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その51 箱入り王子

 今の所、第4の勇士は保留になっている。



 エルザが死に、勇士が2人に減ってしまっている。

 隊長にパティが狂ったように直訴していた。


「私を勇士にして!」


 でも、今のパティは危なっかしい。無論採用にはならなかった。


 勇士は強い。

 だが、数には負ける。

 強くてもいつかは疲れて斬られる。そして、10人前の働きをするといっても費用は10倍以上掛かっている。そして何より勇士自身にかかる負担が大きすぎる。


 退役のない仕事。

 人間に戻れない事。

 不自由な生活。


 そして、実際に勇士が1人倒されてしまった。

 所詮は不死身ではない。

 斬られれば死ぬのだ。



 斬られれば死ぬ。



 これがアーサーに重くのしかかった。

 王都から離れる事を禁止されたのだ。

 アーサーは第2王子だ。

『負けました。死んじゃいました』という訳にはいかない。

 もう最前線には立たせてもらえないかもしれない。

 お陰でエルザの最期の地にも行けなくなった。この目でエルザの戦った地を見たかった。花のひとつも捧げたかった。



 エルザが狙われたのは3人揃ってない状態の勇士は倒せるとギルドが判断したからだ。

 その判断材料にされたのはアーサーの戦ってる姿。それはアーサーの心を折るには充分だった。


 それでエルザは死んだ。

 後悔してもどうにもならない。




 今はただエルザの居なくなった隊長室に居るだけである。






 ーーーーーーーーーーー





『あの町』に来ている。



 イブ小隊は隠密行動中だ。


 それは偶然から得た情報。



 あの町に居た情報通が王都に来たのだ。

 王都に引っ越してきた住人は、()()()に居た居酒屋の店主だった。

 ユリが顔を覚えていた。

 ユリがツヤマ時代に情報元にしていた居酒屋の店主だったのだ。


 ユリは店主に情報を求めた、『金は払うから』と。

 店主にしても、店を金に換える暇もなく現金と日用品だけ持って引っ越して来た。妻と息子が一緒なので金は必要だ。





 店主の話はこうだった。



 最近ギルドが兵隊を集めている。

 すぐ居なくなる様な冒険者でなく、主従関係を重んじるタイプの人間を。まあ、それと一緒に冒険者も集めてはいるが。恐らくは軍事行動的な事を起こすと。

 今迄は『勇士』の存在を警戒していたが、勇士は葬れない事は無いとギルドは判断した。

(実際、アーサーの戦いっぷりは酷かったし、エルザは葬られた)

 恐らくは町も騒動に巻き込まれるかも知れない。そうなると居酒屋は商売あがったりだ。今の冒険者の代金踏み倒しですら酷いのに。


 店主への聞き込みは半日にも及んだ。居酒屋のもつ町の情報は多い。可成りの情報が手に入ったと思う。

 暫くは情報源が欲しいのでユリが匿う手配をした。そのくらいの予算をユリは動かせる。店主としても身の置き場が出来て助かった。



 ユリが話を聞き、イブが正否の判断をする。

 完璧だった。



 だが、核心は店主も知らない。


 そもそも『何が起こるのか』がわからない。

 王都でギルドがらみの商家が商品在庫を積み上げているのも関係している筈。




 そして今、イブ達は密かに町のギルドや商家に探りを入れる任務に来た。

 今回はイブにユリが同行して、代わりにラビィがアーサー付きになった。後は男性隊員達。女性隊員はイブとユリだけ。後は危ないので連れて来なかった。


 パティが同行したがったが、興奮したら何をするか判らない。エルザを斬られた恨みで冒険者を見たら暴走しかねない。


『冷静になれる私はやはりおかしいんだろうか?』


 イブはそんな事を思った。


 情報統括はユリがアジトで行い、顔の割れてない男性隊員が旅商人とかに扮して聞き込みを行い、夜はイブが町を舞った。裏社会と地方での情報収集ではユリは有能だ。だが、表立って顔は出せない。



 調査して少しずつ色んな事が見えて来る。ギルドの集めてる人手は可成りの数だ。滞在費も必要だ。

 相当の金が掛かる。

 つまりどこからか資金援助がある。

 それは商家からギルドに払われていた。この町以外の商家も援助してる。リストアップは大変だった。

 そして物の値段を吊り上げる為の行動を起こすらしい。


 奴らの狙いは判った!


 それはもう、そう遠く無い日だ。

 事が始まってからでは止められない。軍隊を使えば止められはするが、被害は止められない。

 始まる前に挫くのがベストだ!




 それにはどうしてもある物が必要だ!


 毎日使者を本部に送る。

 毎日使者が本部から来る。


 だが、求めてる物は来ない。

 イライラするイブ。

 ユリも焦っている。


 情報はどんどん集まって来た。それは隠しきれない程に話が兵達に広められてるということ。トドメの情報をユリ自身が本部に早馬で持ち込む!







 そして、ついにそれは来た。



 王都から来た使者達は部屋に入ると一般人の姿から元の堅苦しい姿に戻る。

 わざわざ着替えを持ち込んだのだ。それは必要な事だった。




 そして、『それ』を()()()()()()()()に与えた。





 これで心置きなく戦える。


どうしても必要な物。


アレです。

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