表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/152

第49話 Side-セス

 俺の優しい顔を思い出せない。だから会うのが怖い。ユイがヨハンに泣きながらそう告げたと聞いて、俺の胸は抉り取られたように痛んだ。

 それはそうなるくらいシアに痛め付けられていたことを意味するのだろうし、実際本人もそう語っていたとヨハンから聞いた。


 胸が痛いどころの話ではない。その話を聞いた時はシアへの怒りでどうにかなりそうだった。


 それでもユイはシアにレクシーを人質に取られた際、俺に助けに来てほしいとヨハンに伝言を頼み、笑みを見せたという。

 その言葉は偽りじゃなかったと思うと、ヨハンはさらに付け加えた。


 だからきっと彼女は俺と初めて会ったあの時、剣を抜いたのだろう。

 助けにくると信じていた俺が確かな殺気を放って剣を突きつけたのだ。それはそうなって当然だと思うし、ヨハンもそうじゃないかと推測していた。


「……さすがに、一目見ただけで君がユイだとは分からなかった」


 長い沈黙を打ち破って告げると、彼女は一瞬驚きに目を見開いて俺を見つめた。


「この世界で生きていた人間が記憶を保持したまま転生できるなんて聞いたことなかったし、君が俺の名を呼んだのは俺がシアと酷似していて、なおかつ俺の話を聞いていたからだと思っていた。ごめんね、剣を向けて。君がシアと一緒に歩いているのを見た時から、君を利用することしか考えていなかったんだ」


「それは……私が悪いんだ。ちゃんと話をすればセスは分かってくれたはずなのに……。剣を抜いたばかりか刺してしまって本当にごめんなさい……」


 続けた俺の言葉に小さく頭を振って彼女はまた深く頭を下げた。

 宿でも彼女はそうやって頭を下げていたが、その時にちゃんと言葉を返せていなかったことを思い出し、さらに申し訳ない気持ちになった。


「君の境遇を思えばそうなるのは当然だし、その責任は俺にある。気にしないで、と言っても無理かもしれないけど、本当に気にしなくていい。君は俺のために危険を冒してまでルーチェを連れてきてくれたし、感謝してるんだ。助けてくれてありがとう」


「…………」


 予想通り、と言うべきか、彼女は頭を上げてから泣き出しそうな表情で俺から視線を外した。

 それを気にしないことは彼女には無理な話だろう。俺が知る彼女はそういう性格ではなかったし、俺の持つ言葉では彼女の心を晴らすことはできない。こればっかりは今の段階ではどうしようもないので、今後の行動で示していくしかない。


「君は神術を無詠唱で使えるんだよね。エルフだった時と同じように4大元素すべて使えるの?」


「……うん。やってみたらできたんだ。魂が覚えているからだろうってシアは言ってた」


 話題を変えてみると、彼女は俺の方を見ないままそう答えた。


「触媒は?」


「なくてもできる」


「……なるほど」


 正直、これはあまり良くない事態なのではないだろうか。

 4大元素を全て扱えたというゼノ・カールトンだって詠唱と触媒なしには扱えなかったと聞く。となれば力の具合はどうであれ、気を扱えてなおかつ無詠唱、触媒なしで神術も扱える彼女は、単純に考えればゼノよりも優れた能力を有しているということになる。


 自死による魂の消滅を阻止してしまった上に、彼女はミハイルも殺した。それだけでも神からすれば忌まわしき存在であることは間違いないのに、それに加えてゼノよりも脅威になり得る存在かもしれないということが魔王なり天王なりに知られてしまえば、彼女は再び命を狙われることになるのではないだろうか。転生者を監視する存在がいなくなったとはいえ、油断はできない。


 もうこれ以上、神の意思とやらに振り回されるのはうんざりだ。


「ねぇ、ユイ。剣か神術か、どっちか捨ててくれる?」


「……え?」


 突然問いかけた言葉の意味が分からなかったのだろう。彼女は一瞬間を空けてから、驚きの表情で俺を見つめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ