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その46 新兵器 強弓登場!

 高い木の上でギルドを待ち構える。





 場所は家よりも町の方角。

 町の近くの側を戦いの場の場に選んだのはアーサーやイブが追いついて来るのを期待したのと、逃げるパティ達と距離を置くため。パティ達は別の道を行く。第1王子の部下の来る方角のほう。

 ここは木も有る、道の脇に排水路も有る。奇襲にはここが良い。


 隊員達には

「ヤバくなったら逃げて!」

 と言っておいた。

 カイは、

「逃げて欲しければお前も逃げろ。でなければ、俺も逃げん」



 全く・・・



「私がやられたらすぐ逃げてね。狙いは私だから」


 目的は私だ、私が終われば奴らも他の隊員を追わないかもしれない。


「だそうだ。わかったな!」


 偉そうにカイくんが言う。


「カイはどうすんだよ〜」


「俺はいいんだよ。隊長だから」


「なんだよそれ〜」


 この人達、真面目にしてよ!



 でも心細かったから嬉しい。1人じゃないってこんなに嬉しいなんて。

 みんな同士。

 行ってしまったパティやココも大好きな友達。


 不思議。

 勇士手術を受けてからの方が友達増えたみたい。

 昔はアーサーと家族しか居なかった。学校に友達なんて居なかった。堅苦しい付き合いの人ばかり。


 アーサーと離れたく無くて勇士になった。

 私にはアーサーしか居なかったから。

 アーサーと一緒なら何どんな苦でも我慢出来る!そう思って寂しい生活を覚悟したのに仲間が出来た。

 最初にイブと仲良くなって、パティが私についてくれて。

 村での生活楽しかった。

 稲刈りなんて初めて。

 パティが色々苦労してくれたのも知ってるよ。

 ありがとう、パティ。


 絶対守るから!







 来た!



 ギルドが来た!


 街道を来る馬車の群れ。

 馬車の装飾が下品!

 御者も如何にもって、ガラの悪い奴。


 もう時は待ってはくれない、恐い。

 イブもアーサーも居ない。

 私がやらなければ皆を守れない!


 恐いのを押さえつけて胸を張る!



 ギルドは全員馬車に乗ってる、贅沢な奴らだ!

 でも好都合。



 作戦開始!


 排水路に潜んでた隊員がギルドの馬車の車輪に長木を突っ込む!

 引っかかる長木でロックする車輪!

 倒れる車輪、投げ出される冒険者達。


 次の馬車も長木の餌食になる!

 後続車も突っ込む!


 大急ぎで離れる隊員!


 奴らはまさか奇襲されるとは思っていなかったね。

 こちらが先に情報掴んでるとは思わなかったろうし。

 それにしても、危なかった!パティ達が出てからいくらも時間が経ってない!

 こいつら全員2頭立ての馬車に乗ってた。私達が全員で移動してたら、追いつかれてた。



 馬車からぞろぞろ出て来る冒険者達。

 周りの警戒に当たる者に、車輪を直そうとする者。座ってるだけの奴に排水路覗く奴。一杯居る。50人は伊達じゃない!



 こ ん な に 居 た ら 外 す 訳 が 無 い ね !




 私は勇士専用の強弓を引き、矢を放った!

 まだ新品の強弓。

 普通の弓の射程の外からも届く凄い奴!

 私の腕はまだまだだけど、あれだけいっぱい居たらどれかに当たる。


 矢が着く前に次も射る。


 どんどん射る!


 当たった!


 また当たった!結構当たる。


 大騒ぎになる冒険者達。

 冒険者達があちこち見回して私を捜す。

 暫くして私を指差した!

 見つかったか。

 何人かは馬車から弓を出すけれど、暗くて撃ち辛いだろう!

 それに、射てもこっちまで届いてない!

 暗闇なら私の方が目が良い!

 こっちに走って来る冒険者達、手には重そうな盾。


 私は木から飛び降りて地面から更に矢を放つ!

 何本かは弾かれたが、何本かは当たった!


 矢が無くなる。


 移動しながら奴らの使った矢を数本拾う。

 それを使って弓を構える!


 アイツらの中の弓者が最前列に並ぶ!

 私を狙ってる!


「ぎゃあああああ!」


 と向こうから声が上がる!


 奴らの背後から隊員の皆が一斉に矢を放ったんだ!

 奴らの注意がこっちに集まるのを待っていた。

 弓者は皆こっち側にいたから、背後から矢で狙われたら良いカモだ!

 この作戦はカイが考えた!




 あとは、





 力尽きるまで戦うだけ!

 弓を捨て、愛用の棒を掴み私は冒険者の中に突入した!

 入ってしまった方が弓で狙われない!

 でも恐い!


 もう戻れない!

 精一杯棒を振る、次々と殴る。

 気がつけば数人隊員が一緒に斬り込んでいた!

 嬉しいけど心配。



 敵が多い、恐い。

 アーサー早く来て!






 ーーーーーーーーーー





 町から馬を駆る。

 イブを先頭に行く勇士隊。




 馬には悪いが休み無しだ。


 途中何度かエルザに通信を『普通』にかける。エルザと同じくらいのパワーで。

 返事があったら近くまで来た証拠。



『エルザ!』




『イブ!』


 来た!近い!




『いまいく!』


 通じるんだ、もうそんなに遠く無い筈。




『皆に伝えて。大好きだって』


 様子が変だ!




『もうすぐだから』


 後少しだから!




『後はお願いイブ』


 どういう事!





『エルザ!エルザ!エルザ!』





 返事しろ!エルザ!




 マズい!急げ、エルザが危ない!

 もっと速く!




 火が見える、松明か。

 まだ家には遠いのに人が一杯見える。

 気に入らない格好をした集団。

 そこらに沢山倒れてる死体。


 ギルドの冒険者か!



 何人かは討ち合いをしている。


 人だかりがある。




「 エ ル ザ ! 」





 大声で叫ぶ!


 エルザの返事は無いが、人だかりがこっちを向く。

 一度、隊を止める。


「ラビィ、味方の援護を!」


 言い残して馬を下り、棒を片手に走る!


 エルザ!

 エルザ!

 エルザ!


 エルザ!


 こっちに構えを向ける人だかりの冒険者共。

 冒険者の足の隙間から見える横たわる血だらけの女。


「エルザ!」




 勝ち誇りドヤ顔の冒険者達。


 なんで・・・


 涙が頬をつたう。


 エルザ・・・・

 エルザの身体から何も感じない・・・・




 冒険者(ゲス)が汚い口を開く。


「カモがもう一匹来たぜ!」


 どうして私が勇士だと?

 ああ、棒を持ってるからか。


「全くだ、ボーナスだな。『コツ』は解ったからな。簡単だ」



 冒険者(クズ)がエルザに剣を向ける。

 エルザはもう死んでるのに・・・


「コイツを殺されたく無かったら武器を置け!」





 成る程、そうやってエルザをハメたのか!

 エルザは優しいからな・・・・


 私までハメようとはコイツら・・・・やはりクズ。

 冒険者は所詮冒険者。








 絶 対 許 さ ん !  

 殺 し て や る !








「うおおおおおおおおおっ!」





 力一杯、冒険者を殴る!殴る!殴る!殴る!殴る!


 泡食って逃げ出すクズ共。

 追いかけて殺し、頭上を跳び先回りして殺し、矢を撃ってくれば矢を掴み、投げ槍にして投げ返す。

 立ち向かって来ようが、逃げている奴だろうが、隠れてる奴も皆たたき壊す!

 死んだフリをしている奴も上から棒で心臓をヒト突き。






 全て殺した。





 もう動かないエルザを抱き起こす。

 ぎゅっと抱きしめる。

 エルザの首がくたんと垂れ下がる。掌で頭を抱く。

 抱き返してよエルザ。


 涙が止まらない。

 勇士になって乾いていた私に優しくしてくれたエルザ。

 アーサーと婚約者だったのに我慢して、私に()()使()()()くれたエルザ。

 ジンの前で泣いてる私を慰めてくれたエルザ。


 ごめん、エルザ。



「逃げてって、言ったじゃない!生き返ってよエルザ!」


 ごめん、もっと早く気付いてれば。

 ごめん、もっと早く来てれば。

 エルザ・・・・

 私もいずれそっちに行くから。




 ありがとう、エルザ。



 お休み、エルザ。





 ー ー ー ー ー ー ー 






 味方の生き残りは4人。


 カイも命を落とした。


 パティ達は翌日夕方に第1王子の使いと合流して本部へ無事辿り着く。

 パティ達がエルザ小隊の最期の知らせを受けるのは4日後だった。

この世界、


ポーションも回復魔法もないです。


「有りはしませんよ!そんなものは!」

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