勝手に魔王を名乗るとは……! 魔王だったわ
あと4日で建国祭である!
師匠の師匠と、クラスメイトと、俺と。学園長にも形だけ招待状を出す。最大20名の出席者。
満は出ると言ってくれたし、ラベラトスと俺と師匠、師匠の師匠の5名は絶対出席。
なんだか満は張り切ってるし、これは大変なことになったぞ。ホームパーティーなんて初めてだ。
「俺に任せろ! お前は満と学園長に招待状だけ出しておけ。失礼のないようにな」
「はい」
早速俺は、満の所へと向かった。
「俺に失礼のない手紙を書く為に俺に聞きにくるわけ?」
「うん」
「まあ、いいけどさ。学園長への手紙だと、便箋だけでも高いぜ? いっぱい練習もしないとな」
「う、わかった」
「あと国の名前も考えとけ」
「それは、ジャーシン様にいただいた雷光でいいんじゃないかなって」
「いただいた名前を大事にするのは大事だな」
そうして俺は手紙を書いたし。満はその間に家に連絡して贈り物を考えてくれた。
俺達は全く気づいていなかった。
この国にも魔王という称号持ちの人がいると言う事を、うっかり忘れていたのだ。
そして、俺が魔王に就任して領地を賜ったとか建国祭をすると言ったものだから、それはもう厄介な事になっていた。
さて、4日後。
予想を超えて沢山の人々が贈り物を持って俺の領地に入っていた。誰だお前ら。
師匠……師匠は違うな。向こうも慌ててる。
仕方ないのでショップで10Mで魔王の晩餐会(100人分)というのを買って並べた。
少し余る……いや余るか? どんどん来るぞ。
めちゃくちゃサバトっぽいが大丈夫なのかこれ。
緑に光るスープとか、全体的におどろおどろしいものが多いけど。
贈り物が積み上がり、早馬で来た師匠のお家の人が肩で息をしていた。
そろそろいいかな。
変身状態の魔王ラベラトスが空に浮かぶ。俺と師匠は変身して跪く。
その時、転移陣から大勢転移してきた。
「織峰 楓!!!」
「楓、いや新たなる魔王雷光よ! 偉大なるジャーシン様のご期待に応え、立派なダンジョンを作り、我が期待に応え、月に行くほど領地を発展させるのだ!」
「ハッ」
そして振り返る。誰だ大事な時に。
姫騎士といった服装の人と騎士団がぐるりと辺りを見回す。
周囲を見ても、海しかないんだけどね?
特に俺達のことは穴が開くほど見つめた。
そして姫騎士は告げた。
「……魔王への就任、陽元国として祝福するわ!!」
「あ、ありがとうございます……?」
「楓、我が国の姫様だ」
「げっあっ ありがとうございます!! このような小さな村にお祝いに来てくださるなんて!!」
満の言葉に俺はぺこぺこと頭をさげ、魔王ラベラトスに小突かれる。
「礼はつくせど卑屈になるな。お前の後ろにはジャーシン様がいるんだから」
「うん、姫様、ジャーシン様の提供してくださる料理は美味しいですよ」
「こら、まだ儀式の途中」
「すみません」
「贈り物として、海の領地のおすすめの作物の種を色々と用意した。活用してくれ」
「ありがとうございます」
「それでは、魔王雷光より挨拶を」
「はい。俺はジャーシン様と魔王ラベラトスの導きの元、エレガントな魔王になって、海を超えて、空を超えて、月まで行けるようになりたいと思います。その為に、頑張ってダンジョンを育てたいと思います。ダンジョンは確かに魔物が現れて危険だそうですが、いい物も手に入るそうなので、ご協力をお願いします。領地とは言いましたが、少なくとも今年は入場料とか取るつもりもないし、皆さん、好きに遊びに来てください。今年の夏は海でたくさん遊びましょう。それでこの場所を好きになってくれると嬉しいです」
「次に、この領地の領主兼スライムダンジョンダンジョンマスターの紅葉から一言」
「俺は魔力がない事がずっとコンプレックスだった。だが、ジャーシン様のお導きで我が弟子の眷属となり、その事によって魔力を得ることができた。なので……」
それから、予定より多い何人かの話があり、料理の会食となった。
料理は余るどころか足りなかったので、ショップで10M追加で払ってファンタジー宴会料理(100人分)を買った。これも目に楽しいものだったが、お前は冒険しすぎだとラベラトスに言われた。
見た目は不安だった魔王の晩餐会やファンタジー宴会料理は実際はとても美味しく、特にパンプキンは絶品だった。
海の巨大モンスターが領地の上空? 上海? 頭上! 頭上を泳ぐ一幕もあり、大盛り上がりだった。
なお、師匠は会が終わったと、紛らわしい上日程が急すぎるとお家の人からめちゃくちゃ怒られていた。
あと、姫様とは相互不可侵条約を結ばされた。
貿易とか関税とか平民にわかるわけねーだろ……。
困惑しているうちに、官僚を押し付けられた。領主は師匠なんで、そっちにお願いします。