異世界へ
眩しい光がひくと私はどこかの部屋にいた。
あまりのことにボーゼンとしていると目の前にはまるでゲームか何かに出てくるようなローブを羽織った人が数名と、これまたゲームに出てくるような全身鎧に身を包んだ人たちが数名立っていた。
え? なにこれ、どういうことなの?
ボーゼンとする私をよそに目の前の人たちが騒ぎ始めた。
「聖女様が二人もいるぞ!? どういうことだ!?」
はい? 聖女様? なんですか? そのまるでゲームの中のようなセリフは。
下を見ると何か黒い線がひかれてあり輪の形になっていた。
は!! そうだサヤは!? サヤはどこにいるの!?
慌てて周りをキョロキョロと見てみるとすぐ右隣りにサヤがいた。
私と同じように座り込みボーゼンとしている。
「サヤ!! よかった!! 無事だったんだね!? 心配したよー!!」
まだボーゼンとしているサヤに思いっきり抱きつく。
するとようやくサヤがしゃべる。
「あ、アヤ、よかった一緒にいてくれて。それよりここどこなの?」
「それが……」
私がしゃべりかけると突然バンッという音を響かせながら数人の男たちが入ってきた。
「おい!! 聖女召喚に成功したそうだな!!」
服装からするときっとこの中では一番位が高いんだろう男性が大声で部屋にいた人たちに言う。
するとローブを羽織った男性の一人がその男性にこちらを指さしながら言った。
「は、あの、聖女様を召喚したのですがなぜか二人も召喚してしまったようなんです」
「なに!? 二人だと!?」
位の高い男性は見事な緑色の髪に赤い瞳というどう見ても日本人ではないなと思わせるような容姿でこちらを見る。
「確かに二人もいるな。ん、んん!? この二人もしかしなくても双子ではないか!?」
そう言うと男性はツカツカとこちらに歩いてきたから私はとっさにサヤの前にでる。
「お前たち名はなんという?」
その言葉に私は警戒しつつも答える。
「私たちは双子の神田アヤとサヤといいますが。ここは一体どこなのですか?」
すると男性は私の質問には答えず騒ぎ始める。
「なに!? 双子だと!? むむむむ。おい、この二人は両方とも聖女なのか!? それとも片方だけが聖女なのか!?」
後ろで事の成り行きを見ていた人たちに男性が大声で聞くと、ローブを羽織った人たち全員がすくみ上る。
そしてすくみ上りながらそのうちの一人が答える。
「詳しく調べてみないことには分かりませんが恐らくお二人とも聖女で間違いないかと……」
やっとやっと答えると目の前にいる男性はこちらを胡散臭そうに見てくる。
「ふむ、双子でもどちらか一方が聖女ならばと思ったが二人そろってか。これは国王と話し合う必要があるな。ともかくこの二人を客間にとおしておけ。後のことは俺が国王と話し合ってみよう」
なに!? なんなの!? この人たちは!!
まるで私たちのことなんて考えてくれてないじゃないのよ!! ていうか質問にくらい答えなさいよね!!
「ちょっと待ってください!! 勝手にそちらで話を進めないでください!! ここは一体どこなんですか!?」
私が声を張り上げると目の前の男性はめんどくさそうに答える。
「うるさいやつだな。ここはユグドーラ国の城の中だ。まったく、聖女を召喚できたかと思えば双子とはな。これは国王も渋い顔をするだろう」
「な!! さっきから双子がどうとか言ってますけど双子だからどうだっていうんですか!! 失礼にもほどがありますよ!!」
売り言葉に買い言葉。男性と私の言い合いが部屋に響く。
「あまり俺の前で無礼な言い方をするな。俺はこの国の王子リチャード・ジョーンズ・ユグドーラだ。手ひどい扱いを受けないだけありがたく思うがいい。さて、早速国王と話し合いを始めるぞ。後のことは頼む」
王子!? 王子ですって!? だからさっきから尊大な態度をとってるわけね!?
「ちょっと!! あのねえ!!」
「アヤ、だめだよ落ち着いて」
さらに食って掛かろうとしたけど後ろのサヤに止めれてしまった。
「これ以上立場を悪くはしたくないでしょ? 今のところはおとなしくしてたほうがいいよ」
「サヤ……」
そう言われてしまっては何も言えない。サヤの言う通りだから。
「ほう、どうやら後ろの娘の方は場をわきまえているな。サヤとやらに免じて愚弄の数々は許してやるとしよう。感謝するんだな」
ムキ――!! 最後まで嫌な奴!! まったくもう、これだから王子ってやつは。
そこまで考えて私はようやくすべての異変に気付く。
王子!? 王子ですって!? しかもユグ何とかって国の王子!?
ちょっと待ってよ!! じゃあここって日本じゃないわけ!?
「サ、サヤ大変だよ!! ここユグ何とかって国なんだって!! 日本じゃないみたいだよ!?」
「そうみたいだね。ユグドーラ国なんて聞いたことないし、聖女召喚がどうのって言っていたし私たち別の世界に呼び出されたみたいだね」
「別の……世界!?」
頭の中が怒りと突然の出来事にぐちゃぐちゃになる。
私はまたボーゼンとする。
そうしていると騎士だろう男性がこちらにやってきた。
「聖女様方、とりあえず客間にお通ししますのでこちらへどうぞ。国王様と王子様や宰相などの方々が話終えるまでそこでお待ちください」
「あ、はい……ありがとうございます」
私はやっとのことでそれだけ答えるとあとは事の重大さにやはりボーゼンとするのだった。
ついに異世界へと召喚されてしまったアヤとサヤ。
二人そろって聖女らしいのだけど双子という点が問題視されているみたいで?
慌てまくりなアヤと冷静になるサヤ。
どんな扱いを受けてしまうのかハラハラドキドキの次話をお楽しみに!