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白い灯台のようなものの手前に、広い駐車場があった。ドーム状の屋根の休憩所もある。
バイクに乗ってからここまで、約十五分ほどだった。単独走行だと十分もかからないけれど今回はタンデムで、陽子のためにかなり徐行したからそれくらいかかった。
その駐車場に翔はスズキGRSを入れて停めた。有料駐車場だけれど、バイクは無料のようだ。
「じゃあ、降りて」
翔が陽子に合図した。
先に陽子が翔の両肩につかまって、ひらりと降りた。
「どうだった? 初めてのバイクは?」
翔もエンジンを停めて自分も降りながら、陽子に聞いた。
「最初怖かったけど、快適でした。だんだん慣れてきたし」
「たしかに。陽子ちゃんはバランスのとり方、うまいよ」
「けっこういい感じですね。たしかに長袖着てても、暑くなかったです」
そうは言ってもバイクから降りたとたんに猛暑が二人を包み、ライディング・ジャケットが耐えられなくなった。翔はもう顔に汗をかいている。
「脱ぎなよ」
陽子にそう言いながらも翔自身ライディング・ジャケットを脱ぎ、陽子が脱いだジャケットと合わせてサイドバックに入れた。自分のヘルメットはシート脇のヘルメットホルダーに掛け、陽子がかぶっていたのはハンドルバーのホルダーに掛けて共にロックした。
駐車場の向こうの芝生で覆われた円形の高台の向こうに、白い灯台はある。
青い空をバックにして建つ白亜の灯台は高さは、五十メートルくらいだ。それほど高いとは言えず、小ぢんまり感がある。
翔は陽子とともに。その灯台の方へと歩いた。
まずは芝生の丸い丘の上へ続く階段をのぼる。小さいと思っていた灯台だけど、近くに来ればそれなりの重量感はあった。
灯台の下の建物の周りに、何本もの白くて太い丸い柱に支えられて筒状の展望デッキが灯台の向こう側を半円状に設けられている。
それがあるから灯台が一本の棒ではなく、どっしりと胡坐をかいて座っているように感じた。
灯台自体は下の方は四角だが、上の方は円形になっている。
「上に展望室があるから、登ろう」
「いいですね」
陽子は嬉しそうだ。
芝生の丘の上から、また灯台の入り口に向かう階段があった。それを昇りきると、高さ六メートルほどの大きなホタテ貝のモニュメントがあった。
灯台の名称は「横浜港シンボルタワー」と書いてあり、展望室までのエレベーターもあった。
展望室は全部がガラス張りで、パイプの柱も窓枠も階段の手すりも、すべてが白一色で統一されている。
「海、きれい」
窓枠の手すりに両手を置いて景色を眺める陽子の瞳がきらりと輝くのを、隣に立つ翔は見た。
そして翔も景色を見る。
なんと、港なのにここでは水平線も見える。厳密にはその水平線の向こうにうっすらと陸地が見えるような気がしたが、方角的にそれは千葉県だ。
「ベイブリッジがあんなに間近」
ベイブリッジの左は赤と白に塗り分けられた巨大なクレーンが林立し、船舶ドックも見える。
ここが海に突き出た人工の四角い岬の先端だということが、この灯台に登って初めてわかった。
「ここは本牧埠頭のD突堤の先端だ。本牧埠頭の中でも、こんなふうに緑地公園化して一般市民に開放しているエリアはここだけだね」
「本当に穴場ですね。こんなところがあるなんて知らなかった。港が見える丘よりもはるかに港が見えるし、この灯台も小さいけどマリンタワーよりずっと素敵」
「しかも登るのも無料だからね」
しばらく景色を楽しんだ後、二人は下に降りた。
そしてバイクのある駐車場まで歩いた。その前にドーム屋根の休憩所に入り、そこにいくつもある自動販売機で飲み物を買って水分を補給した。
お手洗い等も済ませ、二人はバイクまで戻った。
「駅まで送るよ」
翔は言った。
「でも、横浜駅まで行くと今の時間は三十分以上かかる」
「JRの駅でしたらどこでもいいですよ」
「ここから一番近いのは京浜東北線の山手駅だけど。道が空いてて信号運もよければ十五分くらいかなあ」
「それでもいいです」
「京浜東北線、正確には根岸線で二十分くらいで大船に着く」
「大船から藤沢まではひと駅です」
そういうことになって、二人はまたタンデムでバイクを走らせた。
翔の家の近くを素通りして山手駅まで、実際は二十分以上かかった。本牧通りの「山手駅入口」の表示のある信号を左折して、細い一方通行の道を進み、一度ガードをくぐって左に行くと駅があった。小さな高架駅だ。
その改札近くで陽子はバイクから降り、ヘルメットとライダージャケットを翔に返した。
「次は赤レンガデート、忘れないでくださいね」
陽子はまた、念を押した。
「ちょっと待って」
バイクにまたがったまま、翔はサイドバックから四つ折りの紙を取り出した。
「え? なに? 手紙?」
「いや、ライブでぜひ俺の曲を聴いてもらいたいけどそれまで待てないから、とりあえず最新作の詞を書いて持ってきた。曲はまだついてないんだけど」
「私が最初に見るんですか?」
「そう。作曲を担当するメンバーにも、まだ見せてはいない」
陽子はその紙を開きかけた。だが何かを思うようにして、また閉じた。
「やっぱ、家に帰ってから読みます」
にっこり笑って、陽子はその紙をバッグにしまい、改札の方へ向かって言った。そして自動改札を通る手前でもう一度翔の方を振り返り、笑顔で手を振った。
翔はふっと一人で笑みを漏らし、バイクを発進させた。
来た道は一方通行だから、並行するやたらくねくねとした道で本牧通りまで戻った。
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君を最初に見た時
すぐに目にとまったのは
君が可愛いというだけではなく
僕の心の中に
予感めいた何かを感じたからなんだ
君の心はまだ聞いていないけれど
僕はもう君のこと
ただの友達とは思えない
そう、それ以上なんだ
君と出会う前の僕は
本当の僕じゃなかった気がする
今、君と出会って僕は
たしかに生まれ変わったんだ
今までは別々の道を
歩いてきた僕たちだけどこれからは
同じ道を歩いて行ってくれるかい
君さえよければ
君がかけがえのない人だと
知ってしまった今では
偽りのない気持ちで僕は叫ぶよ
愛してる Dear YOKO, FOREVER MORE
この歌が僕の君への気持ち
とても口にはできないから
言葉にしたら何となく
消えてしまいそうだから
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