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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

アイドルになった幼馴染が目の前で自殺したショックで過去にタイムリープして彼女を救おうとしたけど…。

超短編投下します!

骸。


『死体』ではなく『むくろ』と言うべき惨状。


目の前に横たわっている幼馴染の少女は…



テレビ局の屋上から飛び降りて『骸』となって横たわっていた。





陰気で、根暗で、引っ込み思案で、人見知りで、


それでも俺とだけは楽しそうに話をしてくれた。


服装も髪型も気にせず、クソださくて、


それでも俺だけが彼女が可愛いことを知っていた。



高校に入学して、彼女がいじめられているのを見て俺は必死に彼女をかばった。


「そんな根暗のどこがいいんだよ」

「そんなブスのどこがいいのよ」


俺は、俺だけの彼女の秘密をみんなに見せつけることにした。


彼女を美容室に連れて行き、眼鏡をコンタクトにしてもらい、俺と楽しそうに話しながら登校してもらった。


一瞬でみんなの見る目が変わった。


「あんな美少女だったのか」

「なんて楽しそうに笑っているんだろう」


それから彼女はクラスの人気者…になる前にスカウトが来た。


誰かが芸能事務所に写真を送ったのだ。


彼女はその両親の強い勧めもあり、学校をやめて芸能界に入った。


そして芸能人御用達の学校に通いつつ、アイドル活動を始めた。


テレビで見た彼女は輝いていた。


しかしその笑顔は俺が知っている笑顔ではなかった。




連絡は取れない。

取り次いでももらえない。


彼女の両親は娘の稼いだお金で会社を辞めて豪遊しているらしい。

だから彼女の両親にも会えない。




会いたい。

会いたい。


そして彼女が生放送で某テレビ局に居ることを知った。


俺は急いでテレビ局に向かった。


しかし、中に入れるわけがない。


俺はテレビ局の敷地内になんとか忍び込んだ。




そして何気に上を見上げると…










落下してくる彼女と目が合った。











彼女は懐かしい笑みをたたえていた。





異音




聞きたくない音



俺の目の前で、彼女は地面に叩きつけられて






どう見ても即死だった。






「うわああああああああああああああああっっ!!!」



俺は叫んだ。


どうしてすぐに走り出さなかったのか?!


どうして身を挺して助けようとしなかったのか?!


彼女の笑顔を見たから?


そんなことは言い訳だ。



俺は、俺は、俺は…






彼女を見殺しにした








「だからよ、そんなダサい女かばってるんじゃねーよ」

「は?」


え?

何これ?

走馬灯か?


「そんな根暗のどこがいいのよ」

「え?」



いつの間にか高校に居る。


俺は、手を広げて立っていた。


後ろで・・・泣いている彼女をかばって。



渓奈みずな!」


俺は振り向くと、泣いている彼女を抱きしめた。


「え?祐樹ゆうきくん?」

「渓奈!良かった!生きてるんだな・・・・・・・!」


俺は泣いた。

渓奈が泣き止むほどに泣いた。


クラスメイトたちは何のことかわからず、ただ呆然とするだけだった。





夢じゃない。


おそらく、俺はタイムリープして過去に戻ったんだ。


彼女の死がきっかけだから、彼女の運命を変える分岐点に戻ってきたのだろう。


「ねえ、どうして学校であんなこと言ったの?」


渓奈の部屋で俺はそんなことを聞かれていた。


俺は…どう答えるべきか悩んだ。



俺が渓奈をイメチェンしたせいで芸能界入りすることになり、神経をすり減らした渓奈が飛び降り自殺をするなんてことを言ったら、俺は渓奈に軽蔑されるかもしれない。



「ごめん、何だか渓奈が愛おしいって思えたから…」

「えっ?!」


ぼっと頬を染める渓奈。


やはり渓奈は可愛い。

でも、それをみんなに知らしめる必要なんてないんだ。


「渓奈、俺は強くなるよ。渓奈を守れるくらいに」

「え?それってまさか…」

「親戚の空手道場に通うよ」

「だめ!絶対駄目!」


渓奈が今までに出したことが無いほどの大声で否定する。


「どうして?俺は誰にも負けないほど強くなって渓奈を守りたいんだ!」

「でも駄目なの!空手は・・・駄目なの!」


野蛮なことをしないでほしいのだろうか?


「わかった。じゃあ、勉強を頑張るよ。そしてクラスでトップの成績になって学級委員長になって、渓奈を守るから」

「だめっ!成績トップになったら・・・・・・・・・・駄目だから!」


俺に苦労をさせたくないってことなのだろうか?


「ともかく、これからは登下校一緒にしよう。渓奈が虐められてもすぐ助けられるように」

「駄目なの!一緒に登下校すると…うっ、うううっ、ぐすっ…」


泣き出してしまう渓奈。


いったい何で泣いているんだ?


また・・祐樹くんが死んじゃうからああ…」


また?


どういうことだ?









「私、未来からタイムリープしてきたの」

「え?」

「空手を習った祐樹くんは練習中の事故で死んじゃうの」

「ええっ?!」

「勉強を頑張りすぎた祐樹くんは受験に失敗したショックで自殺するの」

「ええええっ?!」

「私と一緒に登下校していた祐樹くんはトラックに轢かれて死んじゃうの」

「そんなっ?!」

「もうこれで50回目。どうやっても祐樹くんは高校2年にすらなれないの」

「50回も過去に戻ってるの?!俺はまだ1回目なのに」

「え?何が?」

「えっ?あっ、しまった」

「ま、まさか祐樹くんも未来から戻ってきてるの?」

「ん、あ、うん」

「それってどうして?もしかして私のせい?」


俺は仕方なく事情を話した。


「私がアイドルになって死ぬ未来があるのね」

「うん」

「それっていつのこと?」

「高校2年生の4月だよ」

「えっ?!高2になれたの?!それならどうして過去に戻ってきたのよ?!」

「何言ってるんだ?渓奈が死んだから戻ってきたんだぞ」

「私のことなんてどうでもいいのよ!」

「良くないよ!渓奈のことはすごく大切なんだから!」

「えっ…あ、ありがと…」


頬を赤らめる渓奈。


「それにしても、私がどんなに頑張っても未来って変えられなかったのに」

「渓奈ってアイドルになったりしなかったの?」

「アイドルになったら祐樹くんのそばに居られなくなるじゃない」

「すると今まで通りってこと?」

「うん。それで祐樹くんが死なないように、空手をやめて柔道をしてもらったり、勉強の成績を1番じゃなくて10番くらいになるようにしてもらったり、色々調整してみたんだけど…」

「駄目だったんだ」

「うん。どうやっても祐樹くん死んじゃうの」


どうしてなんだろうか?

自分自身が死んだ覚えが無いので何とも言えないが…。


「わかった!渓奈、アイドルになる!」

「え?何だよ、いきなり?」

「渓奈がアイドルになれば、祐樹くんは死なないから!」

「駄目だよ!それだと渓奈が死んじゃうから!」

「だから、私が死なないようにそばに居て」

「どうやって?」

「マネージャーになるの!私、祐樹くんがマネージャーじゃなければアイドルにならないって言うから!」

「わかった。俺は今度こそ、渓奈を守るから!」

「私も祐樹くんを死なせないからね!」





それから美少女にイメチェンした渓奈はスカウトされアイドルデビューを果たし、俺はそのマネージャーになった。



「祐樹くん、この仕事は受けたら駄目だから」

「どうして?」

「スタジオ収録の時にファンから私が刺されそうになったのを祐樹くんがかばって死んじゃうから。こっちの仕事にして」

「これは駄目だ。撮影中に機材が爆発して、渓奈が死んでしまうんだ」

「それならこっちかな?」

「これならいいかな」

「じゃあ決定!…ってちょっと待って!今戻ってきたけど、やっぱりだめだった!」

「それならこっちだな…ってこっちもだめかっ!」


俺たちがお互いに死なないようにスケジュールを考えているのだが、こうやってなかなか決められないこともある。


というか、俺たち死に過ぎだよ。







「なあ、本当にいいのか?」

「うん」

「まさかどの未来選んでもどちらかが死ぬなんてな」

「だからこうするしかないよね」

「そうだな」


俺たちはテレビ局の屋上に立っていた。


「一緒に死ぬ未来って無かったな」

「うん。でも、これが一番幸せかも」

「ごめんな。守れなくて」

「私も、祐樹くんを守れなかったから」

「来世こそは死ななくていい人生になろうな」

「うん」


俺たちはぎゅっと手を握りしめ、屋上のふちから飛び降りた。






おぞましい異音



それが俺たちが聞いた最後の音だった。






ガクン



え?


空中で止まっている?


俺たちは死んだはずじゃあ?


地面に叩きつけられる直前で俺たちは止まっている。


そして周りの景色が…動かなくなっている。


「何だこれ?時間が止まってる?」

「もしかして、死ぬ直前に戻ったってこと?」

「二人とも同時に死んだから、時間を戻す作用が暴走したのか?」

「そうなのかな?」


とりあえず、俺たちはそっと地面に足をついた。


立てる。

普通に歩ける。


…そして時間が動き出した。



「ずっと止まったままかと思ったよ」

「祐樹くんと一緒に居られるならそれでも良かったのに」

「俺も。だけど、これって使えるんじゃないか?」

「え?どういうこと?」

「俺たちが二人同時に死ねば、死ぬ直前に戻って時間が止まるんだ」

「そうみたいね」

「それで死を回避したら時間が動き出すだろ」

「うん」

「何かあった時に二人一緒に死ねば、直前に戻って時間を止めて、その事故を回避できるんだよ!」

「そうね!それに二人とも事故した時の記憶があるのもいいわね!」

「よし、これから死の未来がわかったら、どうやって・・・・・一緒に死ぬか・・・・・・考えよう!」

「うん!そしてその死を乗り越えるのね!」


俺たちは再び手を握り合った。


無数の死を乗り越えて、二度と引き裂かれないために。

お読み下さりありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 何十回も死を経験しても折れないとか二人ともとんでもなくすごいメンタルになりましたね
[一言] 面白かったです。 個人的な意見ですが、タグは「悲恋?」とか曖昧気味にした方がより読まれるかもですね。
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