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第108話

 アイゼンはデッドライン討伐が終わった後すぐにべリシアを出国して、この街で若かりし頃のヴィンセントと出会い、以降ずっと2人で迷宮に籠っているのだと語った。


「俺たち、迷宮を回りながらエンドリオンを狩ることを目的としてるんだ」


「エンドリオン?」


 しかし目的として挙がったエンドリオンというモンスターの名前に思い当たる節がないのか、セスが首をかしげる。


「知らない? 下層にのみいる獰猛な獣のモンスターなんだけど」


「知らないな。俺が昔迷宮で狩りをしていた時にはいなかったと思う」


「俺も知らねぇな。最近になって現れるようになったモンスターってことか?」


 アイゼンの問いかけにセスだけではなく、ヨハンも首を横に振る。


 以前はいなかったのに最近になって現れるようになったなんて、そういうことは実際起こり得るんだろうか。日本で言ったら海外から外来種を持ち込まれてそれが繁殖してしまった、みたいな感じ?


「エンドリオンはいろいろな部位が素材として優秀で、1匹倒せば白金貨20枚くらいの稼ぎになるんだぜ。でも迷宮内を転移してて滅多に会えないし、会えたとしても戦ってる途中で転移されることもあるから、倒せるのは3回に1回くらいかな」


「へぇ……」


 悔しげな表情を見せてアイゼンはエンドリオンについて語る。


 転移してしまって滅多に倒せないから素材が高く売れるのだろうな。

 しかし迷宮探索に慣れてきた最近では、1回の周回で白金貨5枚くらいは稼げる。4周でエンドリオン1匹分だ。それを目的とするほどエンドリオンは良い敵でもないような気がする。まぁ、迷宮を回りながらと言っていたので、アイゼンたちも会えたら倒すくらいの感じなのだろうけれど。


「よかったらセスたちも一緒に回らないか? エンドリオン、見たことないんだろ? 俺たち良い場所を知ってるんだ」


「見たことないからと言って、別に興味があるわけでもないんだけど……」


「なんでだよ! いいじゃん、一緒にやろうよ! シエルのランク上げしてるんだろ? 下層の方が効率もいいしさ」


 乗り気ではないセスをどうしても頷かせたいらしく、アイゼンが必死に説得している。


 いや、なんか、うん。その強引さ、本当に変わらないな、アイゼン。


「だ、そうだけど、どうする?」


 相手するのに疲れたのか、セスが私とヨハンに意見を求めてきた。

 わずかにうんざりしたような顔をしていて、面白い。


「まぁ、そう言ってくれてるんだし、せっかくなら少し一緒に回ってもいいんじゃないかな」


「俺は別にどっちでもいいわ」


「じゃあ決まりってことで!」


 私とヨハンの返事を聞いて、セスが何か言う前にアイゼンが明るい笑顔で話を取りまとめた。




 ◇ ◇ ◇




「アイゼンが強引ですまない。あいつはいつもそうなんだ」


「大丈夫です。知ってますんで……」


 申し訳なさそうに呟くヴィンセントに、苦笑いを返す。


 今後のことが決まった後、転生者同士で話したいだろうとセスが気を遣ってくれて、私、ヨハン、ヴィンセントの3人はこうしてここに残っている。

 ちなみにセスとアイゼンは2人でどこかに行っているのだが、アイゼンのテンションにセスはついていけるのだろうか。心配だ。


「ヴィンセント、お前はヒューマだから学校出てるんだよな?」


「ああ。神魔術学校なら出た」


「じゃあこの世界の歴史とか、過去の転生者の存在は知ってるんだよな」


「まぁ、学校で習った範囲のことは」


 ヨハンとヴィンセントがそんな会話をし始めた。

 学校かぁ……私も一度くらいこの世界の学校に行ってみたかったな。


「なら分かるよな。この世界において、転生者は異質な存在だ。お前もこの世界のやつらにはない、特殊な能力を持ってんだろ?」


「あぁ……そうだな。俺は治癒術の適性があるんだが、元素も2つ扱える。類を見ないことだと学校では言われたが、これがその特殊能力というやつなんだろう」


 ヨハンの問いに、ヴィンセントは悲しそうな表情をして答えた。


 本来、治癒術の適性を持つヒューマには元素を扱うことはできない。それができてしまった彼は、さぞ苦労をしてきたのだろうな。それが垣間見えるような表情に、胸が締め付けられた。

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