ~、やっぱりニオイが駄目でしたか……あはは」

 見た目はアメショだけど雑種の愛猫は綺麗好きで、自慢の毛並みは逆撫で禁止だし、キツめのニオイがする手でお触りするのも禁止です。


 ぶちギレますからね……。


 そんな愛猫をすり抜けて、台所に向かって蛇口から水を出して髪の毛を洗う。どうせ夜には風呂に入るし、ガス代も無駄になるので水洗いだけして、濡れた衣服類は洗濯機にそのままぶち込んでスイッチ・オン!


 その間に着替えを済ませて後は時間になるまで食事を済ませ、ゲームをして時間を潰すのがプランだ。




 「ハッ! いまなんじだ!」


 プランを計画し、食後にゲームをするまでの道のりには到達していたが、遊んでいる内にどうやら落ちたらしい。


 時刻は16時20分頃、集合場所はめちゃくちゃ近いので問題なし。ぽけーっとした鈍い頭を少しずつ覚ましていく、同時進行で外出準備は完了する。


 16時26分頃、自転車に跨る。


 16時27分頃、集合場所に到着する。


 「うむ、余裕だな」


 しかし、まぁ……なんと言うか。約束ごとや遅刻寸前、もしくは遅刻をしていて起き上がる瞬間の焦り具合と疲労感は凄まじい……僕はそう思う。

 

「おーまーたーせー!」


 程なくして、桐内が手を振りながら自転車に乗って登場する。


「いや、時間ピッタリだし待ってない」

「そこは、僕もいま来た所さ! ハニー♡ くらいのお約束はしてくれよ〜」

「え、やだよ」

「清々しい程にドライ!」

「それより、何処に向かうの?」

「……完膚なきまでのスルー!? まぁ、らしいっちゃらしいか」


 そう言って、再び自転車に跨る桐内は後ろにいる僕に向かってウィンクをする。


「じゃー、とりま黙ってついてきな〜」

「おい」

「だいじょぶ、だいじょうぶ! 十分もかからないから、たふん……」

「おい、最後……」


 問いただす間もなく、強引に案内がスタートする。





 ついて行けば、なんのことはない。見知った道のりの途中で、桐内が静止する。


「っと、こっから先は徒歩だな」

「えっとー……」


 指差す先には確かに道らしき場所はあるが、周り一帯は竹林だらけで奥すら見えない。


「山道?」

「ちょっとだけ、そんなカンジ」

「ほう」


 ガシャン! と、自転車のスタンドを立てて二人同時に歩き出す。


 少し上がると、凄まじい斜面……一応は人が歩く為の道にはなっているが、まぁまぁ急斜面だ。


「お、キツくない? 斜面」

「案内人がソレ言うんだ」


 ニコリと笑う桐内であった。いや、笑ってんじゃないよ!


 しばらく、斜面を登ると……ひらけた場所が――。


「墓場?」

「そう、墓場」


 いやいや、まて! なんで墓場!?

「えっと、お墓参り?」

「んなわけないじゃん」

「えっと、ばか?」

「シンプルに悪口じゃん」


 意味不明だ。


「俺達のメインは……こっちだ、よっと!」

 柵の隙間をすり抜けて、お墓が立ち並ぶ場所とは少し離れた道に向かう。


「あ、なるほどね」


 墓地をバックに広がる景色は中々の絶景、高台になっていた訳だ。


「ここの縁に座るんだよねー、俺」

「まぁ、確かに柵を越えても広い足場があるしちょうどいい感じの縁もあるから座れる……」

「なんと言っても景色が好きなのさ」


 太陽の姿もバッチリ、少し先を見ればキラキラと光る海がちょっと見える。あぁ、確かに……いい場所だ。


「まさに、相談場所には持ってこいってわけよ」

「では、早速」

「はなしたまえー」


 さて、どう説明したものか。


「ん~っと、端的に言えば成瀬川君が春山を狙っていて僕はライバルの立ち位置になった、かな」

「なるほどね〜」

 意外にも冷静な反応、ちょっとビックリした。

「実際、キミ的にはどーなのよ?」

「どうって、友達だよ」

「ともだち、かぁ……」


 そう言って、徐ろにコーヒー缶をポッケから取り出して僕に一個、投げ渡してくる。


「やるよ!」

「ども」

「なぁーんかさ、正直なところさ俺自身も大山は春山か夏川に好意があるんじゃないかなぁ〜って、思ってた」

「ふむ」

「でもさ、その感じは嘘なんてついてないじゃん? 分かるんだよな、なんかさ」

「まぁ、その通りだし」

「ここで確認して、初めて友達って位置づけなんだなってのを理解したよ。言ってることわかる?」


 つまり、それまでは桐内の中でも僕はどちらかに好意を抱いていると認識していた。


 それくらいには勘違いさせる要素があると言うこと。

「思わせぶりな態度……してたってことだよね」

「なんつーかさ、実際は冬梅ともいい感じな訳じゃん?」


 なるほど、ここにきて三人目のご登場か。確かに桐内の視点からすればそうなる、か。


「なのかな? 正直さ友達って枠組みの接し方すら僕は危ういんだよ」

「いや、そうは言っても友達は高校に上がる前にもいただろ」

「いたね」

 そんな短い三文字だけの返答で桐内に立ち向かう。ただただ、表情一つ変えずに……。


「だろぉ? あれか、女子の友達がいなかったとか?」

「そうだね、いなかったよ」

「ヤマアラシのジレンマ」

「え?」

「後、頭のキレがいい癖に鈍い! だけど、お節介なくらいお節介なやつ」

「なんかしたっけ」

「はぁ~、本当は馬鹿なんかもしれん……」


 要するに距離感の調節がまだまだ下手くそ、そう言うことか。いや、それだけじゃないのかもしれないが、僕がお節介? 


 なんでだろう。


「いつか、そう言うお前さんのさ……過ぎたお節介に誰かが怒る!」

 茶化した雰囲気はない、これは所謂マジな奴と言うことか。

「めんどくさ」

「ばっか! 滅多なこと言うんじゃない」

「はい」

「俺が怒るかもしれないし、他の誰かかもしれん。ただ――」

 いつの間にか、真っ直ぐな視線を向けている桐内は瞬きする間も与えない。

「多分、本気でぶつかってお前自身がソレに気づく必要がある」

「あのさぁ~、回りくどいなぁ」

「しゃ~ねぇじゃん! 俺も掴めてないし、ふんわりした形しかない」

 核心には及ばず、けれども底知れぬふんわりした形容ではあるが、僕にも爆弾がある。


 そういうことか、な?


「わり! ちょっち話が逸れたな、鳴瀬川をどうするかだったな」

「あーそうだった」

「言っちゃ悪いが、お前の動じなさすぎる態度が悪い!」

 そう言えば、なんだか桐内の喋り方に違和感……あぁ、『お前』って呼ばれてるからか。

「わー、そんなー」

「それ、そういうの! 今回の山場は流石に鳴瀬川に向き合う必要があるぞ」

「エルフ先輩でもお腹いっぱいだったのに」

「わがまま言わない! お前もそれなりにまた、本気出さないと春山自身も大きく傷つけることになるからな、今回の件は」

「なんで」

「同じクラスにいるライバルはさも当然の様に自分の好きな人の近くにいる。それを快く思うライバルはいない! ましてや自分に圧倒的なまでの自信を持っている奴なら尚更」

「あっ……」


 当然の流れ、相手がライバル認定をした時点で僕は鳴瀬川君視点でみればもう、恋敵だ。


 意中の相手がソイツと同じ領域にいると言うこと自体が勝負を受けて立つ!

 合戦の合図そのものだ。


「ありがとう、目が覚めたよ」

「ん? よかったな」


 友達として受け入れてくれた以上、唐突に春山から距離を置くことは余りにも人として僕の在り方としてありえない選択だ。

 かと言って、今の僕では言葉でいくら真実を述べた所で鳴瀬川君には響かないし、聞く耳を持たない。    


 警戒すべき相手なのだから。


「とりあえずは、いつも通りに過ごしていくよ」

「へへっ! 期待してるぜ~、大山」

「う~ん、なんか微妙にズレてる気もするけど」


 ふと、ポケットに突っ込んでいたスマホが振動する。


「ん、なんだろ」

「お? どした?」

 通知画面を確認すると……。


「あっ、春山からサインがきた」

「噂をすればなんとやらだな……で? なんだって」


【月曜日の弁当はあーしが作る! たまにはまともなもん食べなさい!】


 えーーー! なんで!?

「僕の弁当作るってさ」

「はぁあああ!? あ、それで捌いた魚の何匹かを持ち帰ったのか」

「え、なんで」

「いや、なんでもなにも大山だけ食ってないじゃん天ぷら」

「あっ」


 意図を理解、なんと言うかそこまで気を遣うかねぇ~? らしいと言えばらしいのかな?


「な~んか、嫌な予感がするな」

「奇遇だね、全く同じことを思ってる」


 底知れぬ不安が背筋をスーッと駆け抜けていく、勿論確信なんてものはない。


「んじゃ、帰りますか」

「だね」



 徐々に薄暗くなり始めた空と、景色は最高だけどバックは墓場。

 なんか、ミスマッチだけど気に入ってしまった場所で、自動的にやってくる月曜日にちょっとだけ僕はビビっているかもしれない。


~景色は最高 END To be continued~

熱くなったり寒くなったりで、季節の変化ですら感情の移り変わりを現しているのか!? と、考えたりする程に変な人でして多分?


社会人になると長いこと、友達と遊ばなくなるなんてザラにありますよね〜、んで! いざ遊ぶぞーってなると面倒くさいなぁってなったりする……。あっ、そもそも友達がいないや! あっはは!


え~っと、宜しければブックマークや感想&評価もお願い致します!


それでは、次回の更新でもお会い致しましょう!

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