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その45 夜逃げ

「イブ?」





 イブの声が聞こえた様な気がした。


 いや、イブの通信?


『何処?イブなの?』


 返事は無い。



『イブ!イブ!』


 何度も呼ぶが返事は無い。

 イブは町に行ってる筈、それとも近くに居るの?


 思わず外に出る。

 真っ暗。


 町はどっち?

 よく判らない、屋根に飛び乗る。




『 エ ル ザ に げ て ! 』






 はっきり聞こえた!


『イブ!どこ!返事して!』


 やはり返事は来ない。

 なんで?


『アーサー!』


 アーサーも呼ぶが同じく返事は無い。





『 ぎ る ど が む か っ て る 』




 聞こえた!


『ギルド!どういう事?』


 聞き返すがやはり帰って来ない。


 どういうこと?

 どういうこと?

 どういうこと?



 そうか!

 イブは遠くから力任せに送って来てるんだ!

 イブは電波が強いから。


 こっちも力一杯送ってみる!


 駄目だ、通じない。

 でも大事な事は解った。

 屋根を飛び降り、中のパティを大声で呼ぶ!


「パティ!大変よ、ギルドがくるの!ギルドがくるの!ギルドがくるの!」



「エルザ、どうしたんだよ。ギルドが来るってどういう事だよ」



「ええっと、イブが教えてくれたの。イブが逃げろって!」



「へ?イブがどこから?」


 困った。

 電波通信のことは秘密だ、アーサーに口止めされてる。

 どうしよう。

 でも、この際だから仕方ない!でも、あんな『能力』説明出来ない!説明のしようがない!



「パティ!お願い信じて!イブが秘密の方法で知らせてくれたの!秘密の方法が有るの!」


 不思議そうな顔をするパティ。そもそも秘密の方法ってなんだよって思ってるに違いない。騒ぎを聞いて何人か集まって来る。でも、誰も理解出来ないだろう。そもそも長距離会話なんて信じてもらえない。


 やけくそだ!


「小隊長命令よ!皆で今すぐ逃げるわよ!」




「マジか・・・」

 パティが唖然とした。


「馬車に怪我人すぐのせて!武器用意して!すぐ出るわよ!」



 はっ!

「静かに!」



 皆がエルザを凝視する。



「ギルド、武装したのが50人だって・・・・イブがそう言ってる・・・」



「いそげえええええ!」



 家の中は蜂の巣を突いた様な大騒ぎになった!

 ココがジンの手足を縛っている。縛ってるといっても殆ど簀巻きだ。暴れると困るからだ。

 家の真ん前に馬車をつけて、怪我人病人の為に藁と布団敷いて、食料と武器を積み込んだりの大騒ぎ。

 農園主の家には

「暫く山に隠れて!」

 と言って来た。あとはそっちの派遣隊に任せるしかない。彼等が頼り!

 ついてこいとは言えない。こっちは狙われてる者だらけだ。

 捕虜は既に『処理』されていて助かった。


 前に40人のギルドの手下の冒険者と戦った時はイブもアーサーも居た。それに、自分の隊員が外を囲んで有利だったし隊員も倍の人数が居た。

 今は戦える者はジンの護衛と勇士隊あわせても17人。しかも女と怪我人も抱えてる。


 出発だ。

 どっちに行けば良い?

 アーサーとイブに近づくならば町の方角。でも、そっちからギルドが来そう。

 軍が助けてくれる可能性を信じて第1王子の隊が来る方に向かう?




『アーサー、早く来て!』




 エルザは全力で送った。




 ー ー ー ー ー





 準備は出来た。

 馬車は二台。



「行って!」



「わかった!エルザも乗って」


「私は残る。行って!」



 イブから来た通信に『ねらいはエルザだ』とあった。理由は知らないが奴らは勇士を討ち取るのが目的だ。

 でも、ジンも狙われてたし、ここの者はギルドに恨まれてる。

 でも、一番狙われてる自分が残って気を引けば馬車は逃げ切れる筈。



「奴らの狙いは私!囮になるから逃げて!パティ、命令よ!」


「・・・」



「三勇士隊の小隊長が残るのに派遣隊の隊長が残らないのは顔が立たないよなあ」


 カイが荷台から降りる。


「駄目よカイくん!」



「それに俺は重てえんだ。馬が遅くなる。パティ、ココを頼んだぞ!」


「カイ・・・」

 パティが言葉につまる。

 荷台が重すぎるのは本当だ。その分何人か降りて歩いてもどのみち遅くなる。


 と、ぞろぞろと馬鹿共が荷台を降りてくる。


「これで馬は速くなるな」


 見れば怪我人以外の男がみんな降りてる。


「バカ野郎!多過ぎだ、四人護衛に戻れ!」

 カイが呆れて四人指名して戻す。馬車の上は怪我人以外は女しか居ないじゃない!

 そして剣の他にありったけの弓と矢を下ろす。


「もう行け!」


 カイが別れの挨拶もなくパティに言う!


「悩むな!行け!」



 走り出す馬車。


 遠ざかる馬車からココがカイを見てる、カイがココを見てる。

 なんでこんなことになるのよ。みんな幸せに一番近い道を行けば良いじゃない、私なんかのためにこんなことしなくったって・・・


 ごめん、カイくん。


 パティ、ココ、貴方達は私が守るから。私の大切な友達。

 そして私の初めての友達イブの大切な人も守るから!




「よし、移動しよう」

 カイが言う。


「え?」


「まさか馬鹿正直にここで迎え討つつもりか?頭使うんだよ。なるべく時間稼ぎしないとだからな。無駄死には御免だ。死ぬならせいいっぱい戦ってからだ」




「うん!」



 カイくん皆もありがとう。


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