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第13話 クサフグ、ハゼ、ベラ、時々……。

鍵っ子です。


今年はまだ半袖半ズボンでお家は過ごせそうですねぇ~いい加減長袖を〜……と、考えていると真冬になってます。

 車内で過ごすこと数分で、目的地には到着する。

「おらぁ~、お前ら着いたぞ~」

「ついたぁあ! 釣りだー! キスを釣るぞー」

「こらぁ! うっちー、はしゃぐより先に三脚とかの荷物もてぇ!」

「うぅ~、虫いやだよぉ~」

「こっちはこっちで子供になってるし……」

「もう、ぬるちゃんも大丈夫だからー! あたしも虫触れんし男の子に付けて貰おう!」


 同時に僕と桐内はガチリとフリーズした。


 なんだって!? 今なんと申した! 夏川め!

 虫、触れないだって!?


「ま、まじかよ! 夏川、虫触れないの?」

「うん、まじむり! 噛んでくるし、きもちわるい」

「あぁ、あぁ~……そうなんだ」

「うっし! 引き分けだな!」

「ん? なんの話かにゃ?」

「なんでもねーですよー」

 くそう、この時点で両者引き分けが確定したが……。冬梅はどうなんだろう?

「ほらぁ! 男子諸君は全部運びだせぇ~、その間に女性陣は上だけは着替えろ~」

「「「はーい」」」

「なぁ? 今、車内で生着替え……どわぁ!?」

「馬鹿言ってないで、セッティングしろ」

「かぁ~! 素直じゃないねぇ~」

 んなことは言わなくても理解してるんじゃ! 余計に意識をさせるんじゃない!



「よぉ~し! 着替えたなぁ? ほいじゃあ行ってこーい、昼ぐらいにまた来るからな~学校でついでに用事を済ませてくる」

 そう言って、先生は車を発進させていなくなる。

「準備、任せちゃって悪かったわ」

「おまたせぇ~! って、ほとんど準備できてんねぇ」

「ありがとうございます!」


 春山はタイワ製品の青色のTシャツに自前の白色のパーカースタイル、夏川は色違いで黒色のTシャツにスコーロンの完璧な釣り人スタイル、冬梅は色違いで白色のTシャツにアームカバースタイル

 ふむ、それなりに動きやすい服のチョイスだが……白パーカーは汚れるぞ。


「あと、これね。アンタらの分、ほれ!」

 そう言って渡されたのは、腰巻ライフジャケット……しかも人数分あるのか。つくづくあの人すごいな……。

「と、言うより。白色のパーカーは大丈夫? 汚れちゃうと嫌じゃない?」

「いーのいーの! 汚れて文句言う程、腐ってないわよ。服なんて汚れるもんだし」

「はぇ~? オシャレ好き全開の春山が……」

「失礼ね! それなりに熱中してやるからにはそれ相応の準備をするわ!」

「あ~! それでネイルも辞めたんだ」

「う、うるさーい! つか、なんで大山はそんなとこみとんよ!」

「ほんとだ、私も言われて気が付いた」

「よかったねぇ~? ぬるちゃんの変化を感じとる男子はいるみたいだよ~」

「そうね、そしたら早速始めちゃいましょう? 時間もったいないし」

 さも当然かのように竿を持ち、ラインを通し始める。

「どうやら、茶化しにも少しずつ耐性が付いてるみたいですぜ? 夏川」

「ぶ~! あたしも準備する!」



 今回のチョイスはレブロース3500にラインはナイロン12lb (三号)、ロッドに関してはリベルティクラブT20-360をチョイス。

 その他の小物や仕掛けは以下の通りだ。スナップ付きサルカン、ジェット天秤15号、投げ釣り用の仕掛け今回は二本針で初夏にかけてはサイズが大きくない為、針のサイズは6~8号がおススメだ。慣れてくれば50本仕掛けなんかもあるけど……そこまでやらなくても楽しめる。


「おーい! 大山、みんな準備できたぞ~」

「いまいくー……春山さん、早速ミスってます」

「え? どこが!?」

「お? あっ……ほんとだ」

「よし、何も言わずにハンドルを巻いてみて」

「巻けばいいのね?」


 言われるがままにクルクル回す春山であったが、待てど暮らせど仕掛けは巻き上がってこない。


「なんでぇ!?」

「リールのラインが巻かれてる部分に注目してみ? ぬるちゃん」

「ラインが巻かれてる部分って……あっ」

 よくあるミスでリールにはラインを巻き取る為に回転するローラーが付いているのだが、それに干渉しなければ巻き取りができない。ちなみにラインローラーと言います。

「ラインローラーに糸が通ってない……」

「ぬるちゃん、一緒に最初からやりなおそ?」

「うえ~ん、ごめんねぇ~りあちゃん」

 うんうん……と、後方腕組保護者面の桐内と夏川! アンタらは経験者だろ! しっかり見とかんか……いや、僕もだあぁあああああ!


「今度こそ! バッチリね!」

「うーっし、ほんじゃま! イソメで呼び方は統一しますかね。開封っと」

「ヴッ! ミミズっぽいけどなんかゴツイわね」

「あはは~ほんっと気持ち悪いなぁ~」

「思ってるよりもサイズありますね」

「冬梅はイソメは平気そう?」

「え、うん。問題ないとおもう」

「「すごっ!」」

「こらー? 妙なとこでシンクロすんじゃない。春山と夏川は俺らが付けるからよこせ~」

「では、今回のターゲットであるキスを釣る為にエサを針に付けるわけですが、工程は簡単で針の形に添ってイソメを通すだけ……」

「まぁ、そうだな」

「じゃないです、付け方の工夫次第で釣果に影響が出ます多分です。今回のキスを釣るにあたって使用するイソメには鋭い口、頭部分が存在します」

「ん? 俺はそのまま付けるけど大山は違うのか?」

「いや、僕も面倒くさい時はそのままだけど今回は確実に釣ることを重視する為、かわいそうだけど頭をカットします」

「それってさぁ? 意味あるの?」

「意外とありますよ。キスの捕食シーンなんかを見ると頭から行くことが多いんだよね。となれば針の先端に頭があれば当然上から吸い込む可能性が上がる。そうなれば、弾かれて針に掛からない」

「なるほど、見えてきたよ? その頭をカットした分、ニオイを出すことができるから集魚効果が見込めるって訳だね?」

「その通りです。ただ、必ずしも頭をカットしなければならない訳ではありません。工夫の一環ですね。特に今日は昨日の雨で状況が良くはありません。なので……」

 ニオイでおびき寄せるが吉か、頭残しでアピールを取るか。試すしかない。

「桐内と僕は頭残しでやってアピールで誘い、他は頭カットのニオイ作戦の二つを実行します」

「めちゃくちゃ、流暢に語ってる! 大山って本当に釣り好きなのね。あーしちょっとびっくり」

「そこまで考えるとはな……天晴だぜ! 相棒」

「はい、じゃあやりますよ~。春山は僕がえさつけるから」

「んじゃあ、夏川は俺によこしてくれ~」

「ほいほーい!」


 隣に冬梅がウネウネと動き回るイソメをつまんだまま、僕のエサ付けを真剣に見ている。

 終始、物静かな春山はおそらく見ていない。

「まずは、ここが頭だから容赦なく切る」

「はい、切りました。独特な香りがします」

「はい、実況しないでください。あと、独特な香りと言うのも辞めて下さい」

「はい」

「変なニオイするの?」

「はい、そこもお口チャックです」

「はい」

「なになに? 変なことしとんの?」

「はい、君は持ち場に戻りなさい。後、アウトです」

「はい」

 何と言うか、今までは一人で釣りをしていたのに……。

 

 こんなに、誰かとできる釣りって楽しいんだな。


「ありがとうね大山、すごく助かる」

「お安い御用ですよ。では、僕に続いてキャスト(投げて)しましょうか」

「お願いします!」

「します!」

「まずは、しっかりと仕掛けを後ろ側に持っていき、リールのお尻部分がまっすぐ海を向くようにする。斜めにしちゃダメですよ」

「よし、こうね!」

「完了です!」

「どりゃあああああ!」

「せいやああああああ!」


 僕が一生懸命レクチャーしていることなどお構いなしに経験者は既にキャストしている。


「そうしたら、人差し指の第一関節辺りにラインをかけたら、ベールアームをカチリと音がするまで起こして……時計の針で言うと11時くらいの位置をイメージして、はな……す!」

 スパーン! と、爽快感あふれる音を奏でながら僕がキャストした仕掛けは瞬く間に遠くに放たれて行った。

「せりゃああ!」

「とりゃあ!」


 二人とも軽快にキャストを成功させる。

「やっば! めちゃめちゃ爽快感があるんやけど、これ!」

「びっくりするくらい飛んでいきました!」

「おけ、さぁ油断しないよ! ここからは中層辺りに群れを成す傾向が強いキスに向けてこちらからアプローチしていく、その名も引き釣り」


 引き釣りのパターンは大きく分けて二つあり、一つは竿を高い位置で固定してそのまま巻いてくる方法、もう一つは竿自体を水平にして引いていき、直角の位置になったらたるんだ糸分だけ巻き取り再び直角まで水平に横へ引いていく方法。

 今回は前者を選択するとしよう。


「そろそろ頃合いだ。ロッドを高い位置で固定して、そのままハンドルをぐるぐる巻いていく」

「よし! やってやるわ!」

「釣ります!」


 グルグルと巻いていく最中で、ゴンゴン! と、数回に渡るアタリを検知するも……このアタリはキスではない。


「ん、掛ったな」

「え!? もう来たの? 早すぎない?」

「すごい……」

「なんだと!? もう来たのかよ」

「やまっち、それは流石にはやすぎん!?」


 速度を緩めずに一定をキープし、巻き上げる。確かにきたのは来たが……こいつは外道の引きだ。


「お、見えてきた」

「どれどれぇ?」


 足元まで来てしまえば、そこまでの大物でもなし。そのままぶっこぬく!

「よいしょっと」

「んだよ、外れかよ」

「ブフッ! クサフグじゃん!」

「ふぐ……」

「ぷっくぷっくに膨らんでますね」

「藻も絡まって大変なことになってる……」


 ビチビチ!


 ヤダもう、恥ずかしい!


「お? 俺もきたぜ!」

「おぉ!? あたしもあたしも!」

「流石、経験者たちね」


 同様に桐内と夏川もヒットをかます。が、手ごたえはあまりない模様だ。


 ビチビチ! 


「ハゼ……だと!?」

「あたしもハゼだ……」

「なんか、地味な魚ね」

「ちっこい、ですね」

「立派な外道釣りおめでとう」

「フグは食べれないけど、この子は食べれるの?」

「まぁ、小さいけど食べれるよ?」

「是非とも! 持って帰りましょう!」

「んにゃ? まぁ、天ぷらで食べれるしキープしよっかうっちー」

「おっけー」


 ボチャン! 水汲み反転バケツの中に二匹のハゼが加わりました。


「おぉ!? なんか、ちょっと引きが強いんですけど!? 巻く、巻けばいいのよね巻くわよ!」

「あっ、私もきました!」

 確かにしなり具合からして、春山にはそれなりのサイズが来ているようだ。

「いいぞー! 釣れ、釣っちまえー」

「よ! にっぽんいちぃ!」

 なんだ、この外野は……。


「はははは! めっちゃ面白い、なにこれ!? すごい引くじゃん!」


「おっ! 釣れました」

 冬梅は外道ハゼをゲットし初の魚をゲットする。

「おめでとう、冬梅立派なハゼだ」

 その後もグリグリとハンドルを回しながらご機嫌な春山の初釣果は……。


「な……なんだコイツは」

「あぁ~、こいつも外道の代名詞ベラだな」

「見た目グロいけどおいしいんだよね」

「キスじゃない? わね、なんか赤いし」

「面白い模様してますね。不思議です」

「食べれるならキープね! なんか大きいし」

「割といいサイズだね。せっかくだし食べるといいよ」


 これにて、全員がボウズ逃れは成功したが、まだまだ始まったばかりだ! 残り時間の最後まで諦めない!

 その後は、エサを付け替えることはあれど初心者の二人は非常に飲み込みが良く、トラブルはナシ。

 五人全員が真剣になり始めた頃、そいつは顔を出す。引き釣りの最中で確かに伝わるシャープなアタリ! 小さいながらも独特な引きを生み出す……間違いない! (キス)だ。


「きた! この感じは間違いなくキスだ」

「やっときたぁ!? 逃すなよ!」

「任せて」


 次いで、立て続けにシャープな引きが追従する。これは!


「よいしょっと」


 ピチピチ! ピチピチ!

「二連チャンでキス!」

「ついにきったぁあああ! ハゼ地獄から解放だぁああ! さっすが、やまっち」

「ほぉ! これが、キ……たぁああ!」

 キスを観察する間もなく、春山がヒット宣言!

「おりゃあ! って、これこれキスじゃない!? しかも二匹よ! 二匹」

「お見事な腕前です。春山」

「ぬるちゃんナイッス!」

「わわ! 私も反応がありました」

 続けて冬梅もヒット宣言! 慎重にハンドルを回し引き寄せられる仕掛けの先には白く輝く姿が二匹分ある。

「決まりだ。冬梅も二本取りだ」

「つ、釣れちゃいました!」

「うおおおおおおおおりゃあああああ! そいつは最高だぁ!」

 突然の大騒ぎをかます桐内に、ジャンプして二人に飛びつく夏川も上機嫌だ。

「やった! 釣れちゃったわ……」

 おかしい、春山の言葉が途絶えた? 一体何が起こって……。

「ぎゃああああ! イソメがぁああああ!服に付いてるんですけど!? なぁ~んでぇえええ」

「アハッ! 喜んだ拍子に投げちゃいました。ごめんね? 春山」

 驚いた拍子にバランスを崩してしまう春山、元々足元が石造りの波止になっている為、不安定ではある。まずい! 転んだりしたら大怪我になりかねない。

 すかさず彼女の手を掴んでバランスを取り戻させる。が!

「ひゃ! 大山、助けてくれたの!? ありが……」

 ツルン! あー、これはあれだ……。南無三! 海よ僕を迎え入れ給え!


 ドッポーーン!


「ぎゃあああ! やまっちが落ちたぁああああ!」

「うわああああぁ! 死んじゃやだああああ! おおやまぁあああ」

「ブッハ! 勝手に殺すな」

「ごめん、ごめんね! 大山」

「だ、大丈夫ですか!?」

「おけおけ、ライフジャケット様に助けられた」


 幸い、自分がビチャビチャになっただけでその他に問題はなかったが……。一人お嬢さんが偉くシュンとしてしまった。


「ごめんね、虫苦手でびっくりしちゃって……うぅ~」

「いやいや、むしろ苦手なのにちゃんと楽しんでくれて嬉しかったよ」

 流石に偏光サングラスを付けてもしょうがない、ヘアゴムを取り出した矢先だった。

「こ、これ使って! カチューシャ」

 そう言って、春山が黒色のカチューシャをくれた。

「ありがとう、頂きます」

 受け取ったカチューシャをそのまま搔き上げた髪に添える。

「うっし! 無事に大山も助かったし、片付けして残り時間は海でも眺めるか!」

「それいいじゃ~ん! そうしよそうしよ?」

「そうだね、そうしようか。ちょっと服も乾くだろうし」

「ですね! 皆で片付けましょう」




 程なくして、五人は釣り道具をしまって砂浜に座り込んでいた。


「あ~そうだった。 クーラーボックスに飲み物があるからさ! 乾杯しようぜ!」

「いいねぇ!」

 そう言ってポンポンッ! と二個分の飲み物を桐内に投げ渡された。隣にはパーカーを肩出しして着込んでしょんぼり気味の春山がいる。なるほどな……。

「ほれ、しょんぼりしてたら台無しだ」

 チョンチョンと、頬にペットボトルを優しく当ててやる。

「つめたい! しょんぼりなんてしてないし! でも、飲み物はありがとう!」

 忙しい奴だ。

「うぇえええい! かんぱーーい!」

「いきなりだな! うっちーは!」

 ポンポンッ! と、全員がペットボトルを当てて乾杯する。うん、最高に楽しい釣行だったけど〆にチョイスした飲み物がなんで、マンゴーと烏龍茶を配合した飲み物なんだ……。

「これ、ほぼマンゴーの味じゃない?」

「不味くはないけどね」

「でもさ、すごく楽しい釣りができたよ。あたしは」


 そう言った夏川の言葉に全員が静かに頷き、一面に広がる美しい水縹(みはなだ)を瞳に写し出す。

 しばらくの間、誰も一言も話すことなくただただ、さざ波だけが支配していた。


 とても、とても穏やかな時間がそこにはあった。


~クサフグ、ハゼ、ベラ、時々……。 END To be continued~

ようやく釣りをやりました。

いや、ここまで長かったですね〜。


梅雨時期の釣行って中々にタイミングが難しかったりします。


個人的にはキス釣り、オススメです。


良ければブックマークや評価&感想もお願い致します!


では、次の更新でもお会い致しましょう! 楽しんで頂ける作品を今後も投稿して参ります!

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