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やったね日本ちゃん、友好国が増えたよ!

首相、森田久蔵は難しい政治の場面で、周囲が妥協を重ねて事前の策で首相になった男だった。

評価はパッとしない男。


その、パッとしない男に、今、波が来ていた。


大怪獣の出現。大怪獣の出現である。


「首相! あれは警察では対応できません! 自衛隊でないと!」

「すでに戦闘機がスクランブル発進してます!」

「首相! いつでも撃てます!」

「首相! 会見の準備できてます!」

「首相! 米軍はいつでも出られると!」


 官邸で仕事をしていたのが幸いだった。

 すぐに作戦室へと向かった。

 渡されたヘルメットを被り、気を引き締める。


 魅せられた映像は、でっかい蜘蛛だった。糸をはく。木を薙ぎ倒す。

 何かを襲っているようにも見える。

 光線の反撃。


「首相!」

「私は……私が国民の皆さんを守る! 戦闘開始! ミサイルの発射を!」


 そうして、アメリカのミサイルが蜘蛛を穿った。それでも硬い外皮に傷をつけただけという、悍ましいまでの強さ。


「まだ生きてます!」

「首相!」

「発射!」


 同じ場所を穿てば、それは今度こそ蜘蛛を貫いた。

 国民の皆さんは怯えてはいないか、パニックになってはいないか。

 そう心配したが、彼らは皆熱狂して同盟国と自国を称えていた。


「しかし、あんな怪獣どこから……? 大変でしょうが、自衛隊の方は調査をお願いします」

「了解しました!」

「首相、生物学の権威が続々と手伝いを申し出てきています」

「よろしくお願いします。でどころを突き止めてください」

「はっ 直ちに調査いたします!」

「ああ、同盟国の助力にお礼と、今後の事を相談しないと」


 次の日には、次元の狭間としかいえない場所から人影と共に現れた事が人工衛星映像からわかった。

 推定魔法らしきものを使う人型生物。はたまた異世界人か、エイリアンか。


 物理学者から生物学者、ライトノベル作家や漫画家まで呼び出してのチーム結成を決めた。


 事件から3日目。

 呼び出された第一陣が自己紹介をして、パソコンなど準備し終わり、明日からよろしくお願いしますという時。

 定時終わり直前! 定時終わり直前で!


 おどろおどろしい服装の蟲の化け物が首相官邸に飛んで来たのだった!!!!!


「自衛隊! SP! 警察ー! 撃て! 撃っちゃって!!!」

「落ち着きたまえ、黒田くん!」


 足がガクガクしたものの、秘書の黒田くんが先にパニックになったから冷静に慣れた。

 彼も人間だったのだねぇ。いつも冷静沈着だから。


「日本国首相、森田久蔵。俺は魔王ラベラトス」

「魔王! それは人を襲う」

「人を襲うのは野生の魔王だ。俺はもっとエレガントだ」

「エレガント。それは失礼しました」

「あの蜘蛛の魔物を倒した手腕に感服した。貴殿に依頼をしたい」

「依頼、ですか」

「実は、我が領地のダンジョンを自衛隊に適度に刺激して欲しいのだ。その過程で得た資源は差し上げよう」

「刺激。攻略という事ですか」

「そうだ。十分な安全マージンを取れば死者も出なかろう。多分」

「領地はどちらに」

「日本の近辺に設置する」

「設置できるものなのですか。大きさは」

「大きな街が三つはいるぐらいな細やかなものだ」

「うーん。隣国ができるという事ですか」

「そうだ。まあ住人は我一人だし、不服なら相互不可侵条約をつけるが」

「それは基本でお願いします。黒田くん、地図持ってきて」


 そうして、細かい交渉が始まった。


「報酬は資源だけですか?」

「いや、ポーション40個と魔法を得られるスクロール20枚、ジョブを得られる本を10冊前渡ししよう。ダンジョン探索は危険もあるからな。後はダンジョンの内部に宝箱を置いておくから、それは成功報酬とする。それなりに奥に潜らなければ手に入らないというわけだ」

「うーん。10冊ですか? それだと大規模な部隊は送れませんが」

「適度な刺激にそんな大人数はいらん」


 そうして交渉は終わり、5日後に蟲の化け物が領地を設置する事となった。


「ふぅぅ〜鬼が出るか蛇が出るか……」

「あのぅ〜」

「ひゃあああ!?」


 振り返ると、そこには鳥の化け物がいた。


「同じような条件で、私とも契約結んでくれませんかね?」

「私も」

「僕もお願いします」

「俺も」


 そうして、日本は五つの新たな友好国を得たのだった。

 一国くらい同盟国へ行け。
















「なんで日本に魔王が5人も!?」

「呪われているのか、日本は!」


 文句を言いつつも、浮き足立つのは若手の隊員達だった。そらもうフワッフワである。

 彼らは「休暇中」に「個人の意思で」ダンジョンに出かけ、「拾ったもの」を「指定のお店」に売る予定なのである。そこはかとなく意地でも責任を負わないブラックな香りがするが、その代わり有給+ダンジョンで拾った有用な物を売った代金がポッケに入れられる上、なぜか無償で魔法やジョブを貰えるので文句はない。希望者で熾烈な争いが起こるまである。

 なお、選べるジョブは錬金術師一色である。ポーション作れるからね。大金になるからね。

 しかも魔王ラベラトスのダンジョンは森林ダンジョン。資源は薬草が主だ。


 ネックといえば、モンスターに銃火器なしで相手をしろと言われていることくらい。それだって、魔王領は日本ではないので、銃刀法はない。刀でも斧でも持ち放題だ。草取りが主なので大体は鎌だが。


「森林ダンジョン」で草取りをして錬金術を使ってポーションにして売るボロい商売です。


 仕事が終わったら、海底領地においては人魚になって海を泳ぐも良し、天空島においては鳥になって空を飛ぶもよし、小島で獣人になって思い切り駆けるもよし。景色は絶景、泳ぐ魚は美しく。まさしくバカンス。


 錬金術ならば誘拐の危険がある? ダンジョンのある領地に出入り出来ないと薬草が手に入らないので、さらっても意味がないのだ。ポーションの原材料の薬草はダンジョンでしか育たない。

 そんなわけで、日本は非常に珍しく、繁栄の時を享受していた。

 ギリギリと羨ましがる他国の視線にビクビクしながら。


 なお、国が買い取ったポーションの半数は同盟国に輸出される。当然のことだよね!

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