その40 はいっちゃだめだって
若い冒険者は混乱していた。
この若者は周辺国からの移民だ。この町に来て、何も知らずギルドに登録してしまった。
金がなく、しばらくの腰掛けのつもりだった。冒険者が冒険をしない事くらいは知っている。何でも屋か厄介ごとの仕事を受ける程度と思っていたが、実際は真っ黒な仕事ばかりだった。
町に来て早々借金生活になり、いかにもな展開でギルドに縛られていった。
ギルドの門をくぐってひと月だが、どうにか縁を切れないか悩む日々。
「いいから来い!」
ヤバそうな先輩冒険者に呼ばれて行くと、10人程の冒険者がいた。如何ににもヤバそうな顔ぶれが並ぶ。
「連れて来たぞ」
「若いな」
「コイツは先月入ったばかりだ」
一体何をさせられるんだろう?
ギルドの仕事じゃない。この人達のする何かだ。
「ボウズ、おめえ彼女はいるか?」
「いえ、いないです」
居ても『居ない』と言いたくなる場面だ。
「童貞か?」
「・・・・・」
押し黙った。
「そうかした事無いか。じゃあ、今日お前を『男』にしてやろう」
「そうだ若えの、イイ女がいるんだ。おめえに譲ってやる。まだ誰も使ってねえ」
何人かが俺の童貞をあざ笑い、恩着せがましく女体をくれると言いニヤニヤする。
自分だって男だ。
女には興味が有る。
でも、コイツらの思惑通りに動かされて女を抱くのは屈辱。感謝どころか、迷惑、いや怒りが湧く。
直接は見ていないがコイツらがそう言う事をしているのは気付いてる。
それを俺にもしろというのか!何が目的だ、自分たちと同類になってしまえというのか!もう、抜けられなくするつもりか!
「こっちに来い」
ヤバい先輩が俺を連れて行く。
この人はヤバい。逆らったらどうなるか判らない。従いたく無い、でも逆らえない。他にも冒険者が沢山居るのではどうにもならない。
先輩に連れられて二階にある部屋に行くと、そこは物置で稲藁が積まれていた。窓は閉められているが、隙間からの光で中は見える。
藁の上には手足を縛られた若い女。見た感じ15歳前後で町民に見える。目隠しと猿ぐつわをしているから顔はぜんぶは見えないが、綺麗な顔にみえる。意識はあるようで、たまに藻掻いている。
誘拐か!
「おい、若造」
「・・・なんですか」
「この女を可愛がってやれ。俺がいいと言うまで続けろ。良い声で鳴かせろ。なるべく激しくな。この女は訳有ってここに居るんだ。この娘はそうされる理由があるんだよ!おめえはこの小娘を鳴かせるのが仕事だ。見張ってるからな!」
先輩はそう言って娘の目隠しを外した。
娘は数回濃い瞬きをして俺達を交互に見た。逃げようと後に引こうとするが何処にも逃げられない。
ちくしょう!
なんでこんな事させるんだ!確かに合意の上ならこちらからお願いしたくなる様な可愛い娘だ。
「わかったな!」
「・・・・・・・」
答えたく無い。
嫌だとか、したく無いとか、間違ってるとか言いたいけど、恐くて言えない。
勇気を持った行動なんてこの人には通用しない。
「俺は優しいからおめえの事を考えて親切にしてるんだがなあ」
そんな訳あるか!
「おめえがヤラねえんなら俺がする事になるが構わねえか?使い物にならなくなるがな」
先輩は右手を細く握って、腕を立てて上下に振った。目を見開き恐怖に怯える娘!
そんな事したらこの娘は壊れる!鬼畜変態どころじゃない、人殺しだ!
「あとで見に来るからな。その時は判ってるな」
先輩は娘の猿ぐつわを外して、
「良い声で鳴けよ」
といって部屋を出て行った。
娘と2人きり。沈黙が続いた。
娘が怯えている。
強姦はされたく無いだろう、でも俺にされなければ、先輩にされる。
恐らくそっちの方が恐いんだろう。だからといって俺なら良いと言う訳じゃない。なんとかして、この娘を助けられないか?先輩を騙せないか!やり過ごす手はないのか!
俺は娘に覆い被さる。
「いや! 許して!」
悪い事なんかしてないのに許しを請う娘。嫌がる娘の首元に顔を付け、
「貴方はなにか恨みを買う事したの?」
娘が首をぶんぶん振る。
判らないけれど信じる。
アイツらよりこの娘の方が悪人なんてないだろ!
「アイツらを騙そう。それしか無い」
娘は怯えが抜けないままで俺を見る。
涙でぐじゃぐじゃの顔で俺を見る。
「なんとかフリをしてチャンスを待とう!」
小声で語りかける。
それしかない!
「助けてくれるの・・・・」
娘が口を開く。
縋る様な目。
「ああ。だから犯されてるフリをして」
小声で言う。
娘が泣き出した。
「落ち着いて、諦めないで」
小声で励ます。
ばぁん!と、ドアが開く!
「何やってんだ!てめえ」
しまった!
早くそれらしくすれば良かった、もう遅い。
「ああ?」
先輩が威圧する。
「俺の前でしろ!」
マズい!剣を持ってる。
「しろ!」
剣、本気で構えてる!
娘が俺を必死な目で見る。
解ってるよ・・・・でも・・・・
「うそ・・・いや・・・・」
娘の泣き声は家の外まで響いた。




