どうしようって、どうしようもないよね
夕方、孝太郎たちが帰ってきた。
全員、机の上に頭を乗せてうなだれている。
「おかえりなさい。それで、何か分かったの?」
お茶を淹れて、それぞれの目の前に置いていく。
シャキッとしろよ、いい年したオッサン達がうなだれている姿なんて誰得なんだよ。
僕の気持ちが通じたのか、ほどなくして全員が復活した。
「でさ、どこに行ってたの?契約者が失踪したって本当?」
待っている間ヒマだったので作っておいた夕食のカレーを温めなおしながら訊いてみる。カレーは市販のルーを使った普通のヤツです。孝太郎みたいにスパイスから作るなんて僕には無理。
「ああ、主が前に働いていた店に行ってきた。あそこは魔女の管轄だからな。主に何かあればあの人が絶対に知っているはずだと思って」
待って。さらっと言ったけど魔女って何?えっ?主って不思議の国の住人なの?
僕の混乱を無視して、話を進める孝太郎。
「でだ、椋介。悪いニュースと良いニュース。どっちから聞きたい?」
良いニュース。で、悪いニュースは聞かない。
「良いニュースは主は生きてるってこと。ただこの世界にはいないようだけど。悪いニュースはこのまま主がこの世界に帰ってこない場合、俺たちはあと五年ほどしか生きることができないらしい」
悪いニュースは聞かないって言ったのに。何で言うかなこの親父は。
しかし、五年ねぇ。
まぁ、いいんじゃないの。もともと僕たちは人ではないし。元の刀に戻るだけなんじゃないの。
そう思っていたのは僕だけだったようで、孝太郎や修也兄、怜司兄にまで変な目で見られた。
情緒面の教育がとか、これが今どきの若者かとか言ってるけど、おかしいのはそっちだからね。
僕たちは人じゃないんだよ。