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第105話

「やむを得ない場合を除き、極力ランダムリンクには入らないように進む」


 迷宮へのリンクに触れて移動した瞬間、セスが地図を広げて言った。


 背後から照らすリンクの光でよく見える地図は、さながらアリの巣のようだ。しかしそれは恐ろしく広大で、全部を踏破するには1か月や2か月では無理な気がする。


「ランダムリンクに入ったら位置を把握できなくなるから?」


「うん。ランダムリンクに入った瞬間にその周回では地図が役立たなくなる」


 私の質問にセスは地図に目をやりながら答えた。


 ひとまず私のギルドランクがCに上がるまではここで探索をしよう、という話にはなっているので、そうなったとしても長い目で見れば役立ってくれることだろう。


「というか、ヨハンに見てもらえばいちいち地図を広げなくていいのか」


 気づいたようにセスは言い、ヨハンに地図を手渡す。


「こんな複雑な地図、見て瞬時に把握できるわけねぇだろうが……」


 と言いながらもヨハンは素直に地図を受け取り、広げる。


 正直、リンクから飛んだ先を追っていくのだけでも大変で、早々に考える気が失せた。適当でよくない? と言いたくなるほどだ。

 セスとヨハンがルートについて真剣に話し合っているので、一応ちゃんと聞いているフリでうんうんと頷いておく。


 慣れている人間に任せよう。それが一番だ。


「じゃあ、進もうか」


 どうやら効率がいいルートというものが決まったようで、ついに探索開始となった。




 ◇ ◇ ◇




 地図上ではアリの巣に見えていた迷宮の各部屋は、想像以上に広かった。

 平均して学校のグラウンドくらいだろうか。小さくても体育館くらいはある。しかしただ広いだけではなく入り組んでいるので、明るかったとしても端から端を見通すのは不可能だ。しかもそれが通路で繋がっていたり、リンクでどこかへ飛んだりするので、私1人だけだったら地図を見たところですぐ迷子になったことだろう。


「焼き払え!」


 炎を噴射して背後から迫ってきた蛾のようなモンスターの群れを焼き払う。


 パルル。

 前世で初めて街に出た時に、父と共に狩りに行ったモンスターだ。こんな見た目でこんな可愛い名前なんて、と思っていたのでよく覚えている。


 セスとヨハンも別方向から来たモンスターをそれぞれ仕留めていた。


 数が多い。ゲームのように無限に沸いているのではないかと思うほどに、少し進んだだけでモンスターに襲われる。


「二つ目の結晶だ」


 セスが透明な結晶を手に呟いた。

 これはガラヴァという土偶のようなモンスターが持っていることがあるもので、入る前に買った転移結晶石の元となるものだ。

 ギルドで討伐依頼が出されていて、この結晶を収めると金貨1枚とポイントが貰えるらしい。必ず持っているわけじゃないので狩った数だけ手に入るということはないが、迷宮内でメインの稼ぎどころとなるモンスターだ。


 ちなみにガラヴァは幼児くらいのサイズで、いつぞやの天門の守護者クルヴァンと同じように砂のようになって崩れるのでその場に死体が残ることはない。一体こいつらの生命原理はどうなっているのだろう。


「こっちも尻尾を取ったぞ」


 ヨハンが細長い尻尾を手に近づいてきた。


 これはロンという猫サイズの豹のようなモンスターの尻尾だ。これも討伐依頼の対象となっている。


「ありがとうございます」


 ギルドランクが高い人たちは通常尻尾を取らずに放置するらしいのだが、私のポイントのためにこうして集めてくれている。ありがたい。


「それにしても想像以上に戦闘が多いですね……」


「そろそろ休憩にして何か食うか」


「そうだね」


 そういうつもりで言ったわけではなかったのだが、ヨハンの言葉にセスが同意したので休憩することとなった。

 迷宮に入って初めての休憩である。


 セスとヨハンが決めたルートは、リンクを辿って行って最終的にランダムリンクでしか進めない場所まで来たら入口に戻って一日の休息を挟む、というものなのだが、その場所までだいたい三日くらいかかるらしいので、まだまだ先は長い。ここはちゃんと休んでおこう。


 休憩は基本的にリンクの側、というのが基本なのだそうだ。

 明るい方が何かあった時にすぐ退避できるし、対処もしやすいのだろう。


 こんな陰湿な場所ではあまり食欲もわかないが、食べないとバテそうなので、保存食を無理やり飲み込んだ。

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