表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/5

03:騎士への道

 騎士団本部へやって来たわたしは、目を見張りました。

 そこにはわたしの想像を遥かに超える数の騎士がいて、当たり前のように剣を交えていたり、鎧をガチャガチャ鳴らして走り回っているのでございます。

 中にはわたしの父様よりもずっと逞しい方もたくさんいらっしゃいました。


 わたしもこの方々の仲間入りを果たす。

 そう思うと胸が躍りました。


 しかし現実は、そう甘いものではございませんでした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 力試しとし、若手騎士の方と模擬戦を行ったわたし。

 木刀を振り抜き、それはそれは必死で戦いました。

 しかし、相手は父様より若いのに、剣の実力は凄まじく、なかなかに強敵でございました。

 なんとかかんとか勝利した頃には、わたしは今にも倒れてしまいそうなほど疲労し、傷ついていたのでございます。


 これでも相手の方は手加減をなさっていたとのこと。この時のわたしの悔しさと言ったら、ありませんでした。


「女にしては強いがそれ以上の評価は与えられない。しばらくここで鍛錬を重ねよ」


 これが騎士様のお言葉でございました。

 わたしはまだ足りないのです。もっともっと強くなり、胸を張って騎士だと名乗れるように精進していかねばならない。

 わたしは痛む全身に構わず立ち上がり、再び木刀を振ることから始めることにしたのでございます。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 木刀での模擬戦を繰り返し、いつしか木刀が剣になり、剣の素振りを繰り返し……。

 騎士団本部に来てから一年が経ち、わたしは十七歳。ここへ初めて来た時より随分逞しくなったと、自分でも思います。

 父様や他の方々に負けぬよう、ただひたすらに努力を重ねておりました。


 しかしそんなある日、わたしは彼と再会することになったのでございます。


「騎士見習いが来たぞ。今日からお前と一緒に稽古をする仲間となるから、挨拶をしてこい」


 わたしの師匠である騎士様にそう言われ、わたしはその方に会いに向かったのでございました。

 そして――驚きに目を見開くことになるのです。


 その方は、銀髪に菫色の瞳の美しいお方でございました。

 忘れるはずがございません。彼はかつてわたしを救ってくださったお方、アルデート・ビューマン様だったのでございます。

 わたしは彼を見るなり動けなくなってしまいました。ずっと会いたいと思い続けていた相手との再会を、喜ぶ余裕すらございません。

 しかし彼はわたしににっこりと笑いかけて、おっしゃいました。


「やあ。久しぶりだな」


 ――わたしのこと、覚えてくださっていたのでございますね。


 わたしはその瞬間、とてもとても嬉しく思ったのでございます。

 あの時はただの町娘でしかなかったわたしなどを、アルデート様は覚えてくださっていた。それだけでわたしは、天にも昇る思いでございました。


「お、お久しぶりでございますっ。わ、わたし、ニニ・リヒトといいます……」


 赤ら顔で舌足らず、随分な醜態であったことでしょう。

 しかしアルデート様はそれをお許しくださり、「これからよろしくな」と握手までしてくださったのです。

 こんなに優しい天使のようなお方、わたしなどが言葉を交わしてよろしいのでしょうか? そう思ってしまうくらい彼は素敵でございました。



 わたしはそれからというもの、アルデート様と共に訓練をするようになったのでございます。


 貴族令息は必ず、十二から十三歳までの一年間、騎士見習いとして稽古を受けるとのこと。そして素質があるとされた者だけがそれ以後も訓練を受け続けるのだそうです。

 ですからわたしは、せっかくご一緒できる未来があるならと、彼の訓練を手伝いました。どうかアルデート様にも騎士になってほしい。そしてわたしも騎士になり、彼の横に並び立ちたい。


 ……しかし、わたしとアルデート様の差は開いていくばかりでございました。


 アルデート様は剣には長けていらっしゃらなかったのです。

 代わりに『召喚魔法』という特殊な力を持っておいででした。


 呪文一つで、どこからともなく蛇やら魔物やらを呼び出すことができてしまうのでございます。

 それはともすれば簡単に騎士剣を振るうわたしを打ち負かしてしまうでしょうが、しかし、騎士は剣を振るうもの。どれだけ実力があろうとも、魔法を使えるだけではいけないのでございます。


 一方でわたしの剣の腕は徐々に上がっておりました。重たい剣も容易く振れるようになり、やがて騎士様との練習試合で簡単に勝てるようになってしまったのです。


 アルデート様は、「ニニには敵わないな」と言って笑ってくださいました。


 アルデート様が十三になれば、きっとこの騎士団本部を出て行かれるのでしょう。

 そしてわたしもまた、騎士になるか町へ帰るかの瀬戸際でございます。


 しかしわたしは諦め切れなかったのでございます。

 アルデート様に恋する、この乙女心を――。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そして、運命の日がやって参りました。

 わたしは十八歳。アルデート様は十三歳になり、立派に成長されておいででした。


「行って、勝ってこいよ。俺も頑張るから」


「はい。……アルデート様、お慕い致しております」


 わたしはそっと微笑み、騎士団入団の試験へと向かったのでございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ