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第53話

「まぁ、そこんところは俺がとやかく言うことでもないし、お前の判断に任せる。言うなら周りに気をつけろよ」


 セスに言おうと思っていた考えを見抜かれたのだろうか、ヨハンは肉を切り分けながらそう言った。


「はい」


 もう少し考えてみよう。

 元々夢をみる頻度は高くないので、次を見てからでもいいかもしれない。


「ヨハンさん、もう1ついいですか?」


「ああ」


「私の体が傷だらけなことって、セスは知ってますか?」


 私の質問にヨハンはピタリと動きを止めて肉から私へと視線を移した。


 ここでシアに返り討ちにされた際、ヨハンは治療のために確実にそれらを目にした。しかしそのことを取り立てて私に言ってくることはなかったので、それをセスに言っているのかいないのか分からなかったのだ。


「俺からは言ってない。が、そう聞くってことは、セスに知られたくねぇってことか?」


「……気持ちとしては」


 もちろん、一生それを隠し通せるかといったら無理だろう。

 私は女で、彼は男だ。前世とは話が違う。


 でもだからこそ知られたくない。こんな体を、見せたくない。すべてをあげるなんて言っておきながら、勝手だとは思うが。


「これは俺がお前に話そうとしていたことと関係があるから、先に話してもいいか?」


「はい」


 私の答えにどうとも返さず、ヨハンは真っ直ぐに私を見つめてそう聞いた。


「お前の腹に埋め込まれてるリンフィーの結晶、取った方がいいぞ」


「……え?」


 予想外の言葉に一瞬思考が停止した。

 というか、すっかりそのことを忘れていた。


「そういえばリンフィーはどこに?」


「死んだ」


「…………」


「結晶を取って、セスに傷口を治癒術で塞いでもらおうと思ってな。そうすれば痛みもねぇし」


 ヨハンは何てことないように話を続けているが、おそらく殺したのだろう。誰がやったのかまでは分からないが。


 しかしセスに傷口を塞いでもらうとなると、当然傷だらけの体を見せることになる。私とヨハンの話に関係があるというのはそういうことか。


「リンフィーが死んだなら別に取る必要ないんじゃないですか? 特に違和感もないですし」


「体の中に異物があるのは良くねぇんだよ。あいつに見せたくねぇ気持ちも分からないでもないが、一生隠し通せるわけでもねぇだろ。腹括れ」


「……傷口、治癒術で塞がないとか」


「お前、それでセスが納得するとでも思ってんのか? 気づかれねぇようにやるなんて無理な話だぞ。シアに刺された時、どんだけ動けなかったか忘れてねぇよな」


「…………」


 正論だ。反論の余地もない。


「悪ぃが医術師としてこれは譲れねぇぞ。どうしてもセスに見せたくねぇってなら、お前がちゃんと理由を話して、治癒術をかけないことを納得させろ」


「…………」


 結晶を取った方がいい、なんて言い方をしておいて、取らないという選択肢は与えられないようだ。

 しかし正直に理由を話したとしても、治癒術をかけないことをセスが納得するとは到底思えない。結局のところ、セスに傷口を塞いでもらう選択肢一択じゃない? これ。


「逆に、いいきっかけだと思うけどな。いざヤるって時になってグダグダやるよかいいだろ」


「いや、ヨハンさん、言い方! 言い方!」


 ストレートすぎる言い方に思わず即突っ込みを入れてしまった。

 言ってることは分かるが、もう少しオブラートに包んでほしい。


「ヨハン最低っ! 女の子相手に何てこと言うの!?」


「……!?」


 突然、レクシーがそう叫びながら食堂に入ってきた。


「ごちゃごちゃうるせぇな! 事実だろうが!」


 レクシーに驚くこともなくヨハンが返す。

 来る予定だったのだろうか。私が帰って来た時にはいなかったし、今日はもう来ないものだと思っていた。


「っていうか何でお前がいるんだよ! 今日はもう来ないんじゃなかったのか!?」


「シエルが1人で帰って来たってジスランが言ってたからねー。一晩野獣と2人きりなんて危ないでしょ?」


「はぁ!? ふざけたこと言ってんじゃねぇよ! 永眠させんぞ!」


「…………」


 どうしてこうなった。

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