05:わたしのお役目、そして夢
わたし――ニニ・リヒトが『光の騎士』と呼ばれるようになるのは、わたしが騎士になってからまもなくのことでございました。
スピダパム王国初の女騎士にして、光魔法を巧みに扱い戦うとして、王国では重宝される存在となってしまったのでございます。
当然ながらその噂はアルデート様のお耳にも届いているでしょうか。貴族学園に通われるようになったあの方に、わたしの存在が忘れられていなければよろしいのですが。
……とはいえ、わたしと彼が結ばれることは、きっとないのでございましょうね。
わかってはおります。いくら騎士になっても、やはりわたしと彼には身分差があるのです。父様よりは遥かに強い騎士になれた。それにしても、わたしのような者がアルデート様を愛することなど許されないのでございます。
アルデート様を剣を交えることができた。それだけでわたしは、満足なのですから。
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そして二十歳になったわたしは、『光の騎士』として重要な任務を課されることになるのでございます。
それは聖女様――この世界を救ってくださるというお方に、師匠として魔法を教え、そして騎士として剣を捧げることでございました。
そして聖女様にご同行するうち、わたしはまた、再会してしまうのです。
「私、あの人のこと好きなんです」そう恥ずかしそうに笑う聖女様の指差す先、そこに立っていらっしゃったのは銀髪に菫色の瞳の美少年でございました。
「アルデート、様……」
残酷なわたしの恋心は、また花を開きます。
やはりわたしはあなたを諦め切れない。わたしが騎士としてお守りしなければならない方があなた様を愛していらっしゃったとしても。
……あなたが、五歳も歳上のわたしに興味などないのだとしても。
わたしはアルデート様を、心から、お慕い致しているのでございますから。
「聖女様、お友達ができて良かったでございますね。わたし、安心いたしました」
わたしのお役目は聖女様を守ること。
けれど、胸の内に秘めた夢は、それと全く逆で。
恋する乙女は騎士になっても、自分の淡い恋心を捨て切れない。
いつかの口づけの日を夢見て、恋敵である主人――聖女様ににっこりと微笑みかけたのでございました。
〜完〜
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