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その57 コスプレ

「ようこそ、ストビアへ」



 目の前の女ははっきりストビアと言った。


 来るには来たが混乱してる。


 私はどうしていたの?

 何故寝ていたの?

 どうして裸?

 荷物は?


 どうすればいいの?

 貴方は誰?

 敵?味方?

 私の事は知ってるの?



 ま、先ずは、


「私の服は何処ですか?」


 聞いたが、答えは無い。

 なのに、


「貴方のお名前は?」


「ツ・・・ユリ、ユリです。服・・・・」


 一瞬、本名と偽名のどちらか悩む。



「ツユリユリさんね」


 しまった。



「ユリです」


「ユリさんね」


「はい。私の服は?」


「この国には外の物は持ち込めないの」


「荷物は?大事な物が有るの!」


「荷物も持ち込めないわ」


「そんな!」


 セルゲイ氏から貰った地図とかが無いと困る!

 それにイブ様へ渡すものも。


「荷物を返して!」


「無理よ。ないわ」


「一体何処に!」


「さあ」


 困った。

『さあ』なんて言われるとどうしようもない。

 自分で探すしかない。


「余っている服はないかしら。このままではマズいわ」


 荷物が無いんじゃ、服も無いだろう。それより誰が私を裸にしたのか!

 男じゃないだろうね?

 勝手に裸にされていい迷惑だ。

 目の前の女は知らないかも。荷物も知らないみたいだし。


「これを」


 用意された服はなんていうか変だった。


 あちこち露出が多い。

 鎧で作った下着?

 胸は硬そうな何かの金属で保護されているが、面積が足りないので意味が解らない。

 手は籠手で肘下から手まである。指先以外は保護されてるが、肩丸出し。これも意味が解らない。

 足は膝から下がこれまた防御力が高そうな金属で包まれている。

 なのに、腿丸出しで、股間がほぼ下着。しかも戦闘用と思いきや、踵はヒールだ。全く以て解らない!


 それを孫が居る歳の私に着せるとは、どういうつもりだ!

 無駄に金細工で盛っているのが恥ずかしい。


 頼んでも居ないのに片手剣が腰に。


 これじゃ恥ずかしくて外に出れないと思ったら、ネイビーのマントがあって助かった。

 この国の人間は頭がオカシイのか!

 羞恥心がないのか?

 戦闘服にしては肌丸出しで役に立ってない!

 多分これは格好付けの服だ!

 戦争したがりらしいストビア人の服のセンスはオカシイ。



 これしかないから仕方ないから嫌々着たが、




「地味だけど我慢してね」



 それは違うと思う。





 ー ー ー ー ー ー 






 町を行く。



 出てみれば、私が目覚めた部屋の有る建物は平屋の小さな建物だった。

 あの女に

「イブ様はどこに?」

 と聞いたが、答えは無かった。

 国王の筈だから『首都』を聞くと方角を教えられた。

 他のことも聞いたが、答えは無かった。



 町を行く。


 何て事だ、あの女を恨む。

 町の人達は普通の服を着ているじゃないか!

 デザインはジャージャー国とはちょっと違うが見て普段着と解る。そんな理不尽な見た目ではない。

 商店の女将も厚手のロングスカートに首まできちんと襟を閉める服。中にはボンネット帽まで被っている人も。


 こんな痴女みたいな格好は私だけだ!

 そりゃ、ファッションとしてはエロ括弧良いのかもしれないが、孫が居る歳でこれはない!

 あの女が普通の服を着ているのを思い出して、迂闊な自分に腹が立って来た。あの白い服があるなら、普通の服も有ったはず。

 仕方ない、マントに頼る事になるが、何故か前ボタンが無い・・・


 あの女め・・・



 町を歩く。



 見渡すが、正直活気があるようには見えない。

 店の親父が暇そうにしている。客は居ない。

 飲食店もガラガラだ。

 通りにぽつぽつ人は居る。


 戦争中には見えない。

 あまり構える必要はなさそう。

 と、思ったら、小路で柄の悪そうな2人組の男がまだ10歳そこそこの娘を脅してる所に出くわした。

 どの国も似た様な物か。

 物狙いか金狙いかは判らないが、このクズ2人が気に入らない。

 自分にも娘が居るから余計に腹が立つ。

 女の子が持つ荷物に見向きもしないということは、金狙いか。


 やる事はひとつだ。


「何をしている!」


 マントの中で剣に手を掛けながら男に言い放つ。


「なんだあ、てめえは!」


 男のひとりが私に向かって数歩くる。背に手を回した。短剣かナイフだろう。

 もうひとりは少女の手首を掴んでいる。


「その子を離せ。そして消えろ!」


 この国で恐喝がどの程度の罪なのかは知らない。

 やり過ぎない程度に納めたいが、もしももある。

 私は剣を使える。

 都合良く剣は片刃。

 最初から剣を持たせるとはこういう町だからか。



「女のくせに生意気だ!」


 ババアと言わないだけ良しとしよう。

 男はナイフで私に切りかかる!私は躱しながら剣の背でナイフを持つ手を叩き、そのまま剣の柄で顔面を殴った!剣の重さも効いて相当痛い筈だ。更には足で背中を蹴り込み、うつ伏せに倒れた所を膝でトドメを刺す!

 男は今息が苦しくて動けないだろう。落ちたナイフは没収。


 はっきり言って、私の敵じゃない。

 だけど、こいつのせいで恥ずかしい格好が丸見えになってしまったじゃないか!


 地面の男に気をはらいながらも、もうひとりの男に向かう。

 最初に剣の背を向けて構えるが、見せつけるように剣の刃を向けると、男の顔が曇る。

 どうせ小物だ。


「行け!」


 言い放つと、男は少女を突き放して走って逃げた。

 足下の男にも、


「行け!」


 と言って脇腹を蹴り上げる。

 男は痛そうに怯え警戒しながら立って逃げて行った。

 これでいい。

 捕まえた所でどこに連れて行って良いか判らない。

 異人の私が捕まるかもしれないので役所はご免だ。




「大丈夫?怪我はしていない?」


 少女に声を掛ける。

 少女は目が真っ赤だ、恐かっただろう。


「もう大丈夫だよ」

 膝立ちで少女より低い位置から顔を見せて、優しく背中を叩いてやる。

 と、


「リン!」

 少女と良く似た顔の女性が駆け寄って来て、少女を抱きしめる。

「ねーちゃん!」

 わあああああ、と泣くリンと呼ばれた少女。

 姉妹か。

 保護者がきてホッとした。

 うちのシロにもこんな可愛い時代が有ったなあと思い出す。今じゃ育児疲れの年増だ。




「妹を助けて頂き有り難うございます、旅の方。ウチにいらしてください。もし宜しければウチに泊っていってください」


 そろそろ夕方だ。

 正直言って、渡りに船だ。

 金だって無い。


「ご迷惑では」


 気を使うが断らない。

 間違えても『結構です』なんて言ってはいけない。宿無しなんだから。

 飯はでるかな?

 でるよね・・・・




 そう言えば、『旅人』ってどうして判った?


 考えるのはやめよう。

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