プロローグ
私たちには小さいころから特別な【力】があった。
ほかの人には見えない何かが視えていて、よく周りの人を驚かせていた。
もちろん中には気味悪がる人もいて
「あの双子ちょっとやばいんじゃない?」
などといわれることもしばしばあった。
だから小学生の高学年くらいになってからは周りの人に何か特別なものが見えていても口には出さないようになっていった。
この【力】が何なのかわからないまま私たちは大人になり社会人として働くようになった。
名前は姉である私は神田アヤ。
妹の名前は神田サヤ。
先にも述べたように双子の姉妹で社会人四年目の私たちは毎日のサービス残業に明け暮れていて二人とも果たして何のために働いているのか分からない状態だった。
もちろん働かないとお金ももらえないから働かないわけにはいかないけど、それにしたって限度というものがあるんじゃないかと思う今日この頃。
二人で同じ会社に入社できた時は本当にうれしかったけど、同じ仕事場に配属されたわけではないので実質離れ離れなことに変わりはない。
それでも同じ会社にちゃんといるんだと思えるだけでも心のよりどころになっているのでまだましなのかもしれない。
今日も今日とて仕事が終わるころには精神的にも肉体的にも二人そろってフラフラ状態。
会社のロビーで待ち合わせをしているので急いで向かうと先にサヤが待っていてくれた。
「サヤお待たせ~!!」
そう言って思いっきり抱き着く。
「アヤお疲れ様。今日も本当に大変だったね!」
「本当だよ~、仕事は仕事だけどいくらなんでもきついよね~」
「うんうん、でも何とか終わったしあとは帰るだけだよ。早くしないと終電になっちゃうよ」
「そうだね、急いで帰らなくちゃ!」
二人で会社を後にして外に出る。
するとやっぱり視えてしまっているのだ。この世ならざるっぽいものが。
電柱の陰に誰かがたたずんでいるのを見るのは今日で十日目。
普通十日間も同じ人が同じ場所でたたずんでいれば誰かは声をかけてもおかしくない。
それなのに今まさに目の前から犬の散歩をしている人ですらその存在に気付いてすらいない。
「ねえアヤ、あの人まだいるよ?」
「あ、やっぱりサヤも気づいてたんだね。うーん、私たちからは視えるだけで話しかけたりもできないんだよね」
「そうなんだよね。視えるなら視えるでなんかこう浄化とか? できたらいいんだけどね。あっちから何か話しかけてきても聞こえないしこの【力】って一体なんのためにあるんだろうね」
「本当だよね」
そうなのだ。
ただ視えているだけでこちらから何かできるわけじゃないのである。
本当にただ視えるだけ。
この【力】が何のためにあるのか全く分からない状態で二十何年間も生きてきた。
今日この日までは。
サヤと共に借りているアパートへとたどり着いた時だった。
二人とも疲れ切っていて物も言えなくなってしまっていたちょうどその時突然足元が眩しく光った。
「え!? 何々!?」
あまりの眩しさに周りが全く見えない。
「サヤ! どこ!? どこにいるの!?」
隣にいるはずのサヤの名前を呼ぶと小さい声で返事が返ってきた。
「アヤ! わたしはここにいるよ!!」
それだけ聞こえるとあとは何も分からなくなった。
双子の聖女がどんな生活を送っていくのか頑張って書きたいと思います。
ほのぼのを目指したいと思っているので応援よろしくお願いします!
投稿はのんびりになると思いますので気長に待っていてください。