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その55 七年後

ゆっくり更新します。

 ひとり砂漠を歩く。



 砂の大地。私の体力の衰えを痛感する。私も婆さんになったものだ。

 砂漠越えとはいえ、死ぬような距離じゃない。だが、この先真の危険がある。

『もしも』があっても、年寄りの私の命ならどうということはない。ここにはひとりで来た。護衛など『もしも』の前では役に立たない。

 仕事での後任も出来た。

 良くできた部下達だ。安心して任せてきた。

 私が持っていた情報も古くなりそれほど役には立たない。私が暫く居なくても帰れなくとも影響はない。

 もしもを考えるなら年寄りのほうがいい。

 なにより私自身が行きたいのだ。



 出立の朝、娘にはこれきりになるかもしれないと告げた。娘は止めたが私の意思は変わらない。

 孫はよく判ってないみたいだ、お土産をねだる。生きて帰ったらなんでも賈ってあげるから。


 もう充分良い思いをした。


 元は殺し屋だったのに、顔を隠すことなく往来で孫と遊ぶことが出来るなんて出来すぎた人生だ。


 だからと言って死ぬ気は無い。やらねばならないことがある。


 メイドは、

「大丈夫よ、多分」

 根拠はない。直感だそうだ。




 砂漠を歩く。



 向かうは4年前に現れた二つ目の魔国。最初の魔国の更に向こう側にある。


 その国の名はストビアという。


 あの人に果たして会えるだろうか?会えずに私は死んでしまうのだろうか?


 そもそもあの方は生きているのだろうか?

 私が7年前に忠誠を誓った女性。



 砂漠を歩く。



 そうそう、最初の魔国はサリュートと云う。

 ジャージャー国に勇士の身体をくれたのはサリュート。

 最初の魔国サリュートを訪れた時に、久しぶりにセルゲイ氏に会った。少し世間話と昔話をしたあと、ストビアへの秘密の入り口を教えられる。この入り口と、入り口の通り方は秘密にされている。今回は特別だ。



 セルゲイ氏が別れ際に、

「彼女に宜しく」

 と、言ってきた。

 あの方への伝言だが、あっさりし過ぎだ。あと、あの方へのお土産として栄養剤。


 セルゲイ氏は派遣技師をやめジャージャー国からサリュートに帰り、研究活動に忙しいらしい。

 今は後任の技師がジャージャー国に派遣されている。



 歩く。


 サリュートの周りはわりと緑が多い。元は砂地だが、『サリュートの日影』を利用して植物を増やしたらしい。魔人が畑を世話して、家畜を飼う。年々規模が広がっている。

 働く姿は我々と大差ない。


 サリュートの外壁はストビアからの攻撃の痕がまだ放置されてる。直さないのか直せないのかは解らない。



 砂漠を歩く。




 見えてきた。

 白い外壁を持つ第2の魔国、ストビア。

 大きい。

 サリュートのような緑はどこにも無い。

 これをジャージャー国の軍人は、『勇者の城』と呼び、民からは『勇者の墓』と呼ばれる。



 目的はストビアの王に会うこと。



 遠い昔、人口2万人居たサリュートを500人になるまで追い込んだストビア。


 絶滅寸前だったサリュート。サリュートの歴史はストビアから逃げるこのとの繰り返し。

 ジャージャー国の近くに来たのは、やはりストビアから逃げて来たから。


 しかし4年前、突如現れたストビア。それをたった二人の戦士が制圧した。


 二人のうちひとりはセルゲイ・ニジンスキー。

 サリュートの技術者。


 もうひとりは、



 イブ・720



 二代目勇士隊隊長で、

 今はストビア国王。




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